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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十二章 王城

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夕食

 迎賓館に戻ると、残っていた面々が出迎えてくれた。馬車の音で戻ってくるのに気付いたそうだ。


 ルナとサァラにハグされて、ものすごくホッとした。

 もう夕飯の時間を過ぎていた。彼女たちは、食べ終わっているそうだ。


 そういえば、腹が減ったかもしれない。


 食堂は大皿に料理が載っていて、好きなものを取っていく形式だった。

 温かい野菜が食べたい。きっと肉もしょっぱくないぞ。

 急に空腹感に襲われる。ああ、緊張が解けてきたんだ。



「あれ、フォン。それっぽっち?」

 サァラがフォンの皿を見て、心配そうな声を出した。


「あまり食欲がなくて……」


「緊張して疲れたよな。後でマッサージしてやるよ」

 ルナが食後のお茶を飲みながら言った。


「そのサークレット、うまく取れそうか?」

 ルナの質問に、フォンはスプーンを落とした。表情が硬く、言葉が出てこない様子だ。


「魔塔というところが、相談に乗ってくれるらしい。

 もしかしたら、何日か王宮に行かないといけなくなるかもしれないんだ。

 今日は迎賓館に泊まるけど、そのあとどうするか会議をするって、エリオット様が言っていたぞ」

 フォンの代わりに答え、帰りの馬車での会話を伝える。


「ああ。『光牙の道標』さんたちも、依頼がここで終わるのか……どうなんだろうって言ってた」

 サァラが果物を口に入れた。


「ダルグさんたちは何て言ってるんだ?」

 訊いてから、肉にかかったソースをテーブルに落とさないよう、慎重に口に入れる。美味い。ちょっとスパイシーで、肉がとろける。


「王城に残る組と領主の屋敷に滞在する組と、領地に帰る組に分かれるんじゃないかって。

 王城に残る組は、今日謁見したメンバーの中から出るだろうという見立てだよ」

 ルナがそう教えてくれた。

 つまり、可能性があるのは俺とフォンか。


「もしそうなったら、ルナとサァラはどうする?」

 あんまり考えたくないけれど、今日も有無を言わさずに連れて行かれた。今後もこちらの意思は確認されないかもしれない。


 ルナとサァラはもう話し合っているようで、すぐに答えが返ってきた。

「領主様のお屋敷に滞在できるならそこにいるよ。

 駄目なら、王都の冒険者ギルドに行く。おすすめの宿を訊いて、そこを拠点に依頼を受けたりして待ってる」


「あ、そっか……」

 すごく……安心した。俺たちは自由な冒険者だもんな。柔軟に動けるんだ。


「フォン、もう部屋に行って寝るか?」

 ルナがフォンに声をかけた。フォンは小さくうなずく。


「お皿はあたいが片付けとくにゃ」

 サァラが二人を見送った。


「フォンに何かあったん?」

 サァラが小声で俺に問う。

「謁見で、フォンに子どもの頃の記憶があるかって話題になったあたりから、様子が変だった。

 なんか視線を合わせないし、『訊かれたくない』みたいな壁を感じたから触れなかったんだけど……」


「それで正解にゃ。

 ……今夜、うなされるかも。

 トーマ。フォンのベッドで抱っこして寝てあげるにゃ。ただし、エッチなしで」


 ブフォ!

「おま、なに言って……」

 吹き出しちゃったじゃないか。

 迎賓館で男女が同じベッドで寝ていいのか?


 しかも、言っている内容は生殺し案件――


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