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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十二章 王城

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謁見の行方

「では、内密にエドガー氏と連絡を取りましょう」

 斜め後ろの人が言い、国王がうなずいた。


 これで俺の話題は終わりかな? なんとなくそんな空気を感じた。


「ブロンズタートルの討伐法など、面白い案が次々と出てくるようだから、後日関係部署と歓談してもらえまいか」


 ありゃ、まだ続きがあったらしい。


 ――で、国王の発言は依頼の形だが、命令だろうか?

 エリオットが振り返ってくれないので、トゥランを見た。厳しい顔をして首を縦に振っている。

 あ、断れないやつなんだな。


「……はい。仰せのままに」

 これでいいか? トゥランが小さくうなずいてくれたから、正解みたいだ。



 国王はフォンに目線を移した。

「フォンと言ったな。お主は妖精族なのか?」

「養い親から、そのように聞いております」

 フォンの緊張が高まった気がする。


「そのサークレットが、問題の宗教団体に着けられた可能性があるのだな?」

 国王の問いかけにエリオットがうなずいた。もう事情は説明済みのようだ。


「養い親に装着されたものです。恥ずかしながら、詳細は存じません」

 フォンが答えた。


「いつ頃からサークレットを着けているのか?」


「え……いつ頃……? いつからだったかしら?」

 フォンの目が宙を彷徨う。


「幼い頃の記憶はあるか?」


「……え、記憶、ですか?」

 フォンが言いよどんでいる。

 フォンは昔話をあまりしない。だが、俺も村にいた頃の話はしたくないから、特に気にしていなかった。



 押し殺したため息が、グレタ婆さんから漏れた。長い時間立ちっぱなしだ。足腰が辛そうに見える。


「各々、一日では話が終わりそうもないな。今日のところは王宮で休み、明日以降、関係部署の聞き取りに協力するように。

 フォンに関しては、魔塔から魔道具に詳しい者を呼ぶので、安心してくれ。

 ぬいぐるみの予約状況、増産計画については、こちらの担当者と明日以降会議をするように」

 国王がそう告げて、謁見は終わった。



 俺たちは再び礼を取り、国王が退出するのを見送る。

 豪勢な衣装が見えなくなった瞬間、どっと脱力した。つ、疲れた。緊張した。


 エリオットが重臣たちに軽く挨拶をした。あ、まだ、お偉いさんたちがいたな。

 頭がパンクしそうで、早くこの場を去りたい。早く挨拶終われ~。


 ようやく退出することになり、俺たちはその後に付いていく。

 とにかく、終わった。


 いや、明日からまだ何かあるんだっけ。もう今はこれ以上考えられない。


「あ、グレタ婆さん。足、大丈夫?」

 声をかけると、顔を歪ませて「大丈夫なわけあるかい」と言われた。

 そうだよなぁ。俺だって足が痛いのに。


 トゥランが抱き上げて運ぼうかと提案した。

「そこまでじゃないよ」と赤くなりながら、グレタ婆さんは馬車まで自分で歩いた。

 これから、馬車で迎賓館に戻る。

 王宮で暮らすのも大変そうだな。呼び出されたら、その度に馬車に乗らなきゃいけないのか。



 この時、俺はフォンが複雑そうな顔をしているのに気付かなかった。


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