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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十二章 王城

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レスタール王国の情報

 国王が重臣の方を見て言った。

「一度絶えたぬいぐるみを復活させた、という戦略は見直した方がいいな。

 価値があることには変わりない。宣伝の見直しをすればよかろう」


「はっ。レスタール王国の情報収集を行います」

 偉そうなおじさんが、軽く一礼した。


 ああ、エリオットにはレスタールの情報が入ってなかったのか。

 だけど、レスタール王国と接する領地なのに知らなかったとか、あるんだ? 国境を巡ってたびたび争っているから、仲は良くないだろうけど……。

 知らないとは思わなかったし、訊かれなかったから答えなかっただけなのだが、後で文句を言われそうな気がする。



「そちらの青年が話題のトーマかな?」


「初めまして。あ、お初にお目にかかります」

 え……「話題」ってなんだろう? 何を噂されていることやら……怖いなぁ。


「面白いアイディアをいろいろと持っているそうだな。

 じっくり訊いてみたいが、レスタール王国の冒険者ギルドの腐敗が優先事項だ」


 冒険者パーティー内の殺人未遂じゃなく、冒険者ギルドの方か。

 ただの被害者だし、レスタール王国のときは駆け出しのDランクだったから、そんなに情報を持っていないんだけどな。


「ワイバーン討伐の英雄、アーデンと同郷だそうだな。息災か?」


「アーデンさんが冒険者を引退してクランをたたむときに手伝いました。それから会っていませんが、故郷で自警団を率いて元気にやっているようです」


「英雄が片田舎に引っ込んでいるのか? 冒険者ギルドで後進の指導など、できることはたくさんあるであろう」


「いえ、怪我したから放逐された感じでした。

 討伐の現地で放置されていたのを、村長の息子が自費で迎えに行ったくらいで……」


「それは、誠か? Sランクという、モンスターに対して最終兵器ともいうべき宝を――」

 国王の顔色が変わった。


「横領や組織の腐敗だけでなく、冒険者を粗雑に扱っているとは度しがたい」

 胸板の厚い、いかにも軍人らしい人が怒りに拳を振るわせた。


「あれから五年も経っています。当事者たちの記憶がどんどん薄くなってしまう」

「レスタール王国で聞き取り調査するのも、他国である我々には難しい。そこまで労力を割いてやるべきことか?」

「冒険者ギルドの本部は、支部の立て直しで余裕がないだろう。国家を超えた組織であることを盾にする彼らに、恩を売る機会は滅多にないぞ」

 ざわざわと相談している重臣たち――。


 つまり、ワイバーン討伐の当時の状況が必要ということだな?

 ……言ってもいいだろうか? 

 騒動に巻き込むことになるかもしれない。だけど、放っておいてもレスタール王国が、証拠隠滅のために、彼らに魔の手を伸ばすかもしれない。

 それなら信頼できそうな人に託すのもいいよな? 


「あの……アーデンさんの話なら、村長の息子のエドガーさんが聞き取りしているはずです」


「本当かね、トーマ君?」

 重臣の一人が俺に期待の目を向けた。


「当時、ワイバーン討伐の話を聞きたがる人がたくさんいました。

 怪我が治っていない本人が何度も繰り返ししゃべるのは大変だろうと、メモを取り始めて……。それから、いつか本を出したいと言っていました」


「その手記を入手すれば、状況がかなりわかるな」

「それをレスタール側に知られたら、燃やされたり、書いた本人が消される危険性があるぞ」

「ああ、気取られずに接触する必要がある」

 重臣たちは次々と案を出していく。


「街道から外れた閉鎖的な村なので、行ったら何かあるとすぐにバレると思います。同郷の後輩が、ハロルという街の山猫亭で働いておりまして――」

 懐かしい。少年時代の職場だ。

「冒険者や商人が使う宿ですから、そこなら旅人として目立たずに立ち寄れるでしょう。

 エドガーさんは面倒見がよくて、同郷会を開催して村を出た人とも繋がり続けています。そこから自然に連絡を取れるはずです」


「レスタール王国は小さな村まで統治が行き届いているのか。それに比べて、冒険者への対応がお粗末というのが理解できない……」

 国王が呟いた。


「いいえ、俺たちの村が特殊なんです。村長と息子のエドガーさんの努力で……みんな、文字が読めるなんて、うちの村くらいで」

 俺は親には恵まれなかったが、村には恵まれていた。

 外に出て、そのありがたさが改めてわかった。


 資料を読めるからこそ、いくつもの作戦を立てられた。地図を頭にたたき込めたから、命からがら逃げ切れた。

 だから、今、俺はここに立っている。


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