表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十二章 王城

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

168/284

王宮に足を踏み入れる

 目のくらむような建物だ。細かい細工が至る所にあり、格式と調和……無知な俺には、よくわからない。

 背の高い、重そうな扉。天井が高くて、廊下が心なしかひんやりとしている。


「床が固くて膝にくる」

 グレタ婆さんがぽつりとこぼした。

 廊下に飾ってある花や絵を鑑賞する余裕もなく、歩き続けた。緊張のせいか、長い距離のせいか少し息苦しい。


 辿り着いた謁見の間は扉が開かれた状態で、俺たちの到着を待っていたという圧を感じた。

 エリオットの後ろから入室すると、まばゆい空間にクラクラする。ワインレッドの絨毯に、磨き上げられた焦げ茶色の床や柱。アクセントに金色の装飾――。


 数段上に置かれた玉座が見える。

 そこまでがまた遠い。冒険者ギルドの訓練場の端から端まで歩くくらいの距離がある。


「グレタ婆さん、大丈夫か?」

 小声で話しかける。少し息があがっているようだ。


「はぁ。大丈夫じゃなくても、どうしようもないだろう。くそったれが」

 場違いな言葉を使うグレタ婆さん。体がしんどいだけではないような、刺々しさを感じた。


 エリオットが玉座の前で止まった。当然、俺たちも止まる。

 後ろからトゥランが「男は片膝立ち、女性は左足を引いてお辞儀」と言った。


 きょろきょろと周りを見たらいけないんだろうな。目だけで様子をうかがうと、そんなに人は多くない。

 まだ誰も座っていない玉座。

 その斜め後ろに、偉そうなおじさんが立っている。

 壇の下にも偉そうな貴族たちがいるけれど、十人もいない。

 すっかすか。こんな人数だったら、もっと狭い部屋でいいんじゃね?


「総裁閣下、ご到着。礼を」

 偉そうなおじさんが言うと、片膝をついたエリオットが頭を下げる。

 慌てて、それに倣った。


 あれ? 国王じゃなくて「総裁」って言うんだ。へぇー。


 靴音は絨毯に吸収される。それでも、人が歩いてくる気配がある。

 ぎしりと音がしたわけではないが、椅子に腰を下ろしたようだ。


「よい。顔を上げよ」

 腹から出した重厚な声が、謁見の間に響き渡る。舞台役者のように張りがあり、ちょっと聞き惚れそうになった。


 顔を上げると、三、四十代といった感じのはつらつとした人族が座っていた。

「平民もいるゆえ、礼儀作法については不問とする。直答も許す」

 そう言って家臣たちを一瞥した。言われた方は軽く頭を下げて、了承する。


「楽にせよ」

 そう言われて、俺たちは立ち上がった。



「まずは、ぬいぐるみという新しいものを生み出した功績を褒め称えよう。

 諸々の圧力に負けず、国の利益と結びつけた。争奪を退けて、二十体を無事に納品したことも、大義であった」

 壇上に、二十体のぬいぐるみが鎮座している。

 可愛いが、その背景に政治闘争があったと想像すると、きな臭い爆発物のように思えた。


「冒険者ギルドと商業ギルドの尽力の下、トゥルメル領主代理として献上いたしました。ありがたくお言葉を賜ります」

 エリオットが堂々と返事をしている。

 旅の途中で見せた軽薄さはどこかへ吹き飛んで、立派な領主一族だ。


「ここにいるのは、我の最側近とでもいうべき者たちだ。長年、外交に携わってきた事情通もいる。

 忌憚なく、話してもらいたい」

 総裁――つまり国の王は、そんなことを言い出した。まあ、俺は庶民だし、心の中なら「国王」と呼んでも許されるだろう。


「閣下はすでに、ぬいぐるみ作成の経緯や、同席している者たちが抱えている事情をエリオット・トゥルメルから聞き及んでいる。

 質問に、正直に答えるように」

 国王の斜め後ろから、そんな言葉が飛んだ。


 ああ、さっき待たされている間に、いろいろと話し合いがすんでいるのか。

 なら、それ以上、何を引き出そうというんだ?


「移民にして養鶏業に従事するマーガレット。お主は、オークの島の出身ではないか?」


 突然の話題に、俺の頭はついていけなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ