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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十二章 王城

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謁見前の一苦労

 俺とフォンは革靴に履き替えるように言われた。旅の前に支給されたブーツは、泥を落としても傷だらけだ。

 磨かれた革靴と、三種類の靴下が用意された。


「既製品の靴だから、靴下の厚みでサイズを調整するんだよ」

 と、兵士が教えてくれた。

 なるほど。


 ブーツを脱いだらズボンにシワが寄っている。よく見るとブーツの中側が汚れていて、それが付いてしまった。

 旅の途中なら気にならないが、このピカピカの部屋の中ではほんの少しの汚れも目についてしまう。


 どうするんだ、これ?

 オルドが魔法できれいにして、フォンが風魔法で乾燥してくれた。

 もう、大騒ぎだな。


 フォンは、それに加えてメイクを施されていた。侍女のような人たちが、衣装チェックのために来ているのだ。


 旅の間はサークレットを隠していたヘッドバインドを外している。さらさらの青緑の髪が、結い上げられていく。


 あれ……貴族みたいに見えるぞ。

 制服の凜々しさと儚げな品の良さで、まるで男装の麗人だ。

 これは……色っぽい。艶っぽい? ぶっちゃけ、エロい。


 まわりから賞賛の声が上がる。侍女たちが満足げにうなずいた。


 商業ギルドの女性とグレタ婆さんも、薄化粧でいつもより輝いている。

 グレタ婆さんは商業ギルドの制服を着ていた。

 庶民が頑張って着飾っても、場違いになりそうな世界。制服の方が安心してすごせるだろう。


 騎士のトゥランはブーツのままだが、ピカピカに磨かれたものに履き替えていた。

 正当派の騎士様って感じでかっこいい。

 姿勢もいいし、平民の俺たちのことも馬鹿にしないし、いい男だな。



「準備はいいかな?」

 とエリオットが入ってきた。


 華やか。

 髪は整えられ、額を出しているせいか理知的に見える。刺繍がたっぷりの、いかにも貴族という煌びやかな衣装。

 こうしてみると、旅の間、気安くしゃべっていたのが信じられない。


「ああ、こざっぱりしたね。

 我々は、ぬいぐるみという新しい価値あるものを掲げて、守り通してこの場にいる。堂々と胸を張りたまえ」

 張りのある声で、エリオットに鼓舞された。


 べ、別人みたいだ。さすがの威厳に、領主一族ということを再認識する。


「侍女殿、我々の身だしなみは合格をいただけたかな?」

 エリオットはあっという間に軟派な口調に戻ってしまった。


「はい。万全でございます」

 ニコリともせず、鉄壁の侍女がゴーサインを出した。



 外見は整えられた。

 だけど、宮廷の礼儀作法とか全然知らないぞ。


「どう振る舞えばいいかは、トゥランが小声で教える。困ったら、そちらを見ればいい。

 平民ということを承知の上で呼ばれているので、多少はお目こぼしいただけるはずだよ。

 無言になってしまうより、つかえてもしゃべった方がいい。

 私が咳払いしたら、私の方を見るように」


 そう指示されて、迎賓館を出ると馬車が数台停まっていた。

 金ピカで、思わず気後れする。ああ、旅で履いていたブーツのままだったら乗り込めないわ。


 これで、遠くに見える豪邸――王宮まで乗っていくのだ。歩いたら、それなりに時間がかかるだろう。

 王城、広すぎる。


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