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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十一章 王都へ

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五日目 馬車の中

 気怠い朝を迎えた。起きるのがしんどいというか、このまままどろんでいたい。

 まあ、護衛任務の途中だから、そんなわけにはいかないのだが。


 昨日、ボロボロになった制服は回収され、パリッとした制服に袖を通す。

 首元の縫い取りを見つめる。これは首を保護するものだが、昨日はこれを掴まれてピンチになった。

 ――ものの性能は、状況次第で利点にも欠点にもなるんだな。



 今日のペアはオルドだ。

「申し訳ないが、魔法について教えてやる時間は取れそうもない。

 エルフから攻撃される場合、攻撃手段は弓と魔法だ。私と君のところのフォンが中心になる」


「いえ、護衛任務の最中に余裕があったらという、ご厚意によるものだと承知しています。

 本音を言えば残念ですが、昨日、たくさん魔道具を見せていただき、充分勉強させていただきました」

 あまり親しくないので、敬語になった。


「理解が早くて助かる。では、またの機会に」

 オルドはそう言った。



 俺は昨日と同じ商隊用の馬車に乗る。

 オルドは御者台に座っているが、手綱は兵士が取っている。襲撃に構えているのだろう。

 時折、フォンの風魔法がそよ風のように通り抜けた。


 馬車の並び順も元に戻り、最後尾は護送車だ。背後の警戒は、護送車の役目になる。



 俺は馬車の中に寝かされた、負傷兵たちの世話を焼くことにした。グレタ婆さんの手際がよいので、俺はその手伝いに回った。


 ポーションで応急処置はできているが、怪我がひどいとそれだけで治しきれないらしい。結局は体を休めるのが一番、ということになる。

「昨日みたいな乱戦になったら動いてもらう。それまでは、隊列を工夫すれば大丈夫だ。休んでおくように」

 騎士のトゥランがそう言葉をかけていた。


「昨日は、怖くありませんでした?」

 兵士が寝息を立て始め、暇になったのでグレタ婆さんに話しかけた。


「怖かったのは、あんたの方じゃないかい? 長く生きてきたばばあを舐めるんじゃないよ」

 グレタ婆さんは、かかかと笑った。


 あ、年寄りの自慢話が始まった。

 こういうときは対抗したりせず、感心してみせるといい。

「すごいですね。肝が据わっている」


「どんなに獰猛な獣人でも、オーガの悍ましさには敵わないさ」

 グレタ婆さんが沈んだ声音になった。


「オーガですか。この大陸には、いませんよね?」

 本で読んだだけの知識だから、自信がなくて疑問形になった。


「ああ、そうだったね……」

 グレタ婆さんは何かを誤魔化すかのように、話題を変えた。

「ところでアンタは三人のうち、誰が本命なんだい?」


 おい、突然なんだ?

 そして、馬車に乗っている人たちの耳が、一斉にこちらに向いた。

 いやいやいや、何なに。


「そういう――のは、あの、あれですよ。

 同じパーティーの仲間ですから、優劣とかないでしょう」

 慌てて言葉につまる。酒の肴にされるみたいで、嫌だ、こういうの。


「なんだい、ババアに娯楽をくれてもいいじゃないか。つまらない男だねぇ」

 多分、笑いを取るつもりで言っているんだろう。


「俺は前のパーティーに殺されかけて、死にかけているのを助けられたんです。

 そのまま加入させてくれた恩人だから、エロい感じでからかわれたら申し訳ないんで……控えてもらってもいいですか?」

 マジで、からかうのはやめてほしい。波風立たないように受け流すのも疲れるんだ。


「あ、そうかい? 悪かったね」

 グレタ婆さんが首をかしげた。


 あれ、これは……女子会とかで、なにか聞いている感じか?

 冷や汗が出て来た。

 今後もからかわれないよう釘を刺したつもりだったが、グレタ婆さんにとっては白々しい言い訳に聞こえただろうか?


 寝ていたはずの獣人の兵士が目を開けて、こちらを見ている。

 彼は、すんっと鼻を動かした。

 匂いか。

 昨日の夜の匂い……やべぇ。俺が口からでまかせの大嘘つきみたいじゃん。


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― 新着の感想 ―
( ・ㅂ・)。o0(大嘘つきの大罪やん。) 鼻なんてスンって動くわなぁ。。。 酒うまいゎ。。。
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