四日目 エルフ領
門を潜ったら、エルフ領だ。早速、エルフの門番が立っていた。
すぐ脇に広場があり、馬車に乗っていた人たちも全員降りるように指示された。
門番は通行許可証を確認してから、俺たちに向き合った。
「そちらがこの領を通り、王都へ向かわれることは承知しております。
つきましては、エルフに対する害意の有無を確認をさせていただきます。
エルフが誘拐の被害に遭いやすい種族であることをご理解のうえ、ご協力願います」
軍服を着たエルフが、後ろ手を組んで宣言した。
一番身分が高いエリオットが大人しく従うので、俺たちもそれに続いた。
大小二つのゲートがあり、小さい方はそれぞれが徒歩で潜り、大きい方は馬車ごと通る。
小さい方で、一人の兵士が引っかかった。
「え、私ですか? なぜでしょう?」
真っ青になって、「絶対に害意はない」と言い募る。
ゲートを無事に通過した兵士が戻ってきて、小声で門番に言った。
「こいつ、緊縛プレイが好きなんですけど、それでも引っかかりますかね?」
「ちょ、なんで言う……。あの、合意がなければしませんよ?」
今度は顔を真っ赤にして、言い訳をした。
エルフたちがゴミを見るような目つきになった。
「エルフを縛る姿を、かなり具体的に想像されたのでしょうか?」
「そ、それは……とても魅惑的だと、思いました、はい。申し訳ありません」
兵士はしゅんとなって、大きな体を丸めている。
「では、この領内ではこの首輪を装着していただきます。領を出るときに門番に申し出ていただければ、外しますので」
可哀想に。こんなところで性癖を暴露されるとは……。
「我が領は今まで目立つような特産物がなくて、王都に護衛付きで納品しに来ることもなかったからなぁ。
ぬいぐるみの納品は今後も続くから、何か対策を考えないと……」
エリオットは苦笑いした。
「王都の大きな商会でしたら、護衛も頑強な馬車も持っていますよ。
定期的に発生するなら、運搬の契約をするのも一つの手です。そういう人たちはエルフ領のルールも、獣人たちへの対処も心得ていますからね」
門番が思わぬ助言をくれた。
親切というより、ルールに詳しくない者が自分の庭に入らないようにしたい――という意図を感じた。
俺の番が回ってきて、小さい方のゲートを潜る。
ゼリー状の何かに包まれ、体の中を何かが通り抜けるようで、ぞわっとした。
無事に通り抜けられて、心の底からほっとした。
次に大きなゲートを馬車が通る。
オルドの魔道具がいくつか引っかかり、質問を受けた。
問題は護送車で、思いっきりひっかかった。
罪人を収容していると説明したら、出入り口をエルフの魔法で封じていいなら領を通るのを許可すると言われる。
「万が一にも起こらないとは思いますが――エルフ領内で我々を襲う人がいて積み込みたい罪人が増えた場合は、どうしたらいいのでしょうね」
エリオットが口調は丁寧にしつつ、取り調べられているようで不快だと匂わす言い方をした。
「治安を担当する者が魔法を解きますので、その際はお申し出ください」
エルフの門番は答えながら、「絶対にない」と言いたそうだった。
ぎっちぎちに警戒されて足止めされたが、その分、エルフ領は平和に進むことができた。
森が続いたが、道は整備されている。落ちた枯れ枝を魔法で集める作業員を見かけた。
宿場町に入るまでは警戒しないといけないのに、気が緩むのをとめられない。
ダルグに相談したら、「目が覚めるようにビンタしてやろうか?」と返ってきた。
それは……遠慮しておきます。




