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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十一章 王都へ

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二日目 組み分け

 今日はぬいぐるみが積んである荷馬車の護衛で、ベルーフと組むことになった。


「次の日、ひどい二日酔いになったんですよ」

 顔合わせの日に飲みに連れて行かれ、ドワーフ二人に飲まされた。


「あれくらいでダウンか。もっと鍛えなきゃな」


「いいえ。ベルーフさんとは飲みに行きません」

 きっぱりと宣言する。この人、学習しないタイプの酒飲みだ。行くたびに潰されてしまうだろう。

 それに冒険のコツとか職人ならではの視点とか、得るものが何もなかった。

 共感できて気持ちが軽くなったり、前向きになれたりする感じでもなかった。


 悪い人ではないから、お酒抜きで付き合いたい。



 荷馬車には槍術士のメルティナも乗っている。


 メルティナと組むルナも一緒だ。

「あたしは昨日ベルーフさんと組んだから、二日連続でこの馬車なんだ。

 この馬車、仕掛けがあって面白いよ」


 商業ギルドの会計担当、セディもこの馬車だ。

「商業ギルドの馬車の中でも、貴重品を運ぶ仕様ですからね」

 誇らしげに説明してくれた。


「まず、見えるところに積んである箱はダミーです。盗まれても、命がけで取り返さなくていいですよ」


「え、じゃあ、どこに?」


「床下、天井、座席の下などに、収納スペースがあります。

 馬車ごと盗もうとするなら、メルティナさんに槍で突いてもらおうと思います」

 セディは、にっこりといい笑顔で言った。


「そうは言うけどさ、室内だと槍の柄が邪魔になるじゃない。扉を開けるか、屋根に飛び乗るか判断が難しいよね」

 メルティナは柄が折りたためる槍を持っていた。

「これ、携帯には便利だけど、強度がないんだ」


 確かに、折りたためる接続部分は、強度が落ちるだろう。折れたり、肝心なときに曲がったりするかも。


「わしが投網で動けなくしたら、突けるだろ」

 ベルーフが網を膝に置く。


「動けなくなったところを突くだけなんて、つまらない役目だね」

 メルティナが唇を尖らせた。



 ルナが側面に付いている取っ手を指差した。

「これを足場にして、馬車の中から屋根に上がれるんだって」


 言われてから天井を見ると、人が一人通れるくらいの小さな四角い線がある。ちょうつがいのような金具があるから、開閉できるのか。


「外からは開けられないよう、内鍵が付いています。それを開けて、座面に立ち、取っ手に足を掛けて屋根に上がってください。

 ベルーフさんはお腹がつかえて出られないでしょうから、その時はトーマさんが投網を投げてくださいね」


 ルナが立ち上がってパカリと開けると、小さな青空が見えた。

「おお!」

 思わず声が出てしまった。

 場所を譲ってもらってよく見ると、天井が思った以上に分厚い。さっき、天井に収納スペースがあると言っていたから、その分の厚みか。



「あの、投網の投げ方を教えてもらえれば……」

 ベルーフの方を見る。投網はさすがに経験がない。


「『朝中』の休憩前に襲われたら、ルナがやってくれ。昨日、教えたようにな。

 で、トーマには休憩中に投げ方を教えてやる」

 ベルーフが簡単そうに言う。


「全身のバネを使って投げるから、力がいるよ。投げるだけならできるけど、広がらないんだ。

 それを馬車の上からって……練習時間が足りない」

 ルナが珍しく弱音を吐いた。


「最悪、後続車の邪魔にならなければいいさ。他にもいろいろ道具はある」

 ベルーフは楽しそうに、次々と道具を披露していく。



 メルティナが窓から景色を見て、ルナに声をかけた。

「そろそろ屋根に登って警戒しようか。藪とか廃屋とか隠れる場所があるんだ」


 二人はするりと天井の小窓から出て行った。

 ベルーフは腕を伸ばして、投網をルナに手渡していた。


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