二日目 組み分け
今日はぬいぐるみが積んである荷馬車の護衛で、ベルーフと組むことになった。
「次の日、ひどい二日酔いになったんですよ」
顔合わせの日に飲みに連れて行かれ、ドワーフ二人に飲まされた。
「あれくらいでダウンか。もっと鍛えなきゃな」
「いいえ。ベルーフさんとは飲みに行きません」
きっぱりと宣言する。この人、学習しないタイプの酒飲みだ。行くたびに潰されてしまうだろう。
それに冒険のコツとか職人ならではの視点とか、得るものが何もなかった。
共感できて気持ちが軽くなったり、前向きになれたりする感じでもなかった。
悪い人ではないから、お酒抜きで付き合いたい。
荷馬車には槍術士のメルティナも乗っている。
メルティナと組むルナも一緒だ。
「あたしは昨日ベルーフさんと組んだから、二日連続でこの馬車なんだ。
この馬車、仕掛けがあって面白いよ」
商業ギルドの会計担当、セディもこの馬車だ。
「商業ギルドの馬車の中でも、貴重品を運ぶ仕様ですからね」
誇らしげに説明してくれた。
「まず、見えるところに積んである箱はダミーです。盗まれても、命がけで取り返さなくていいですよ」
「え、じゃあ、どこに?」
「床下、天井、座席の下などに、収納スペースがあります。
馬車ごと盗もうとするなら、メルティナさんに槍で突いてもらおうと思います」
セディは、にっこりといい笑顔で言った。
「そうは言うけどさ、室内だと槍の柄が邪魔になるじゃない。扉を開けるか、屋根に飛び乗るか判断が難しいよね」
メルティナは柄が折りたためる槍を持っていた。
「これ、携帯には便利だけど、強度がないんだ」
確かに、折りたためる接続部分は、強度が落ちるだろう。折れたり、肝心なときに曲がったりするかも。
「わしが投網で動けなくしたら、突けるだろ」
ベルーフが網を膝に置く。
「動けなくなったところを突くだけなんて、つまらない役目だね」
メルティナが唇を尖らせた。
ルナが側面に付いている取っ手を指差した。
「これを足場にして、馬車の中から屋根に上がれるんだって」
言われてから天井を見ると、人が一人通れるくらいの小さな四角い線がある。ちょうつがいのような金具があるから、開閉できるのか。
「外からは開けられないよう、内鍵が付いています。それを開けて、座面に立ち、取っ手に足を掛けて屋根に上がってください。
ベルーフさんはお腹がつかえて出られないでしょうから、その時はトーマさんが投網を投げてくださいね」
ルナが立ち上がってパカリと開けると、小さな青空が見えた。
「おお!」
思わず声が出てしまった。
場所を譲ってもらってよく見ると、天井が思った以上に分厚い。さっき、天井に収納スペースがあると言っていたから、その分の厚みか。
「あの、投網の投げ方を教えてもらえれば……」
ベルーフの方を見る。投網はさすがに経験がない。
「『朝中』の休憩前に襲われたら、ルナがやってくれ。昨日、教えたようにな。
で、トーマには休憩中に投げ方を教えてやる」
ベルーフが簡単そうに言う。
「全身のバネを使って投げるから、力がいるよ。投げるだけならできるけど、広がらないんだ。
それを馬車の上からって……練習時間が足りない」
ルナが珍しく弱音を吐いた。
「最悪、後続車の邪魔にならなければいいさ。他にもいろいろ道具はある」
ベルーフは楽しそうに、次々と道具を披露していく。
メルティナが窓から景色を見て、ルナに声をかけた。
「そろそろ屋根に登って警戒しようか。藪とか廃屋とか隠れる場所があるんだ」
二人はするりと天井の小窓から出て行った。
ベルーフは腕を伸ばして、投網をルナに手渡していた。




