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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十一章 王都へ

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二日目 休憩時間

 日の出と真昼の中間、「朝中(あさなか)」の休憩中に、投網の練習をする。

 ベルーフがお手本を見せてくれた。バッと広がって、気持ちいい。この面積にいる人の動きを封じられたら、とても有利に戦えそうだ。


 やってみろと言われ、まずは広がった網を回収するところから始める。

 重たい。

 たたみ方が難しい。

 投げるだけで腕と太ももがミシミシいうぞ。


「投網を使う人が多くないの、わかった気がします」

 戦闘中なら、たたんでいる暇はないし。


「がはは。その上、メンテナンスもしないといけないから、面倒くさいな。

 相手が怪力だったり、短刀を持っていたりしたら効果が薄い。

 だが、風の魔法使いと協力したら、良い感じに使えるぞ」


 ああ、花猫風月にはフォンがいるから、投網を有効に使えるかもしれない。

 もしかして、それもあって教えてくれているのか?



 ルナは、槍の間合いを剣でくぐり抜けるコツを教わっていた。

 柄の部分で背中を叩かれて、ルナが膝をつく。

 地面を叩き、悔しそうなうなり声を上げた。



 荷馬車に小さな影がよぎった。

 そちらに顔を向けると、子どもが扉を開けようとしている。

 バールを隙間に差し込もうとしているので、無邪気な好奇心ではないだろう。


 投網を投げるか?

 一瞬迷ったら、ベルーフは俺から投網を奪って、広げずに遠心力を使って横からなぎ払った。

 子どもたちが吹っ飛ぶ。


 サァラと雪豹獣人ラティーアが着地点に走り、受け止めた。

「打撲だけだ。殺さない力加減が見事です」

 とラティーアは言うが、子どもたちは悪態もつけずに唸っている。


 襲ってきた連中は自力で立てないので、そのまま護送車に運ぶことになった。



「苦々しい顔をしている人間がいないか、気にしておきなさい。親切心か一味か、どちらかでしょうから。

 顔は動かさずに目線だけでチェックして」

 子どもを抱えたラティーアが、小声で指示する。


 俺は、彼女が確認できない背後に注意を向けた。

「……いないようです」


「ならば、ただの捨て駒なのでしょう。失敗しても構わない、捕まったら見捨てる――そういうことです」



 護送車には、メルティナの槍で殴られた子どもがもう乗せられていた。



「子どもを檻に入れるのか?」 

 なんだか可哀想だと、ほんの少し罪悪感が湧いた。


「子どもは洗脳しやすいですよ。

 損得よりも、褒められたくて自主的にやるようになります。

 他から情報を得なければ、疑いを持てません。

 幼い姿は、我々を油断させる武器になるのです」

 冷静にラティーアは語る。


「もし、宗教団体が差し向けたのなら、ここで保護してやる方が本人のためということもあるのだ」

 エリオットが護送車に近づいてきた。


「もしかして、わざと襲撃させたんですか?」

 休憩中も監視する当番の兵士はいるはずだ。よく考えたら、荷馬車に近付けたこと自体がおかしい。


「相手が手がかりをくれるなら、拾っておく。

 こちらは被害者だよ。この馬車の傷の修理費なんて、平民には払えないだろう」

 エリオットは、俺たちにこの旅の心構えを説明しているかのようだ。


「話の通じない人間は、モンスターと一緒だ。

 罠を仕掛けた方が安全に狩れるなら、そうすべきだと私は考えている」

 エリオットは微笑みながら、俺を見た。


 俺のモンスター討伐の作戦は、正攻法ではない。それは、戦闘スキル持ちのように、力任せではできないからだ。


「罠も立派な作戦だからな」

 ベルーフがニッと得意げに笑った。


 ガチャンと硬い音がして護送車の扉が閉まり、エリオットが魔道具で鍵をかけた。



 休憩場所を出発する前に、今度は俺とベルーフが屋根で見張る番だと言われた。

 ベルーフは後ろから登り、俺は室内から登る。

 おお、秘密基地みたいで楽しい。


 屋根に並んで座る。

 屋根に荷物を詰めるよう、背の低い柵がついていた。


「道具は『正しく使わなきゃいけない』なんてルールはないぞ。相手を戦闘不能にできりゃ、なんだっていい」

 ベルーフが、がははと笑った。


 一緒に笑えず、複雑な顔になってしまう。

 しゃべれない状態になるほどの力で、ためらいもなく攻撃したよな、この人……。


 それに気付いたベルーフが、拳で俺の胸を軽く叩いた。

「おい、気をつけろ。頭のいいガキは、大人の盲点を突いてくるからな」


 それは、護衛のプロの……実戦から生まれた重い一言だった。

 軽くよろけた俺は、屋根から落ちないように柵を握りしめた。


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