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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十章 変わるもの

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評価とモテは微妙に違う

「人員配置は、情報漏洩を避けるため当日発表します。トゥランさんとダルグさんはこの後、打ち合わせしましょう」

 商隊長になるロイが、その二人を見た。


「王都に到着してからの動きは未定です。

 誰かが関係部署に呼ばれるかもしれないし、話を訊かれるだけではすまないかもしれない。

 そのあたりは随時連絡を取り合っていく予定です。連絡方法は王都に着くまでに検討しておきます」

 ロイがそう締めくくり、ようやく顔合わせが終わった。


 はあ、すっごく疲れた。


 ルナは机にぐったりと突っ伏して「え~、あたし、危機感が足りなかったのかぁ。リーダーとして失格じゃん」と落ち込んでいる。

「それを言うなら、私も危機意識が低かったわ。サークレットを外せればいいと考えていたもの」

 フォンがルナの頭をなでた。

「俺も、あんなふうに言われてびっくりだよ」

 俺だって冒険者なのに、守られる立場というのも恥ずかしいし、悔しい。



 そこに領主の孫、エリオットが話しかけてきた。

「ねえ、君。トーマ君」

「は、はい! なんでしょうか?」

 まだ帰ってなかったのか。


「君はどんな女の子が好みなのかな?」

「え、はい?」

 いきなり何だ? なんて答えればいい?


「貴族ではないお嬢さんもたくさん知っているからね。いい娘がいたら紹介するよ」

 なぜ突然、見合いのような話を持ちかけられているんだ? 状況がまったく見えてこない。


「領主様に、トーマ君を囲い込むつもりがあるのですか?」

 商業ギルドの会計担当の人が割り込んできた。


「だって、ブロンズタートルを傷つけずに討伐するのを考案したのも彼なのだろう? 薬師や芸術家からも注目されている、期待の人物だよ。

 トゥルメルの冒険者ギルドが売りだす窓口になったら、人が集まって街が発展する可能性を秘めている」


 ああ、ブロンズタートルか。そういえば、そんな話もあったなぁ。あれだって、冒険者ギルドの資料室で調べた、他の亀の弱点を応用しただけなんだけど。


「それなら、商業ギルドで可愛くて働き者のお嫁さんを斡旋します」

 会計担当は、領主一族に張り合うつもりらしい。


「それならそれでいいけど。この領内の娘にしてくれよ」

 エリオットは、あっさり引き下がった。

 なんだこの茶番。俺はダシにされてるだけじゃないか。商業ギルドに売り渡されたみたいな……。領地を繁栄させるために考えているのは立派だが、あまり面白くない。というか、不愉快だ。



「そういうの、お呼びでないにゃ!」

 サァラが俺に抱きついて、勝手なことをしゃべっている人たちを牽制した。

 ありがたい。ホッとした。サァラの可愛さで、断っても角が立たない気がする。

「そういうことなんで、お気遣いいただかなくても大丈夫です」

 はっきりと宣言する。ここは「え、可愛い子? 紹介して」なんて、ふらついたら駄目な場面だ。


「おお、羨ましい。モテモテじゃないか。余計な口出しをしたな、失敬」

 そう言ってエリオットは離れ、騎士のトゥランが打ち合わせをしている方に歩いて行った。


 いや、モテてるんじゃなく、金勘定に巻き込まれているだけだろ。 そこに俺の人柄とか人生設計とか、まったく考慮されてないもんな。

「人」を見る前に利を計算して、それを「好意」のように錯覚させる。貴族も商人も油断ならない。



 親父ギャグを言っていたドワーフに話しかけられた。

「ちょっといいか?」


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