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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十章 変わるもの

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王都に行く目的

 ギルドマスターが俺たちの方を見て、苦笑いした。

「あのなぁ、お前たち『花猫風月』は他人事じゃないんだぞ」


 やれやれ、とでも言いたそうな顔だ。


「王都に行ったら、トーマとフォンは関係部署からいろいろ話を訊かれると思っていてくれ。

 こちらから調査報告は上げているが、事実誤認がないか確認したいだろうし」


 ちょっと待て。そんな話、初めて聞いたぞ。

 フォンの顔を見た。彼女も初耳らしく、小さく首を横に振る。


「ギルドマスターが事実をねじ曲げて報告したってこと?」

 ルナが眉をひそめた。


「違うよ。何人か間に入ると、話が微妙に変わることがあるだろ。特に役人が役所言葉に整えると、焦点がぼけちまう」


 傭兵がくくっと笑いをこらえ、騎士は咳払いをした。


 ギルドマスターは、関係者に改めて説明をした。

「トーマは、レスタール王国内の冒険者ギルドの不正が明らかになるきっかけとなった。

 フォンは、特殊な宗教団体の関係者に育てられ、盗聴用のサークレットをそれと知らずに装着させられてきた。

 それぞれの関係者が証拠隠滅や復讐のために狙ってくることもある。護身の方法を道中で教えてやってほしい」


 フォンは唇をきゅっと噛んでいる。


「トーマはそっちの坊主か。フォンってのは?」

 Aランクの獣人が確認してきた。

 そういえば自己紹介をしていないな。


「あ、私です」

「ああ、サークレットって額の飾りのことか。盗聴は常時発動か? 同行するだけで情報が漏れる可能性は?」

 後ろで「リーダーは装飾関係に興味なさ過ぎ」とダークエルフがぼやいた。


「ダンジョン近くの古道具屋で、私が盗聴魔法を使う時に便乗されていると言われました。常時発動はしていません」

 フォンが淀みなく答えた。


「ならいいか。Cランクにしては手際がいいし、話が早い」

 満足そうに口角をあげた。


 同行者として合格ということかな?

 ……いや、王都に行きたくなくなってきているんだが。



「じゃあ、基本方針は問題ないか?」

 ギルドマスターが全員を見渡して、確認した。

 領主の孫を見て、ハッとした顔をしてから姿勢を正した。

「明日の午後、実際に同行するメンバーで顔合わせをしましょう。

 本日はお集まりいただき、よき話し合いができたと思います」


「ギルドマスター、私に気を遣わなくていいよ」

 領主の孫は微笑んで見せた。

 真っ先に孫が部屋を出て行く。その後ろで、騎士の方が「けじめというものは大切です」と孫をたしなめていた。


 Aランクの獣人が椅子の音を立てながら立ち上がった。

「気さくなお貴族様みたいだが、肩が凝るぜ。

 ラティーア、お前さんは王宮勤めだったから平気なのか?」


 女傭兵が彼の顔を見た。

「そんなわけないだろう。堅苦しいのが苦手で辞めたのに」


 商業ギルドの職員が、眉を下げた。

「同行する職員に、失礼がないように言い聞かせないと。

 領主様も国王陛下に顔を繋いでおきたいのでしょうね」


 強者たちが和やかな雰囲気で去っていく中、俺たちCランクはただ呆然と立ち尽くすばかりだった。

 迫力に当てられたというか、話の大きさについていけないというか……。



「人が多くて、覚えるのが面倒くさいにゃ」

 サァラがぼやいた。

 まったく同感だ。


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