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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十章 変わるもの

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強者たちが集合

 しばらく貴賓室のソファーの辺りにいたのだが、ギルド職員に促されて会議用のテーブルに移動した。代表者たちが案内されて席を埋めていく。


 Aランクパーティーのリーダーは犬系の獣人、傭兵らしき女性の獣人、商業ギルドの被服部門担当といった顔ぶれだ。

 ルナも席に案内されたが、座るのをためらっている。それぞれが強者の雰囲気を醸し出していて、Cランクパーティーの俺たちは場違い感がすごい。


 そこに冒険者ギルドのギルドマスターが入ってきた。

「おう、ルナ。なんで立ってる。リーダーなんだから座っとけ」


「え、でもさぁ……」


「悪いが、今日はお前に構ってやる余裕はねぇ。割り振られた役目を果たしてくれ」

 ギルドマスターが少し緊張気味に、妙なことを言う。


 状況がわからないのは俺たちだけみたいだ。

 ルナが渋々と座った。フォンがその肩にそっと手を置いて、「私たちが後ろにいるわ」と囁いた。



 廊下から微かなざわめきが聞こえてきた。


 現れたのは――たぶん、貴族。ギルドマスターの緊張は、このせいか。

 青年は、領主の孫だと自己紹介した。後ろには領主一族の護衛騎士がついている。

 マジか?

 領主の孫が王都まで同行するって、なんでだよ? ぬいぐるみを運ぶだけだろうが。



 ギルドマスターが会議の開始を宣言した。

「忙しいところお集まりいただき、恐縮です。

 本日の議題は、三日後に王都に向けて出発する商隊の護送についてです。対象は、王侯貴族に納品するぬいぐるみ二十体です。

 商業ギルドさん、間違いはないですか?」

 ギルドマスターが敬語を使っている。お貴族様がいるから、当たり前か。


「はい。商品については、その通りです。

 おそらく今後の作成数などについて質問が出るでしょう。ぬいぐるみ作成の進行管理をしている職員を同行させます。それから、ぬいぐるみを最初に作成した農婦にも同行を依頼しました」


 ああ、グレタばあさんね。


「それはいいね。きっと、作成秘話なんかを聞きたがる方がいらっしゃると思うよ」

 領主のお孫さんからお褒めの言葉が出た。


「王都までは五日ほどです。進行管理や隊列に関しては、領主の騎士団から任せてほしいという話が出ています。それでよろしいか?」

 ギルドマスターは、冒険者たちに顔を向けて、確認を取る。


「騎士たちに、冒険者と協力する意思があるならいいが。こちらを見下す傾向があるだろう。部下でもないのに下っ端として扱うつもりなら、依頼を断る」

 Aランクパーティーの強面が、はっきりと言った。


「騎士団の中でも、冒険者に対して偏見がない者を選出する。貴殿たちの意見をきちんと聞き、相談して進めるよう指導するので、安心してほしい」

 騎士が請け負った。


 傭兵の女性が挙手をして話し出した。

「私は別の街を拠点にしています。今回は、呼ばれて来ました。

 私が傭兵の立場から発言すると、話し合いが収拾つかなくなるのではないですか?」


 ギルドマスターがニヤリと、いつもの顔になって笑った。

「いや、必要だ。

 貴重な品を運ぶだけなら、商業ギルドに任せておけばいい。だが、このぬいぐるみは盗賊だけじゃなく、貴族たちが横槍を入れて奪いに来る可能性がある」


「途中の領主に積み荷を要求されたとき、断るために私が盾になりましょう」

 領主の孫が微笑んだ。

「貴族や裏家業の者が依頼を受けて盗みに来ることも、想定しています。その場合は身柄を確保して、尋問……情報を引き出さないといけません。

 君は、そのあたりを得意としていると聞いたのですが?」


「理解しました」

 傭兵が軽く頭を下げた。


「盗賊などに襲われた際は、騎士の半分はご子息の守りに入ります。

 君たちには荷物の方をしっかり守って欲しい」

 騎士がそう言った。


「ああ、そういう役割分担か。残りの騎士の半分をどうするかは……」

 Aランクのリーダーが言いかけたところ、ギルドマスターが手で制止した。

「もう一つ、重要な仕事があるんだ」

 ギルドマスターが深刻な雰囲気を出すので、貴賓室に緊張が走った。


「あの、あたしたちは同道しない方がいい気がしてきたんですけど」

 ルナが恐る恐る口を出した。

「グレタばあさんが可哀想だろう。話し相手として参加するべきだと思うよ」

 商業ギルドの職員が、笑顔なのに逆らえないような圧を出してきた。


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