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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第九章 ダンジョン

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ガルドの後悔

 殴られて、脅されて、取り調べを受けた。

 エレッサ支部では落ち目だと見下されたが、こんなに根掘り葉掘り訊かれなかった。

 ここは故郷のレスタール王国じゃなく、ファルガン共和国だ。獣人も多い国だから、しつこくて荒っぽくて野蛮なのか。



 俺は剣士、ガルド。

 レスタール王国のエレッサという街を中心に活躍する、「鮮血の深淵」という冒険者パーティーのリーダーだ。


 トーマとは幼なじみで親友だ。

 俺が冒険者パーティーに誘ったから、「冒険者になる」という夢を叶えられて感謝しているはずだ。しょぼいスキルをもらって気落ちしていたけれど、それでも諦めていなかったんだ。

 宿屋に住み込みで入り、平凡な人生を歩んでいくのだろうと同情していたが、まあまあ活躍している。



 剣士のスキルを得たとはいえ、俺もすぐに第一線で活躍できたわけじゃない。

 ワイバーン討伐のメンバーに選ばれなかった。


 討伐は成功したらしいが、クランを率いるアーデンさんが大怪我をしたと連絡が来た。

 クランがどうなるのかと不安な日々を過ごしていたら、アーデンさんとエドガーさんと一緒に、トーマがやってきた。


 アーデンさんと仲良く仕事しやがって。

 俺たちはまだ下の方で、幹部の人たちと話す機会も少ないのに。



 クランが解散になって、ブルーノとパーティーを作ろうという話になった。

 クランがあったハロルの街から、人が多いエレッサの街に移動する。


 そこで女性二人組のパーティーと組むことにした。

 エレッサの街にはトーマがいる。誘ってやって、五人で活動するのも悪くないんじゃないか。あいつは、いろいろ便利だしな。



 雑用を任せたら、そつなくこなす。まあ、スキルの恩恵があるからだろ。

 女と遊んでいるのを見せつけても、何も言ってこねぇ。もっと羨ましがれよ。


 事前の下調べが必要だとか言ってトーマがギルドの資料室に籠もっている間に、その依頼を他のパーティーに取られたことがある。

 口うるさくて、ケツの穴の小さな男だ。あいつが俺たちの足を引っ張っているんじゃないか?


 それなのに、鮮血の深淵の快進撃はトーマのおかげだという奴らがいた。腹立たしい。


 追放だ。

 あんな奴がいなくても、俺たちは強いと証明してやる。

 俺たちに追い立てられて逃げていくトーマは、惨めな負け犬だった。あばよ。



 ブロンズタートルを持ち帰り、俺たちはもて囃された。人に囲まれ、賞賛を浴びた。

 Cランクにも上がれた。


 冒険者ギルドの受付では、トーマは死んだと言ったらすごく残念がられた。不審に思われたらいけないので、神妙な顔をしたつもりだ。

 まあ、冒険者なら、メンバーが欠けることもあるだろう。しかも、パーティー内であいつは最弱だったし。


 報酬は、トーマが予想していた金額より低かった。ほら、やっぱりトーマなんか先が読めない、使えない奴じゃん。

 だけど、五等分ではなく四等分になったので、一人の取り分はなかなかの額になった。


 今まで行ったことのない店に行き、豪遊した。武器だって新調できる。女の子たちが寄ってくるんだ。

 すげぇ。



 討伐依頼も、Cランクは報酬が桁違いだ。


 だが、失敗した。違約金が発生する。

 残り少ない金を取られて、俺たちは焦った。



 トーマが下調べをして、作戦を立てていたからか。それなら、あいつの代わりになる奴を探せばいいんだろう。

 ――だが、うまく見つからない。

 ただ調べて、作戦を考えるだけだぞ。


「そんな人材がいたら、お前たちに紹介せずに自分の仲間にするよ」

 と笑われたこともある。



 そんな中で、弓使いのセリアが捕まった。

 大昔に、犯罪者として指名手配されていたらしい。

 だからトーマを殺そうとしたのか、セリア。


 そうだ。俺はトーマが目障りだと思っただけで、殺そうなんて考えていなかった。

 討伐で興奮している最中に、セリアがためらいなく矢を射かけたから。少し怖い思いをさせてやろうと、便乗してしまっただけ。

 全部、セリアのせいだ。



 セリアと組んでいた魔法使いのヴェリーに、殺人犯だと知っていたのかと問い詰めた。

 酒場で意気投合したから組んだだけだと。素性は知らないと言う。

 ふざけるな。無責任だ。騙された。


 俺たちはとばっちりを受けて、事情聴取された。

 もう、すべてをセリアのせいにしてしまえ。


 殺人未遂だと……未遂? トーマは生きているのか。

 なんだ。大したことないんじゃないか。



 ギルド職員が、トーマを連れ戻してパーティーを再結成できたら、罪を不問にしてくれると言う。

 そんなことができるのか?

 国王が、トーマの知恵を評価しているらしい。隣国に取られたので、取り返さなければということだ。

 それなら、やってやりますか。



 しかし、またトーマか。

 しょぼいスキルしかもらえなかった、みそっかすが。

 今度は、国王にまで目をかけられるなんて、運が良すぎる。スキルがしょぼい分を、運で穴埋めするのかもしれないな。



 悔しいが、それしかないのなら、やってやるよ。頭を下げて、連れ戻せばいいんだろう。


 まぁ、食事の準備やモンスターの素材剥ぎ取り、夜番――あいつがいたら楽になるからな。

 Eランクに落ちたのも、Dランクには戻れるだろう。



 それなのに、戻らないと一蹴された。何様だ、あいつ。

 人前で馬鹿にされ、もみくちゃにされた。

 なんか、ハーレム作ってるじゃねぇか。ふっざけんなよ、マジで。



 トゥルメルの冒険者ギルドの牢屋から、王都の牢屋に移送されるという。

 トーマと俺たちの仲違いの件だけじゃなく、エレッサ支部やレスタール王国の不正も関わって大ごとになっているって? 知らねぇよ、そんなこと。



 移送される前にトーマが牢屋に会いに来たら、今度こそちゃんと謝ろう。

 許してくれなかったら、故郷の親に手紙を出してくれるように頼もう。


 畑を売って、保釈金を出してくれるはずだ。冒険者になってから一度も戻っていないから、心配しているだろう。

 仕方ないから、故郷のカミナ村の自警団に入ってもいい。アーデンさんが冒険者を引退して村に戻ったし、昔よりはマシな集団になっているだろうし。



 ……トーマ、なんで会いに来ないんだよ。

 夜が明けたら、冒険者ギルドから連れ出されて、俺はひどい目に遭うかもしれないんだぞ。

 助けろよ。

 一緒に冒険者になろうと誓った、幼なじみじゃないか。




 王都の尋問室で、取り上げられた俺の剣を尋問官が持ってきた。


「切り傷がどんなに痛いか、体験してみるか?」

 俺の剣を、俺の目の前でちらつかせる。

「裏切って切りつけておいて、仲間だ、親友だ、許してくれるはずだ? 寝言言ってんじゃねぇぞ」


 涙目になった俺を、もう一人の尋問官が小突いた。

「レスタール王国じゃ、こんなんでもCランクになれるのか。レベル低いなぁ」


 悔しい。馬鹿にするな。


「やっぱ、こいつら捨て駒だ。大したこと知らないまま、いいように使われただけか」

 そんな言葉を吐きかけられた。



 尋問が終わって、怪我の手当もされずに放置された。

 粗末な食事だけが差し入れられて、誰も来ない。

 声を出すが、反応はない。ブルーノは近くにいないのだろうか。


 狭い独房。明かり取りの小さな窓。扉には食器のやり取りができる隙間とのぞき穴。


 尋問でも、人としゃべれるだけマシかもしれない。

 そんなことを考えるようになった。


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― 新着の感想 ―
 越えちゃいけない一線をあっさり踏み越え、謝罪じゃない謝罪してくる相手に友情は戻らない。郷里の家族だって愛情も木っ端微塵だろ。
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