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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十章 変わるもの

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意外と大ごと

 俺たちは徒歩で冒険者ギルドがある街に戻ることにした。

 結局、ダンジョンでは小さな魔石をいくつか得ただけだ。


「食事代にしかならないな」

 ルナが苦笑いした。


「無いよりはマシだけどねん」

 サァラは、飛び跳ねるように歩いている。

 もしかしたら、鼠獣人のミナスから離れられて喜んでいるんだろうか。




 日が傾く前に街に着き、冒険者ギルドで魔石を換金した。

 ギルドマスターの部屋に寄るようにという伝言を受けて、そちらに向かう。


 俺たちは応接セットではなく会議テーブルに案内された。ダンジョン帰りで汚れているから、ソファーに座らせたくないんだろう。


「トーマの殺害未遂の奴ら、行く先が決まったぞ」

 座った途端、急ぐようにギルドマスターが話しだした。実際、忙しいのだろう。


「ガルド、ブルーノ、ヴェリーは軍属奴隷として服役する。

 戦になったときに従軍して雑務をやったり、冒険者ギルドで対応し切れないモンスター討伐の際の先駆けをやったりだな。

 平常時は軍の施設で下働きだが、平民でも逃げ出す業務が割り振られるだろう。

 ……まあ、そんなに長生きできないだろう」

 書類から顔を上げて、ちらりと俺を見る。


「指名手配されていたエルフは、犯罪者の引き渡しで話がついた。エルフの国で罪を犯したこっち側の人間と、交換する。

 エルフの国での刑罰は、長寿な種族ならではのえげつないものらしい」


 そう言われて、俺は自分の手で仕返しをしていないなと気がついた。

 追放された直後はすごく悔しくて、眠れない夜もあった。犯罪者になってもいいから、あいつらをぶち殺してやる、と思ったこともあるんだけどな。

 今の生活が濃すぎて、遠い昔話みたいだ。

 突飛な発言に振り回されたり、ぬいぐるみ騒動に巻き込まれたり、それどころじゃないからか。



「ギルド職員の女は公娼行きだ。横領した金額は稼がせるから、返済には少し時間をくれ」


「そんな金、もらっても気持ち悪いんですけど」

 なんか情念とか染みついてそうで嫌だ。


 ギルド職員が横から口を挟んだ。

「『公娼』という措置は、『保護』とも言えるのですよ。

 ギルド職員が、死亡届を悪用して横領したのです。

 今後いかなるギルドでも雇用されませんし、どんな職に就いてもギルドに登録してギルドカードが作れません。

 まっとうな社会からはじき出されたら、娼婦くらいしかできないでしょう。裏通りで客引きするよりはマシなはずです」


「元々お前の金だったんだから気にするなって。口座から盗まれたものを取り返すだけだぞ。

 お前、妙なところで潔癖だな」

 ギルドマスターが呆れたように言った。


 それもそうか。ただの金として受け取ろう。




「えーと、それから……彼女以外のギルド職員とエレッサ支部のギルドマスターは国際裁判だな。

 冒険者ギルドが国をまたいで役割を果たすのは、世界の安寧のためだ。それを脅かしたわけだから、普通の犯罪とは扱いが異なる。

 レスタールの国王も参考人という名目だが連行されている。

 もしかしたら、こっちの共和国に併合されるかもな」


「すごい、大ごとじゃないですか」

 びっくりした。世界規模の話になっている。


「他の王族が『今後はちゃんとする』と諸外国を納得させられたら、国王交代で国は継続できるだろうが……どうだろな。

 国王とギルドマスターが癒着して、冒険者を冷遇していたわけだから。

『統治能力に欠ける』と攻め込む口実ができて、周辺国は損得計算をしているだろう。

 まあ、その辺は冒険者ギルドの支部長くらいじゃ関わりねぇけど。

 傭兵ギルドなら、稼ぎ時かもな」

 ギルドマスターは眉間を指で揉んだ。かなりお疲れのようだ。


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