第八十九話 「決別」
……切り札。
その言葉に、違和感を覚える優駿。
連合軍の主軸となる戦力と言えば───。徐栄、朱真、そして龍大聖。……この三人の筈なのである。
しかし、この三人を"切り札"と呼ぶのには、優駿には少しの違和感があった。
切り札は、最後まで隠す存在の筈である。……つまり連合軍には三人の将軍以外に、まだ"切り札"と呼べる存在が居ると言う事なのだろうか?
そして、この緊迫した空気の中で公孫翔が出した答えとは───。
「公孫翔さん、少しいいですか?」
「……どうした?晋。」
数日後、公孫翔の居る執務室に訪れる司馬晋の姿があった。
「僕、翔国軍を抜けようと思うんです。」
「…………。」
公孫翔の顔に、少しの動揺が走る。
「訳を聞かせて貰えるか?」
「……はい。」
暫く黙った後、司馬晋はゆっくりと話し出した。
「公孫翔さん、貴方は凄い人だ。まだ幼かった貴方はたった一人で盗賊団に入り、すぐに頭角を表して頭目まで上り詰めた。更に貴方は二百人程度の盗賊団で挑み、四万もの王国軍に勝利した。……そして今や貴方は大陸の半分、六国を束ねる大王だ。」
「…………。」
司馬晋は話を続けた。
「正直、僕は驚いたよ。……この世に、こんな凄い人が居るなんて僕は全く知らなかった。」
「そうか……。」
「はい、正直憧れちゃってます。」
「……それで。それが、どうして軍を辞める事に繋がるんだ?」
司馬晋は、少し寂しそうな表情で話を続けた。
「憧れてるだけじゃ、駄目なんです。僕は貴方みたいな人になりたいんだ。少しでも、公孫翔さんに近付きたい。たとえ無理だと分かっていたとしても……。だから、僕は行かなくちゃいけないんです。」
「そうか、それは残念だ。……しかし俺には、出ていく者を止める権利など無い。お前と優駿の二人には、かなり助けられた。特にお前の知力は、俺の目にも見張るものがあった。出来れば俺が十国を征するまで、お前には居て貰いたかったんだがな……。行ってこい晋。俺達は皆、お前を応援する。」
公孫翔は軽く肩を叩き、友の新たな門出を祝った。
「行ってきます、公孫翔さん。……でも次に会うと時は、もしかしたら僕達は敵同士なのかも知れませんよ?」
「ハハハ……。そうならない事を願うしかないな。」
そして司馬晋は、翔国から去っていった。
「待ってよ、晋!」
公孫翔から話を聞き、慌てて後を追いかける優駿。
「翔国軍を抜けるって、本気なの?晋!どうして……。」
「…………。」
司馬晋は、少し寂しそうな表情で笑っていた。
「優駿、人はね……。皆、夢や目標に向かって生きているんだ。」
「夢……?」
「……そう、夢。刹那は決して誰にも負けない剣豪を目指し、日々頑張っている。士龍は公孫翔が作る平和な国を信じて、仲間の為に必死に戦っている。張翼も天下の大将軍目指して、頑張っているしね……。優駿、君にも夢や目標があるでしょ?」
「僕の夢は祖国を取り戻す事だったから、それはもう叶ってるけど……。今の目標は公孫翔さんに付いていって、行方不明の妹を探し出す事かな?」
「そうだね。僕も見つけたら、すぐに君に知らせるよ。」
「ありがとう晋。……でも晋の夢は、翔国では叶わないの?」
「そうだね、ここじゃ叶わないかな……。」
司馬晋は何処か寂しそうな表情で、そう話していた。
「それじゃあね、優駿。無事、妹さんが見つかると良いね。……あ、それと優駿。次会う時は、もしかすると僕達は敵同士かも知れないよ?」
「いやいや、冗談は止してよ晋。……所で、晋の夢って何なの?」
「内緒。」
そう話す、最後の司馬晋の顔は笑っていた。
「…………。」
寂しそうな表情を浮かべ、友を見送る優駿。
しかし二人が再び出会う時、あの様な凄惨な運命が待ち受けている等とは───。
この時の優駿は、まだ知る由も無かった。
武将紹介
「優駿」
武力 47
知力 87
主人公 オーラがあまり無い。
一応これでも主人公。
亡き国、優国の王子。
生き別れの妹を探している。
祖国の復讐の為、蛇国と戦う決意をすが。諦めて物乞いや盗みを働いている。
頭は悪く無いのだが、使い方を知らない。
こんな治安の悪い、しかも圧政に苦しむ翔国に来た事を少し後悔している。
「刹那」
武力 89
知力 54
髪型 95 かなり気合い入れてる。
村の自警団の一員。
剣の腕は相当な物で、盗賊百人を平気で蹴散らす実力を持つ。この大陸でも屈指の実力を誇ると言えるだろう……。
でも頭の方は、お察し。
綺麗な長髪の黒髪が特徴。毎朝一体何時間掛けているんだ?って位に気合いが入っている。
「公孫翔」
武力 92
知力 99
髪型 98 美容院通ってるの!?
朧の団の若きリーダー。義賊。これでもかって程、髪型に気合いを入れている。え?毎日、美容院通ってる?ってレベルに気合いが入っている。後、仲の良い妹が一人居る。
「黄牙」
武力 96
知力 77
自称 最強剣士。
公孫翔の相棒。非常に腕の立つ剣士。最強を自負しているのだが、実際は……。
「劉士元」
武力 97
知力 67
暗殺 最強の一族
大陸最強の暗殺者一族、"剣竜"。
「張翼」
武力 94
知力 87
自分 大好き
翔国、臥龍配下の部隊長。その実力から、将来を有望視される人物。野心家で、自信過剰な所がある。
「士龍」
武力 88
知力 67
努力 家
志願兵の一人。刹那にその実力が認められ、一隊を任せられる。槍の使い手で、実力はそこそこ。割と勘が冴える所もある。
「司馬晋」
武力 93
知力 95
糸目 開眼しないタイプの糸目。
掴み所の無い、何考えて居るのか良く分からない糸目。……その糸目が、開眼する事は無い。
「周衛」
武力 92
知力 78
忠誠 100
今は亡き優国、最強の将。九年の時を経て再び優駿と再会を果たす。猫より犬派。
「徐栄」
武力 パナイ
知力 ヤバい
連合 軍総大将
"天覇十傑"に名を連ね、"三英傑"に匹敵する実力を持つと言われている。宗、龍、恭、三国連合軍では、龍大聖を押し退けて総大将を務める程の大将軍である。
割りと若く、まだ二十代。……かなりの甘党。
「朱真」
武力 かなりヤバイ
知力 軽くヤバイ
騎馬 隊が強くて有名
恭国筆頭将軍。朱真将軍率いる騎兵団は大陸最強と名高く、よく帝国王禅将軍の騎馬隊とどちらが強いのかと噂される程である。
"天覇十傑"の一人で、常に冷静な猛将である。常に近寄りがたい雰囲気を醸し出しているが、部下の面倒見は良い。年齢は、割りと若い。
「諸葛麟」
武力 非力
知力 割りと高い
祖父 が最強
龍国丞相を務めている。
"三英傑"の一人、龍大聖の孫娘。ちなみに祖父は相国。
祖父である龍大聖程では無いが、かなり知略に長けている。どちらかと言うとほのぼの思考で、戦争はあまり好きなタイプでは無い。
餡蜜大好き。甘露大好き。食べるの大好き。でも太るのがちょっぴり怖い、お年頃……。




