第八十四話 「危機」
「この様な下らぬ罠に嵌まるとはな。"剣竜"を倒した翔国が、一体何れ程の物かと心配していたが……。どうやら杞憂だった様だな。」
馬上に居る"九燕"の一人が、顔に笑みを浮かべながら二人に話し掛ける。
「……君は?」
逆に顔から笑みが消え、険しい表情で"九燕"に問い掛ける司馬晋。
「まあ良い、冥土の土産に教えてやろう。俺は燕国四将軍の一人であり"九燕"総帥、淵麻凰だ。」
──!?
四将……。やはり情報が間違っていた様である。
「将軍の数は確か三人だって、聞いてたんだけどね……。」
「我等"九燕"は燕国の切り札だからな。本来は"九燕"の存在自体、知らぬ筈なのだが……。」
当然だろう、蛇国も"剣竜"の存在を隠していたのだ。わざわざ外部に漏らす様な不手際をするのは、余程の事が無い限り有り得ない事だろう。
優駿達が"九燕"の存在に気付けたのは、"剣竜"劉士元が"九燕"の存在を知っていた為である。
「"九燕"は九人だと聞いてたんだけど、これはどういう事かな?」
──!?
「そうだよ、"九燕"は前衛が抑えている筈なんだ!"九燕"は九人だけじゃなかったの!?」
そう優駿達は劉士元から、"九燕"の人数は九人だけと聞かされていた。
……それなのに、優駿達の目の前に居る"九燕"は二十人も居るのである。
「フッ……。」
優駿の怯える表情に、ニヤリと笑う淵麻凰。
「それは、百年以上も前の話よ……。貴様らは百年以上も前の亡霊に、我等の事を聞きでもしたのか?今や我等は二十以上の家に分かれ、"九燕"の数は二十九人よ!」
「そんな、"九燕"が二十九人も居るなんて……。」
蛇国との戦いで、優駿達は十人の"剣竜"に苦戦を強いられていた。……だが今回は、その倍である二十人の暗殺者と言う恐怖に、絶望に打ち拉がれる優駿達。
それに前回は勝ったとは言え、その十人の"剣竜"を打ち破れたのは黄牙と張翼の二人の将軍が居たお陰なのである。
刹那や士龍ですら勝てない"剣竜"と同等以上の力を持つ"九燕"に、優駿と司馬晋の二人だけで抗える筈がない。
「はぁ、はぁ……。」
……そう考え、絶望的な状況に呼吸を荒げる優駿。しかし優駿達の絶望は、それだけでは終わらなかった。
たとえこの場を乗り切れたとしても、二十九人も居る暗殺者"九燕"の存在は、既に"天覇十傑"級……。いや、それ以上の軍事力を持った脅威と言わざるを得ないのだ。
この事を一刻も早く、公孫翔達に知らせなければ後手に回り、翔国軍全体が危機に晒される事となるだろう。
「終わりだ。翔国将よ……。"九燕"の刃で散るが良い!!」
──総帥の言葉に、"九燕"達が動き出す。
「…………。」
状況は非常に不味い物があった。一刻も早く、この場を離れなければ───。
しかし逃げ切れるかどうかさえ困難な状況に、優駿の頭に"死"と言う文字が過り始める。
動く事が出来ない程怯え、恐怖に震える優駿。……頼みの綱である司馬晋も、先程から口を閉ざしたままであった。
「ハーハッハッハッハ……。馬鹿か貴様ら、まんまと俺様の罠に嵌まりおって!さあ"九燕"共、奴等を血祭りにしてやるがいい!!」
「…………。」
つい先程まで司馬晋に追いかけられ、あれだけ怯えていたのにも関わらず……。もう一人の燕国将は有利になった途端、虚勢を張り笑い始めた。
「どうしよう、晋。このままじゃ不味いよ……。」
「優駿、殿は僕が務める。僕が時間を稼ぐから、君はすぐに張翼将軍と合流して軍を纏めるんだ。……いいね?」
「そ、そんな……。それじゃ、晋が!?」
「時間が無いよ?優駿。……さあ、早く行くんだ。」
震える手で剣を握り、優駿に笑い掛ける司馬晋。
──!?
優駿は目を瞑り、急ぎ張翼将軍の元へと馬を走らせた。
武将紹介
「優駿」
武力 47
知力 87
主人公 オーラがあまり無い。
一応これでも主人公。
亡き国、優国の王子。
生き別れの妹を探している。
祖国の復讐の為、蛇国と戦う決意をすが。諦めて物乞いや盗みを働いている。
頭は悪く無いのだが、使い方を知らない。
こんな治安の悪い、しかも圧政に苦しむ翔国に来た事を少し後悔している。
「刹那」
武力 89
知力 54
髪型 95 かなり気合い入れてる。
村の自警団の一員。
剣の腕は相当な物で、盗賊百人を平気で蹴散らす実力を持つ。この大陸でも屈指の実力を誇ると言えるだろう……。
でも頭の方は、お察し。
綺麗な長髪の黒髪が特徴。毎朝一体何時間掛けているんだ?って位に気合いが入っている。
「公孫翔」
武力 92
知力 99
髪型 98 美容院通ってるの!?
朧の団の若きリーダー。義賊。これでもかって程、髪型に気合いを入れている。え?毎日、美容院通ってる?ってレベルに気合いが入っている。後、仲の良い妹が一人居る。
「黄牙」
武力 96
知力 77
自称 最強剣士。
公孫翔の相棒。非常に腕の立つ剣士。最強を自負しているのだが、実際は……。
「劉士元」
武力 97
知力 67
暗殺 最強の一族
大陸最強の暗殺者一族、"剣竜"。
「張翼」
武力 94
知力 87
自分 大好き
翔国、臥龍配下の部隊長。その実力から、将来を有望視される人物。野心家で、自信過剰な所がある。
「士龍」
武力 88
知力 67
努力 家
志願兵の一人。刹那にその実力が認められ、一隊を任せられる。槍の使い手で、実力はそこそこ。割と勘が冴える所もある。
「司馬晋」
武力 91
知力 93
糸目 開眼しないタイプの糸目。
掴み所の無い、何考えて居るのか良く分からない糸目。……その糸目が、開眼する事は無い。
「周衛」
武力 92
知力 78
忠誠 100
今は亡き優国、最強の将。九年の時を経て再び優駿と再会を果たす。猫より犬派。
「袁剛」
武力 93
知力 46
肥満 体型
怪力自慢で、燕国一の豪将。実家は中華料理屋で本人も料理が大好き。得意料理はエビチリ。……でも、辛いのは苦手だから食べられない。
「淵麻凰」
武力 94
知力 89
九燕 筆頭
暗殺者一族"九燕"筆頭剣士であり、"九燕"総帥兼燕国四将軍の一人である。"剣竜"に匹敵。いや"剣竜"よりも実力が上回る暗殺者一族"九燕"を率いる長である。
二十九人とその数は少ないのだが、既に"天覇十傑"に匹敵する程の兵力を持っている。趣味は囲碁、将棋。実力は四級くらい。




