第八十三話 「罠である可能性」
五十人程の騎兵を率い、燕国将の元へ勢い良く斬り込んでいく司馬晋。恐ろしい武を見せる燕国将にも臆する事無く、ニヤリと笑いながら余裕の表情を見せ、司馬晋は一本しか剣を抜刀しなかった。
──そして、相対する両者。
「ガハアッ!」
燕国将は先手を取り、その巨大な矛で司馬晋目掛けて全力で斬りかかる。
「丁度、退屈していた所なんだ……。精々、この僕を楽しませてくれよ。」
「晋ー!!」
司馬晋を心配し、馬を走らせながら必死に叫ぶ優駿。
──ガキィン!!
辺り一面に、激しく鉄が撃ち合う音が鳴り響く。一度、二度、三度……。
その怪力から振り下ろされる渾身の一撃を、司馬晋は巧みな剣術でいとも容易く弾き返していた。
「……え?」
予想外の強さを見せる司馬晋に、驚く優駿。
「ばっ、馬鹿な……。この俺の渾身の一撃を軽々と往なすとは、貴様……。」
そしてそれ以上に燕国将は驚き、司馬晋の底知れぬ強さに恐怖を感じていた。
──ザシュ!
「が、がはっ!?」
更に剣を走らせ、まるで相手を甚振るかの様に燕国将の体を斬り裂いていく。
そして力尽き、ドサリと崩れ落ちる燕国将。
「まあ、こんな物だろうね。……さて。」
「ひいぃぃぃぃ……。」
燕国一の豪将である筈の袁剛将軍が討たれ、もう一人の燕国将は恐怖に震えながら逃げ始めた。
「そ、そんな馬鹿な……。袁剛を倒す奴が居るなんて……。」
「ははは……。逃がさないよ。」
「あっ、待ってよ晋!!」
敵将を追いかけ、更に本陣から離れていく司馬晋を心配し、優駿は急いで本陣の兵を纏め始める。
一先ず危機は去ったものの、本陣に居る兵士を全て連れて行く訳にはいかない。優駿は最低限の守備兵だけを残し、千の部下を引き連れて司馬晋の後を追いかけて行った。
「…………。」
しかし司馬晋の後を追いかける途中、優駿の頭の中に酷く嫌な予感が浮かんでくる。……やはり何か様子がおかしい。これが罠であり、もし自分達が罠に嵌められているとしたら───。
そう頭に嫌な予感が過り、只の思い過ごしであればと願いながらも優駿は馬を走らせ続けた。
暗殺者一族、"九燕"は前衛が抑えている筈である。そして二人の燕国将の内、既に一人は司馬晋が討ち取り、軍も翔国軍が優勢である。……懸念すべき材料は特に見当たらない。
燕国軍に"天覇十傑"が居る訳でも無く、優れた軍師が居る訳でも無い。……ぶつぶつと呟きながら有りと有らゆる可能性を模索し、一つずつ可能性を潰していく優駿。
こちらの懸念すべき事は、何一つ無い筈なのでる。……しかし優駿は、拭え切れない程の何かを感じていた。
──!?
そして優駿は、ある事に気が付く。それは"情報"その物が間違っていた可能性である。
そもそも暗殺者一族、"九燕"の情報は正しいのか?もし燕国に、三人の将軍以外にも"天覇十傑"級の人物が居たとしたら?……そして、その人物が知略に長けていたならば───。
「はぁ、はぁ……。」
不安に駆られ息を荒げる優駿。
しかし残念ながら、その"答え"は的中し……。優駿は千の兵しか率いて来なかった事を、悔やみ後悔する事となる。
「……晋?」
そこには燕国兵に囲まれながら、茫然と立ち尽くす司馬晋の姿があった。
「え……?どうしたの、晋?」
武の覚えが無い優駿には、それがすぐには理解出来なかった。……そしてそれを理解した途端、優駿の背筋に凍り付く程の恐怖が走る。
それは武の経験の無い優駿にも、すぐに理解出来た。数は、そう多くは無い……。燕国兵の数は精々、数百程度だろう。
しかしそれが目に入った途端、絶望する程の恐怖が優駿に襲いかかる。
「そ、そんな……。」
優駿の脳裏に、あの恐ろしい"剣竜"の記憶が甦ってくる。
──"九燕"。
その人の域を超えた化け物の存在は、優駿達を絶望させるに十分の理由だった。罠に嵌められた事に気が付き、身動きが取れない程の恐怖と絶望に震える優駿。
チラリと司馬晋の顔を覗き見る優駿だが、その表情は険しい表情へと変わり……。司馬晋の顔からは、先程まであった筈の余裕の笑みは完全に消え失せていた。
武将紹介
「優駿」
武力 47
知力 87
主人公 オーラがあまり無い。
一応これでも主人公。
亡き国、優国の王子。
生き別れの妹を探している。
祖国の復讐の為、蛇国と戦う決意をすが。諦めて物乞いや盗みを働いている。
頭は悪く無いのだが、使い方を知らない。
こんな治安の悪い、しかも圧政に苦しむ翔国に来た事を少し後悔している。
「刹那」
武力 89
知力 54
髪型 95 かなり気合い入れてる。
村の自警団の一員。
剣の腕は相当な物で、盗賊百人を平気で蹴散らす実力を持つ。この大陸でも屈指の実力を誇ると言えるだろう……。
でも頭の方は、お察し。
綺麗な長髪の黒髪が特徴。毎朝一体何時間掛けているんだ?って位に気合いが入っている。
「公孫翔」
武力 92
知力 99
髪型 98 美容院通ってるの!?
朧の団の若きリーダー。義賊。これでもかって程、髪型に気合いを入れている。え?毎日、美容院通ってる?ってレベルに気合いが入っている。後、仲の良い妹が一人居る。
「黄牙」
武力 96
知力 77
自称 最強剣士。
公孫翔の相棒。非常に腕の立つ剣士。最強を自負しているのだが、実際は……。
「劉士元」
武力 97
知力 67
暗殺 最強の一族
大陸最強の暗殺者一族、"剣竜"。
「張翼」
武力 94
知力 87
自分 大好き
翔国、臥龍配下の部隊長。その実力から、将来を有望視される人物。野心家で、自信過剰な所がある。
「士龍」
武力 88
知力 67
努力 家
志願兵の一人。刹那にその実力が認められ、一隊を任せられる。槍の使い手で、実力はそこそこ。割と勘が冴える所もある。
「司馬晋」
武力 91
知力 93
糸目 開眼しないタイプの糸目。
掴み所の無い、何考えて居るのか良く分からない糸目。……その糸目が、開眼する事は無い。
「周衛」
武力 92
知力 78
忠誠 100
今は亡き優国、最強の将。九年の時を経て再び優駿と再会を果たす。猫より犬派。
「袁剛」
武力 93
知力 46
肥満 体型
怪力自慢で、燕国一の豪将。実家は中華料理屋で本人も料理が大好き。得意料理はエビチリ。……でも、辛いのは苦手だから食べられない。




