第七十四話 「蛇国城の異変」
その日は優国でゆっくりと体を休め、翌日の朝早くに蛇国領に向かう事になった。優国の民に見守られながら、蛇国領を目指し北上する優駿達。
公孫翔達と合流すべく、蛇国領内へと軍の足を進めて行く優駿だが……。念の為に周衛将軍に五千の兵を預け、優国城の守りに就いて貰っていた。
蛇国領に入る優駿は、公孫翔率いる軍の速さに驚かされる事になる。
優駿達が優国を取り戻す、その三日の間に……。公孫翔は麗国だけではなく、蛇国領の大半を制圧下に治めていたのである。
「やっぱり、公孫翔さんは凄いなぁ……。」
「…………。」
軍の速さに感心する優駿。しかし司馬晋は辺りを見渡しながら、少しの違和感を覚えていた。
「……どうしたの?晋。」
制圧した街や城に、戦闘をした形跡が一切無い事を不思議に思う司馬晋。
「戦闘した形跡が無いのを、少し妙だと思ってね……。公孫翔さんが、そう仕向けたのかも知れないけど。何か予期せぬ出来事でもあったのかも知れないね。」
「あっ、確かに……。」
優駿は言われて初めて、その事に気が付いた。……恐らく公孫翔軍が速かった要因は、蛇国城や街が戦闘せずに投降したのが原因なのだろう。
公孫翔率いる軍が蛇国城近辺に居ると予想し、優駿は蛇国城の方角へと軍を進めて行った。
暫く進むと優駿達の目に、蛇国城の前に待機している軍の姿が目に入る。
「遅かったな、お前等。その様子だと優国は無事、取り戻せた様だな。」
公孫翔率いる、一万五千と合流する優駿達。
「公孫翔さん……。」
久しぶりに公孫翔と合流し、優駿は肩の荷が降りたと安心した。
「あの……状況は?」
「後は蛇国城を残すのみなんだが、奴等不利と見て籠城してるんだ。他の街や城を捨てて迄な……。他から集めている分、かなりの兵が残っていると考えられるだろう。……凡そ七、八万は居るだろうな。全く自分の事しか考えない、蛇国王らしい考えだ。」
「七、八万……。」
こちらの兵の数は約二万。八万の大軍に籠城されるとなると、事態は非常に厄介な事となる。
城攻めは困難を極め、苦戦は免れないだろう。
不安が残る優駿だが、公孫翔の合図と共に一斉に突撃を開始する二万の翔国軍。……しかし蛇国城に近付くに連れ、先頭を走る黄牙が蛇国城の奇妙な違和感に気が付く。
「翔、様子がおかしい!」
──!?
「全軍止まれ!!」
黄牙の声で気が付き、慌てて軍の足を止める公孫翔。……それは黄牙だけでは無かった。
刹那や張翼等、腕に覚えがある者は皆、蛇国城の不穏な何かに気が付いていた。
「…………。」
その異変に気が付き、刹那達は険しい表情で蛇国城を睨み付ける。何かを警戒している様なのだが優駿には、それが何なのか理解出来ないでいた。
「えっ?一体、どうしたの?皆……。」
武の経験の無い人間には理解出来ず、一人困惑し戸惑う姿の優駿。
「……敵の気配がしねぇんだ。」
……敵の気配がしない?刹那の言葉に疑問を覚える優駿だが、城壁の上に一人の兵も見当たらないのは流石に妙だと理解した。
「八万も居るのに、本城を捨てて逃げたって言うの?」
……いや、それは少し不自然な考えだろう。八万もの兵力が居るのにも関わらず、本城を捨てるとは考えにくい。
何かの罠か策略なのかと考えも頭を過るのだが、そもそも蛇国には優れた軍師が存在しない事を優駿は思い出した。
……だが、それでは八万の兵は一体何処へ消えたと言うのだろうか?
公孫翔の顔をチラリと伺う優駿だが、公孫翔も同様に困惑の表情を見せていた。
「士元、頼めるか?」
「……了解した。」
軽々と城壁を駆け上がり、城の中へと消えて行く"剣竜"劉士元。
──ギィィィィィ。
暫く経つと内側から城門が開かれ、中から劉士元が姿を現した。
「蛇国の民は、そのまま残っている様だ。だが肝心の蛇国兵の姿が一人も見当たらない。……生きている蛇国兵はな。後は俺の客が二十人程度と、数人だけだ。……恐らく、生き残った蛇国将だろう。」
「……ふむ、なるほどな。」
……客?一体何の事だろうと首を傾げる優駿だが、公孫翔は"客"と言う言葉で全てを察している様だ。
「優駿、司馬晋。お前達二人に、この二万の軍を預ける。他の幹部達は全員、俺に着いてこい。」
「りょーかーい。」
「はい!……ええっ!?全軍を!?」
驚く優駿とは対極に、冷静な返事を返す司馬晋。
公孫翔は優駿を残し、蛇国城の中へと消えていった。
武将紹介
「優駿」
武力 47
知力 87
主人公 オーラがあまり無い。
一応これでも主人公。
亡き国、優国の王子。
生き別れの妹を探している。
祖国の復讐の為、蛇国と戦う決意をすが。諦めて物乞いや盗みを働いている。
頭は悪く無いのだが、使い方を知らない。
こんな治安の悪い、しかも圧政に苦しむ翔国に来た事を少し後悔している。
「刹那」
武力 89
知力 54
髪型 95 かなり気合い入れてる。
村の自警団の一員。
剣の腕は相当な物で、盗賊百人を平気で蹴散らす実力を持つ。この大陸でも屈指の実力を誇ると言えるだろう……。
でも頭の方は、お察し。
綺麗な長髪の黒髪が特徴。毎朝一体何時間掛けているんだ?って位に気合いが入っている。
「公孫翔」
武力 92
知力 99
髪型 98 美容院通ってるの!?
朧の団の若きリーダー。義賊。これでもかって程、髪型に気合いを入れている。え?毎日、美容院通ってる?ってレベルに気合いが入っている。後、仲の良い妹が一人居る。
「黄牙」
武力 96
知力 77
自称 最強剣士。
公孫翔の相棒。非常に腕の立つ剣士。最強を自負しているのだが、実際は……。
「劉士元」
武力 97
知力 67
暗殺 最強の一族
大陸最強の暗殺者一族、"剣竜"。
「張翼」
武力 94
知力 87
自分 大好き
翔国、臥龍配下の部隊長。その実力から、将来を有望視される人物。野心家で、自信過剰な所がある。
「士龍」
武力 88
知力 67
努力 家
志願兵の一人。刹那にその実力が認められ、一隊を任せられる。槍の使い手で、実力はそこそこ。割と勘が冴える所もある。
「司馬晋」
武力 91
知力 93
糸目 開眼しないタイプの糸目。
掴み所の無い、何考えて居るのか良く分からない糸目。……その糸目が、開眼する事は無い。
「蓋亞」
武力 92
知力 64
蛇国 三連星
蛇国三連星の一人。三人揃えば必殺技、乱気流攻撃が可能。蛇国で一、二を争う猛将である。
「雄流手我」
武力 90
知力 46
蛇国 三連星
蛇国三連星の一人。三人揃えば必殺技、乱気流攻撃が可能。趣味は犬のエサやり。
「松朱」
武力 88
知力 72
蛇国 三連星
蛇国三連星の一人。三人揃えば必殺技、乱気流攻撃が可能。焼き芋大好き。
「周衛」
武力 92
知力 78
忠誠 100
今は亡き優国、最強の将。九年の時を経て再び優駿と再会を果たす。猫より犬派。
「阿鈍」
武力 91
知力 32
漢気 90
蛇国が誇る猛将の一人。沙武遜とは相棒である。曲がった事が大嫌い、いつも正々堂々戦う武将である。だが頭が悪い為、良く分かってはいない。
「沙武遜」
武力 93
知力 27
漢気 95
蛇国軍、最強の将。阿鈍とは相棒の仲である。卑怯な事が大嫌いな愚直な男だが。かなり頭が悪く、良く分かってはいないらしい。




