第百六話 「青天霹靂」
「はははっ……。」
為す術が無い事を知り、公孫翔には只笑う事しか出来なかった。
「完全に、この俺の落ち度だ。参ったな、流石龍大聖だ。まさか、これ程とは……。」
額に手を当てながら、落ち込んでいる様子の公孫翔。
「…………。」
そして勘が鋭く知略に長けた張翼も又、迫る龍国軍の姿に、その全て理解していた。
「公孫翔さん……。」
落ち込む姿の公孫翔が、優駿には信じられなかった。
「すまない、優駿。俺は龍大聖と言う人間を、全く理解していなかった様だ。俺達に唯一出来る事があるとすれば、すぐに撤退し、宗国と合流する事だけだろう……。」
「そんな、公孫翔さん……。」
優駿は見たくなかった。落ち込み、酷く憔悴する公孫翔の姿など、優駿は見たくなかった。
どんな強敵にも抗い、そして大胆不敵に立ち向かって行く公孫翔。たとえどんな窮地であろうとも、それを涼しい顔で覆す……。そんな常勝無敗な人間だった筈なのである。
「公孫翔さん……。」
そんな憧れ尊敬する公孫翔の落ち込んだ姿など、優駿には耐えられなかった。
「撤退だ、優駿。全軍に撤退命令を出してくれ。」
もう、声を出す気力も残されてはいないのか……。公孫翔は、優駿に撤退の指示を頼んだ。
──!?
しかしその時、優駿はある異変に気が付く。
……いや、それに最初に気が付いたのは、一番近くに居た龍大聖であった。
「あれは、何処の軍だ?」
──ドドドドドドドドド!!
突如現れる正体不明の一軍に、驚きの様子を見せる龍大聖。
「あれはっ!?」
そして優駿達も、それを理解する。
……いや、その数は決して多くはない。しかし龍大聖率いる四万の龍国軍の腹を、横から食い破る様に奇襲をかける五千の部隊があった。
「あっ!?あれは確か……。」
優駿は、その部隊の先頭を走る人物に見覚えがあった。
その五千の部隊の先頭を走る人物の名は、楽勝。……楽勝は司馬晋隊の副隊長である。
つまりそれは司馬晋の居る、狼国の部隊であった。
「クヒ、クヒヒヒヒヒヒヒ……。"三英傑"の一人、龍大聖。そんな英雄の首を掻き斬ると、一体どれだけ興奮するのか……。ああ、想像するだけで、逝きそうだ……。アヒャヒャヒャヒャ!!?」
「……軍の半分の、二万で迎え討て。」
奇声を発し激昂する楽勝に対し、迅速に冷静な判断を下す龍大聖。
龍大聖は先頭を走る楽勝の技量を瞬時に見極め、そしてそれを充分に撃破する事の出来る二万の軍を当てる。
残り二万の兵があれば、充分翔国軍に勝利出来ると龍大聖は踏んでいた。
だが、しかし───。
──ザシュ、ザシュウ!!
当然ながら狼国軍には、あの人物が居る。いや副隊長が居るのであれば、その隊に隊長が居るのは当然の事なのだ。
そしてその人物は五千の部隊の先頭に立ち、一瞬にして千の龍国兵を蹴散らした。
「何だっ、あの先頭の男は!?」
「"天覇十傑"以外に、あれ程の猛将が居るのか!?」
その者が持つ圧倒的武に、驚愕する龍国兵達。
──ザシュウ!ザシュ、ザシュウ!!
その者は双剣を手に、凄まじい勢いで龍国兵達を殲滅して行く。伝説の暗殺者一族"剣竜"の奥義を使い、"天覇十傑"級の武力を持つ男。
「あの者は確か、王禅を討ち取った……。」
それは王禅を討ち取った功により、狼国筆頭将軍にまで昇り詰めた司馬晋の姿であった。
「龍大聖、悪いけど……。その首、貰うよ?」
──狼国筆頭将軍、司馬晋。
「クヒャヒャヒャヒャ!殺せ、撤退的に殺しまくれ!!アヒャヒャヒャヒャ!!?」
──狼国将軍、楽勝。
「…………。」
生半可な戦力で止める事の出来る司馬晋ではない。その者の持つ圧倒的武に、流石の龍大聖も驚かずにはいられなかった。
既に二千の精鋭を失った龍国軍。尚も司馬晋隊五千は止まること事なく、龍大聖の首目掛けて突き進んで行く。
「……やむを得ん、ここは一旦退くぞ。全軍に撤退命令を出せ。」
龍大聖の判断は早かった。不利と見るや否や、龍国軍はすぐに踵を返し撤退を始めた。
「……あら?」
思ってた以上に龍国軍の撤退が早かった為、拍子抜けする司馬晋。
「流石、龍大聖だね。残念だけど、その首は次回まで御預けかな?」
そう言いながら二本の剣をしまい、ニヤリと笑みを浮かべる司馬晋であった。
「まさか撤退なさるとは……。龍大聖様、あの者はそれ程までに危険だったのでありましょうか?」
兵士達が疑問に思うのは当然である。……いや大陸一の知略を誇る龍大聖なのだ、勿論兵士達は龍大聖の判断が正しい事を知っていた。
しかし大陸一の天才的知略を誇り、常勝無敗の龍大聖が撤退する姿など一度も見た事がなかったのである。
「あの者を討つ事は可能だ。しかしそれと同時に、こちらも大半の兵を失う事になるだろう。……そうなれば、翔国軍を討つ事が困難となる。」
龍大聖は、その事を良く理解していた。優秀な将が居ない龍国軍には、司馬晋と楽勝の二人を同時に相手取る事が出来ないのだ。
「……退くぞ。」
龍大聖から撤退の指示が出た為、同じく撤退を始める恭国軍。
龍大聖の策略に嵌められ、窮地に陥れられる翔国軍だったが……。司馬晋の活躍により、何とかその窮地を脱する事が出来た優駿達であった。
武将紹介
「優駿」
武力 47
知力 87
主人公 オーラがあまり無い。
一応これでも主人公。
亡き国、優国の王子。
生き別れの妹を探している。
祖国の復讐の為、蛇国と戦う決意をすが。諦めて物乞いや盗みを働いている。
頭は悪く無いのだが、使い方を知らない。
こんな治安の悪い、しかも圧政に苦しむ翔国に来た事を少し後悔している。
「刹那」
武力 89
知力 54
髪型 95 かなり気合い入れてる。
村の自警団の一員。
剣の腕は相当な物で、盗賊百人を平気で蹴散らす実力を持つ。この大陸でも屈指の実力を誇ると言えるだろう……。
でも頭の方は、お察し。
綺麗な長髪の黒髪が特徴。毎朝一体何時間掛けているんだ?って位に気合いが入っている。
「公孫翔」
武力 92
知力 99
髪型 98 美容院通ってるの!?
朧の団の若きリーダー。義賊。これでもかって程、髪型に気合いを入れている。え?毎日、美容院通ってる?ってレベルに気合いが入っている。後、仲の良い妹が一人居る。
「黄牙」
武力 96
知力 77
自称 最強剣士。
公孫翔の相棒。非常に腕の立つ剣士。最強を自負しているのだが、実際は……。
「劉士元」
武力 97
知力 67
暗殺 最強の一族
大陸最強の暗殺者一族、"剣竜"。
「張翼」
武力 94
知力 87
自分 大好き
翔国、臥龍配下の部隊長。その実力から、将来を有望視される人物。野心家で、自信過剰な所がある。
「士龍」
武力 88
知力 67
努力 家
志願兵の一人。刹那にその実力が認められ、一隊を任せられる。槍の使い手で、実力はそこそこ。割と勘が冴える所もある。
「司馬晋」
武力 95
知力 97
糸目 開眼しないタイプの糸目。
掴み所の無い、何考えて居るのか良く分からない糸目。……その糸目が、開眼する事は無い。
「周衛」
武力 92
知力 78
忠誠 100
今は亡き優国、最強の将。九年の時を経て再び優駿と再会を果たす。猫より犬派。
「徐栄」
武力 パナイ
知力 ヤバい
連合 軍総大将
"天覇十傑"に名を連ね、"三英傑"に匹敵する実力を持つと言われている。宗、龍、恭、三国連合軍では、龍大聖を押し退けて総大将を務める程の大将軍である。
割りと若く、まだ二十代。……かなりの甘党。
「陸閃」
武力 化け物らしい
知力 普通
連合 軍の切り札
宗国の将軍。"天覇十傑"ではないものの最強の将、王禅を討つ切り札と呼ばれる少年。年は十六才。まだ若いが武の才は本物で、天賦の才を持つ。
「朱真」
武力 97
知力 90
騎馬 隊が強くて有名
恭国筆頭将軍。朱真将軍率いる騎兵団は大陸最強と名高く、よく帝国王禅将軍の騎馬隊とどちらが強いのかと噂される程である。
"天覇十傑"の一人で、常に冷静な猛将である。常に近寄りがたい雰囲気を醸し出しているが、部下の面倒見は良い。年齢は、割りと若い。
「鄭羽」
武力 99
知力 74
性格 寡黙
"天覇十傑"の一人。恭国一の猛将で、王禅と互角に渡り合う程の実力を持つ将軍である。性格は物静かで寡黙。
「夏侯炎」
武力 98
知力 67
極力 戦いたくない
"天覇十傑"の一人。戦より、女と金と酒と博打が好き。人間味臭い性格である。しかし性格は良い為、友人も多く、部下からはかなり慕われている。
「諸葛麟」
武力 非力
知力 割りと高い
祖父 が最強
龍国丞相を務めている。
"三英傑"の一人、龍大聖の孫娘。ちなみに祖父は相国。
祖父である龍大聖程では無いが、かなり知略に長けている。どちらかと言うとほのぼの思考で、戦争はあまり好きなタイプでは無い。
餡蜜大好き。甘露大好き。食べるの大好き。でも太るのがちょっぴり怖い、お年頃……。
「諸葛龍」
武力 秘密
知力 100
超絶 カッコいいお爺ちゃん
龍大聖と呼ばれる龍国の英雄。祖国を救った英雄であり、大陸一の天才軍師と言われている。三国連合軍の副将を務め、二十万を超える大軍勢の指揮を一手に担っている。
「楽勝」
武力 93
知力 89
相当 ヤバい奴
狼国の副隊長。司馬晋の配下である。元盗賊の頭で、残忍な性格をしている。司馬晋に実力を認められ、配下になった経緯がある。
「諸葛龍」
武力 97
知力 97
年齢 19
四十年前の若かりし頃の龍大聖。この大陸の戦術を確立させた天才であり、救国の英雄である。
「王凱」
武力 98
知力 52
当時 最強
王禅将軍の祖父。間違い無く、当時最強の将軍である。ちなみに王禅将軍の母方の祖父である。王禅のお母さんも、有名な将軍だったりする。
「村雨」
武力 94
知力 94
当時 は大陸一の知将
龍大聖が戦術を確立させるまで、大陸最強の知将であった。龍大聖が編み出した兵法により、昔の軍師は今と比べると、イマイチの評価と成り下がった。当時は最強なのよ?




