第59話 350万円入ったので、包丁を買います
復興動画を公開してから、何日か経った。
再生数は時々確認している。コメントも増えていた。
ただ、収益の集計にはまだ時間がかかる。今できることは、あまりない。
「……そういえば」
俺はスマホのメモを開いた。
『空中スイマー事業』
以前作った管理用のメモだ。
YouTube、政府協力、航空会社。収入の種類が増えたので、会社の給料とは別に管理することにしていた。
そのために、銀行口座も分ける。
……はずだった。
「まだ作ってなかったな」
後回しになっていた。
最初に決めた時は、すぐ作ろうと思っていた。でも、飛行機の仕事が入った。
豪雨災害が起きた。救助して、復旧を手伝って、その後はYouTubeの取材と編集。
気づけば、銀行口座を作るというだけの用事が、ずっと残っていた。
「なんだかんだ忙しかったしなあ」
いや、言い訳か。
口座の申し込みなんて、やろうと思えば時間は作れたはずだ。
スマホで銀行のサイトを開く。
「さて、どこにしようかな」
振込手数料。アプリの使いやすさ。入出金の明細が見やすいか。
比較する項目はいろいろある。
事業用の口座が必須というわけではない。でも、俺は分けたい。
給料と副業の収入が同じところに入ると、後から見返すのが面倒だからだ。
「入ってくる金が増えたんだし、ちゃんとしないとな」
そう考えていたところで、スマホに通知が届いた。
今使っている銀行のアプリだ。
「ん?」
入金。
金額は――。
1,500,000円。
「……あっ!」
航空会社!
初めてのワープ体験便で確定していた報酬だ。150万円。
契約して、試験して、お客さんを乗せて。無事に終わったあと、報酬額が確定した。
でも、まだ入金はされていなかった。
「やっと来た!」
思わず声が大きくなる。
もちろん、150万円全部を好きに使っていいわけじゃない。税金もある。
それでも、銀行口座の数字が実際に増えると嬉しい。
「よし、記録しよう」
事業用の管理表を開く。
入金日。振込元。金額。対象案件。
入力する。
「……こういうの、最初から分けたかったんだよな」
口座開設を後回しにした自分が少し嫌になる。
まあ、入金記録が残っているなら、今から整理すればいい。
そう思っていたら。
もう一件、通知が届いた。
「……また?」
同じ銀行アプリ。
今度の金額は。
2,000,000円。
「……200万?」
振込元を確認する。
政府との協力に関する支払いだ。
「おおお!」
そうだった。
以前、政府を通じて正式な要請を受けた旅客機の緊急救助。
それから、先日の豪雨災害。
豪雨では堤防の応急復旧に必要だった資材や重機、排水設備などを何度も運び、人命救助にも協力した。
救助された人たちから、お金を取るつもりはない。
でも、政府から正式に頼まれた活動には、契約に基づく報酬がある。
救助人数に応じた出来高払いではなく、出動や危険対応、輸送実績などを基に精算する。
後日、固定の協力手当とは別に、両案件を合わせて200万円という金額と算定根拠が提示され、内容を確認していた。
そして今日、入金されたわけだ。
「150万円と、200万円……」
頭の中で足し算する。
「350万円!」
すごい。
今日だけで、350万円も入ってきた。
もちろん、どちらも以前に行った仕事の報酬だ。今日350万円稼いだわけではない。
それでも。
「350万かあ……」
しばらく画面を眺める。
ワープの副業を始める前なら、年収に近い金額だ。
それが、副業として取り組んだ仕事から入ってきた。
「ワープ、すごいな」
いや、ワープだけじゃない。
飛行機の方は、航空会社が試験をして、安全確認や運航計画を作ってくれた。
政府の仕事だって、現場の人たちが何をどこへ運ぶか判断していた。
俺は、自分にできることを担当した。その対価が350万円。
「……仕事になるんだなあ」
改めて実感する。
さて。まずは管理だ。
航空会社150万円。政府からの旅客機救助と豪雨対応の案件報酬200万円。
入金は2件。それぞれ記録する。
税金については、ほかの収入や経費も含めて必要な額を確認し、使わずに残しておかないといけない。
「全部NISAに入れたらダメなんだよな」
自分で言って、少し笑う。
入金関係の記録と書類を保存して、新しい口座の申し込みも進める。
開設できたら、今後の振込先も変更しよう。
「よし。今度こそやろう」
ちなみに、もう一つ気になっている報酬がある。
航空会社の飛行機4機分。375万円。
こちらも仕事自体は終わっているけど、最終精算と入金の確認が残っている。
「こっちも来るんだよな……」
すごいことになってきた。
とはいえ、まだ入っていない金だ。今の残高に足して考えるのはやめよう。
「入った金だけ管理する!」
そう決めて、画面を閉じた。
さて。
せっかく350万円も入った。
「……何か買おうかな」
普段なら、そのまま資産形成に回すところだ。
もちろん、今回も大部分はそうするつもりでいる。
ただ、最近は結構働いた。
本業のアルターク。航空会社。政府協力。YouTube。
収入が増えるのは嬉しい。
でも、俺は働き続けたくてFIREを目指しているわけじゃない。
「たまには、遊びに使ってもいいよな」
もっとも、急に高級車が欲しくなったわけでも、高い時計が欲しくなったわけでもない。
「10万円くらい、YouTubeの企画費に追加してもいいかな」
今後、面白い企画を思いついて、予算が足りなくなった時。
そのくらいなら追加してもいいかもしれない。
今すぐ使う必要はない。何も思いつかなければ、使わずに終わってもいい。
「……で、何しよう?」
俺は少し考えた。
最近、まともに休んでいない気がする。
休みの日も何だかんだで、撮影や編集をしていた。
動画を作るのは楽しい。でも、たまには動画のことを考えずに遊びたい。
「キャンプとか?」
そういえば、復興動画を公開したあと、キャンプ用品を調べていた。
外で飯を作って、のんびり過ごす。
ワープがあれば、重い荷物を長距離運ぶ必要もない。何か忘れても、自宅へ取りに戻れる。
「めちゃくちゃ便利じゃん」
普通のキャンプなら準備が大変そうだけど、俺ならかなり気楽に行ける。
しかも全国どこでもいい。北海道でも、青森でも。
「北海道、いいなあ」
景色もいいし、温泉もある。キャンプ場だって選べる。
それに。
「魚、食べたいな」
以前、高知で魚を捕って食べた。
あの時は焼き魚だった。塩を振って、火を通して。
あれはあれでうまかった。
でも。
「……そろそろ刺身に挑戦したいな」
自分で捕った魚を、自分で刺身にする。
スーパーで売っている丸魚なら、何度も捌いたことがある。
三枚おろしもできるし、刺身にも切れる。
ただ、釣った直後の魚の締め方や血抜き、冷却の仕方には慣れていない。
「せっかくなら、ちゃんとやってみたいな」
それに、今後も魚を捕ることはあるだろう。
ワープで全国の海へ行けるんだ。趣味としても、YouTubeの企画としても使える。
そう考えると。
「……包丁欲しいな」
スマホを開く。
出刃包丁。刺身包丁。
「あと、砥石も!」
どうせ買うなら、研いで長く使いたい。
安い包丁を何本も買い替えるより、ちゃんとしたものを長く使った方がいいかもしれない。
「よし。調べよう」
まずはAIへ相談する。
『魚を捌くための出刃包丁と刺身包丁を買いたいです。右利きです。最安値ではなく、長く使えてコスパの良いものを探してください』
回答が返ってきた。
刃渡り。刃の材質。重さ。持ち手。研ぎやすさ。
「……結構あるな」
出刃包丁だけでも種類が多い。
鋼の包丁。ステンレスの包丁。
値段も、数千円から何万円まである。
「高っ!」
高級な包丁なら、1本で数万円するらしい。
もちろん、職人が使うなら意味があるのかもしれない。
でも、俺は家庭で魚を捌く程度だ。
そこまで高いものが必要なのか?
AIに聞いてみる。
『家庭で月に数回使う程度でも、高級な包丁を買う意味はありますか?』
説明を読む。
材質や仕上げによる違いはある。ただ、高いものを買えば誰でも使いやすくなるとは限らない。
手入れのしやすさや用途も重要らしい。
「そうだよな」
安すぎるのも困る。でも、高すぎるのも違う。
俺が欲しいのは、飾っておく包丁じゃない。実際に魚を捌くための道具だ。
『予算は包丁2本と砥石で15,000円くらい。長期使用の口コミも重視してください』
条件を追加する。
いくつか候補が出てきた。
その中で気になったのが、貝印の関孫六というシリーズだった。
「関孫六……聞いたことあるな」
さらに調べる。
銀寿ST。金寿ST。
「名前が似てるな」
価格も違う。銀寿STの方が安い。
金寿STの方は、メーカーの商品説明を見ると、刃付けや持ち手の仕様に違いがある。
「……で、実際どれくらい違うんだ?」
メーカーの説明だけでは、俺に必要な差かどうかまでは分からない。
口コミも見ることにした。
星5つ。星4つ。星3つ。
「評価は悪くないな」
ただ、星の数だけでは判断しにくい。
購入直後の感想もあれば、長く使っている人の感想もある。
研ぎ方や使った魚も、人によって違うはずだ。
「使い始めの切れ味だけじゃ、分からないよな……」
AIへ、もう一度聞く。
『口コミに書かれている使い心地と、メーカーが確認できる仕様を分けて比較してください。悪い評価も含めて、長く使う場合の注意点が知りたいです』
返事を参考にしながら、自分でもレビューを開いていく。
握りやすさを評価する人もいれば、別の包丁の方が好みという人もいる。
安いモデルで十分、という意見もある。
「そりゃそうだよな。人によるよな」
同じ道具でも、手の大きさも用途も違う。
こればかりは現物を見た方が早いかもしれない。
俺は近くの店へ行き、包丁売り場を確認することにした。
店頭にはいろいろな包丁が並んでいた。
「おお、あるある」
関孫六。
銀寿。金寿。
同じメーカーでも、これだけ種類がある。
展示品の中から、気になったものを手に取る。
重さ。柄の太さ。握りやすさ。
「……悪くないな」
右利きの俺には、右利き用の片刃で問題ない。
出刃包丁は150ミリ。刺身包丁は210ミリ。
今まで扱ってきた魚の大きさを考えても、このあたりが使いやすそうだ。
「よし、候補はこれだな」
型番と店頭の価格を控える。
ただ、その場では買わない。
ネットと比較してから決めたい。
帰宅してパソコンを開き、同じ型番を検索する。
「……あれ?」
値段が違う。
メーカーの希望小売価格は、1本8,000円台。
店頭ではそれより安かったけど、ネット通販には4,000円台の店もある。
「結構違うじゃん!」
もっとも、数字だけ見て決めるわけにはいかない。
同じ型番なのか。送料はいくらか。販売店は信頼できそうか。
ポイントだけ高くても、支払う額が高かったら意味がない。
「……これ、比較するのも仕事だな」
さらに調べる。
最安値の店が必ずしも一番得とは限らない。
今回は、条件に納得できる店を選ぶことにした。
最終候補は、関孫六の金寿ST。
出刃包丁は150ミリのAK1101。
刺身包丁は210ミリのAK1105。
「2本で9,000円ちょっとか」
銀寿STなら、もっと安くできる。
だけど、今回は店頭で確認した感触と、仕様、口コミを合わせて考えて、金寿STにしてみよう。
何年も使うつもりだ。数千円の差なら、納得できる方を選びたい。
次は砥石だ。
これがまた、種類が多い。
荒砥石。中砥石。仕上げ砥石。
「包丁より難しいんじゃないか?」
AIへ相談する。
『家庭用の出刃包丁と刺身包丁を研ぐなら、最初に買う砥石は何がいいですか?』
いろいろ比較して、キングの両面砥石が候補に残った。
1000番と6000番の組み合わせ。KDSという製品だ。
普段の研ぎと仕上げを、一つでできるらしい。
「これでいいんじゃないか?」
価格は、見つけた店では3,000円台。
最初から砥石を何種類もそろえる必要はないだろう。
使ってみて必要になったら、追加すればいい。
「よし。これにしよう」
買い物かごを確認する。
出刃包丁。刺身包丁。両面砥石。
送料も確認して、合計はおよそ13,000円。
「……いいじゃん!」
予算の15,000円以内に収まった。
しかも、安さだけで選んだわけではない。
メーカーの仕様も見た。口コミも読んだ。
店頭で握り心地も確認した。ネットとの価格差も調べた。
「うん、納得」
注文を確定する。
ふう。
時計を見る。
「……1時間?」
店で確認したあと、ネットでの比較を始めてから、もう1時間以上経っていた。
350万円が振り込まれた日。
俺が一番真剣に悩んだのは、1万円ちょっとの包丁選びだった。
「……まあ、いいか」
むしろ、こういう買い物は楽しい。
長く使えるものを探して、値段を比較して、納得して買う。
最安値を買うことが目的じゃない。
無駄なものを買わないことが大事なんだ。
そう考えると、良い買い物ができた気がする。
「さて」
包丁は注文した。次は、キャンプだ。
せっかくなら、誰かと行きたい。
……そういえば。
「白石さん、休みの日って何してるんだろ」
以前、一緒に昼飯を食べたことがある。
また行きましょう、とも話した。
『予定が合えば』。そう返事をもらっていた。
その後も一緒に魚を捕りに行ったけど、あれは政府の確認を兼ねた仕事だった。
今回は違う。
普通に遊びに行きたい。
「……誘ってみるか」
白石さんに連絡する。
『今度、キャンプに行こうと思ってるんですけど、興味ありますか?』
少し待つ。返事が来た。
『キャンプですか?』
『はい。北海道で1泊して、魚でも捕って食べようかと思ってます』
『北海道ですか』
『ワープなら交通費かからないですし』
少し間が空いた。
『ちなみに、お一人で行く予定だったんですか?』
「……」
聞かれてしまった。
いや、別に隠すことじゃない。
『まだ決めてませんでした。よかったら一緒にどうですか?』
送信。今度は、少し長く待った。
『日程が合えば、ぜひ』
「おお!」
断られなかった。
しかも、今回は仕事じゃない。政府の確認でもない。
白石さん自身の休日だ。
「じゃあ、日程だな」
お互いの休みを確認する。
俺の会社の休日。白石さんの休日。
何日か候補を出した結果、2連休が重なる日が見つかった。
「よし!」
これなら行ける。
俺は早速、考えていた企画を説明した。
北海道でキャンプ。
自分で捕った魚を刺身にする。
夜は外でご飯を作る。
翌日は青森で自然を見て、最後に富山でちょっと豪華なランチ。
全部、ワープで移動する。
『……2日間ですよね?』
「そうですよ」
『普通なら、移動だけでも大変な日程ですね』
「でも俺なら行けるじゃないですか!」
『確かにそうですが』
「それに、交通費はほぼゼロです!」
『そこは大きいですね』
「でしょ!」
宿泊先は、札幌の定山渓自然の村が気になっている。
通年営業で、暖房付きのテントハウス「星の家」があるらしい。
もちろん、それぞれ別の棟を取る。
1棟3,900円。2棟で7,800円だ。
「……本当は1人3,000円以内で考えてたんですけど」
『少し超えますね』
「まあ、北海道の夜は寒いですし。暖房は欲しいですよね」
『それは助かります』
「移動で浮いた分、宿は暖かい方を選んでもいいですよね」
『せっかくなら、ゆっくり泊まりたいですしね』
「ですよね!」
釣りをする場所と宿泊先が離れていても、見える場所をつないで移動すればいい。
もちろん、宿泊には予約も必要だし、現地の状況も確認しないとな。
料理は屋外の炊事場ですることになるらしい。
「じゃあ、空きがあればここにしましょう!」
『はい。楽しみにしています』
そうして、だんだん予定が決まってきた。
釣り。温泉。キャンプ飯。星空。
翌日の観光。
最後は富山のホテルにあるレストラン、リコモンテで、2,800円くらいのコースランチ。
「……豪華じゃないですか?」
『そうですね。かなり楽しめそうです』
「でしょ!」
俺は満足して、持ち物を考え始めた。
……あ。
「そうだ。白石さん」
『はい』
「釣り竿って持ってます?」
『ありますよ』
「えっ!」
意外な返事だった。
「釣りするんですか?」
『昔、家族と行っていたので。今も道具は持っています』
「へえ!」
知らなかった。
そういえば、前に趣味の話をした時も、詳しく聞いたわけではなかった。
「何本あります?」
『今あるのは1本ですね』
「なるほど」
1本。
じゃあ、もう1本必要か?
いや。
俺には、あれがある。
「じゃあ俺は、タモ網でいいかな」
『……タモ網ですか?』
「前にも使ったじゃないですか」
『ああ、あの方法ですね』
前に高知でやった魚捕り。
魚そのものをワープさせず、俺が位置を変えながらタモ網で捕まえる。
あれなら釣り竿はいらない。
ただし、場所によって使える漁具やルールは違う。
今回は北海道なので、現地の条件は改めて確認しなければならない。
「問題なければ、俺はタモ網で捕ります」
『なるほど。私は普通に釣りですね』
「そういうことです!」
釣り竿を買わずに済んだ。
「節約成功!」
『……まだ魚は捕れてませんよ』
「それはそうですけど」
白石さんの返事に笑ってしまった。
ちなみに、今回は刺身を作るつもりだ。
そのことも伝える。
『刺身ですか?』
「はい。包丁も買いました!」
『準備が早いですね』
「ちょうど今日注文したんですよ」
『魚を捌けるんですか?』
「スーパーで売ってる魚なら普通に捌けますよ。刺身も切れます」
『それは心強いですね』
「ただ、釣った魚の締め方とかは、まだ詳しくないんですよね」
『そこは事前に確認しておきましょう』
「ですね」
今度は、白石さんが釣りを担当する。
俺はタモ網で魚を捕って、刺身にする。
キャンプ場では、白石さんにご飯と汁物をお願いしよう。
「そうだ、白石さん」
『はい』
「前は魚に塩を振ってもらいましたけど、今回は料理もお願いしていいですか?」
『もちろんです』
「おお!」
『何を作る予定ですか?』
「炊きたてのご飯とか、魚のあら汁とか。あと、焼きおにぎりもいいですね」
『いいですね。炭火で焼いたらおいしそうです』
「ですよね!」
だいぶ楽しみになってきた。
ただ、まだ道具をそろえる必要がある。
釣り用品。寝袋。調理道具。
キャンプ場の利用条件も確認しなければならない。
「まあ、そこはまた考えましょう」
『はい。楽しみにしています』
連絡を終える。
スマホを見る。
銀行から入金された350万円。
ネット通販で注文した包丁2本と砥石。
そして、白石さんとの2連休。
「……なんか、いいな」
350万円も入ったんだから、もっと豪華なことをしてもいいのかもしれない。
でも、今の俺が楽しみにしているのは、1万円ちょっとの包丁と、森のキャンプ場で食べる魚だ。
別に我慢しているわけじゃない。
むしろ、早く行きたい。
「FIREしたら、こういう休日が毎日になるのかな」
そう考えると、少し笑えてきた。
でも、今はまだ会社員だ。
休日には限りがある。
だからこそ。
「……2連休、全力で遊ぶか!」
俺は旅行の予定表を開いた。
まずは北海道。
釣り。刺身。キャンプ。
そして、最後は富山の豪華ランチ。
普通なら交通費だけでも大変な旅行だ。
でも、俺にはワープがある。
「節約旅行なのに、結構豪華になりそうだな」
さて。
あとは、当日を待つだけ。
……いや。
「キャンプ道具、全然ないじゃん!」
まだ、買い物は終わっていなかった。
次回、第60話「交通費14万円? ならワープで行こう」
次回更新:10月26日 12:10予定




