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ワープの松さん ~普通の会社員、ワープを副業にしてFIREを目指します~  作者: 松さん


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23/53

第23話 政府と協力したら給料出るの?

翌日。


「おはようございます」


「おはよう」


普通に出勤する。昨日は政府と面談していたのに、今日は普通に会社だ。


「……」


なんか、この落差にも慣れてきた気がする。昨日。東京都内の公的施設。


政府関係者3人。身分証を出して、本名も顔も確認された。救助活動の話をして、政府との連絡先まで増えた。


そして今。仕事。


「まあ、辞めるって言ってないしな」


むしろ昨日、政府にも言った。FIREするまでは本業を続ける。だから正しい。


仕事を始める。いつもの作業、いつもの人、いつもの時間。周りから見れば、俺は昨日も今日も普通の会社員だ。政府と面談していたことを知っている人はいない。


「……」


昨日会った政府関係者。俺の本名知ってるんだよな。そう考えると少し変な感じがする。


休憩時間。スマホを開く。


「ん?」


通知。昨日、連絡担当になった女性からだった。


『昨日はお時間をいただき、ありがとうございました。今後の協力について、こちらでも条件案を整理します。まとまり次第ご連絡します』


「協力か」


まだ、するとは決めていない。でも政府側も、本格的に話を進めるつもりらしい。


「俺も整理しとくか」


昨日、口ではいくつか言った。本業は辞めない。呼ばれたら何でも行く形にはしない。


俺がいないと回らない仕組みにはしない。能力の細かい条件は教えない。ただ、それだけで足りるのか。


AIを開く。


『政府から今後の協力条件案を整理すると連絡が来ました。昨日伝えたのは、本業を続ける、要請は断れるようにする、能力に依存した社会インフラは作らない、能力の細かい条件は公開しない、という内容です。他に決めておいた方がいいことはありますか?』


送信。回答。


『実際に継続的な協力関係を作るのであれば、活動内容だけでなく、連絡方法、対応可能な時間帯、報酬、勤務への影響、個人情報の取扱い、記録、緊急時の扱いなども整理しておくとよいでしょう』


「……報酬?」


手が止まる。もう一度見る。報酬だ。


「そうか」


救助は無料。これは決めていた。事故に遭った人から金を取るつもりはない。


YouTubeは広告や配信で稼ぐ。そこも分けた。でも。


「政府から仕事頼まれたら?」


例えば能力の実験や研究で遠くへ行き、何時間も拘束され、休日を使う。


危険がある案件。


「それも全部タダ?」


なんか違う。AIへ聞く。


『政府から正式に実験や調査への協力を依頼された場合も、無償でやるのが普通ですか?』


回答。


『必ずしも無償である必要はありません。善意による救助活動と、政府側の依頼によって時間・労力・リスクを負う業務は分けて考えられます』


「だよな」


『継続的に協力する場合は、無償と決めつけず、報酬・経費・補償の有無や算定方法を事前に確認しておくとよいでしょう』


「報酬か」


考えてなかった。


「……収入の候補、増えた?」


YouTube、投資、政府。俺の資産形成につながるものが、なんか増えてきた。


「でも」


金額次第。当然。


政府からの報酬も、受け取れば収入だ。税金とか契約とか、面倒なところは後で確認するとして。


「FIREには使えるな」


政府。FIREに貢献。


「協力する理由が1個増えたな」


もちろん。金だけで何でもやるつもりはない。でも、タダよりはいい。


休憩が終わり、仕事に戻る。その日の夜。


帰宅してから活動用の連絡先を見る。


「来た」


政府側からのメール。件名。


『今後の協力に関する条件整理について』


「早いな」


開く。まだ正式な契約ではない。今後の話し合いに使うための、たたき台。


「どれどれ」


読む。まずは専用の連絡窓口。


「これは昨日のやつか」


政府側から連絡でき、俺からも問い合わせできる。ただし。


『連絡への応答は、出動その他の協力義務を意味するものではありません』


「お」


そこは大事だ。次。


『勤務中、就寝中、私生活中等、常時即応を求めるものではありません』


「ちゃんとしてる」


政府から電話が来たら、24時間いつでも飛ばないといけない。ではない。次。


『具体的な協力については、原則として案件ごとに内容を提示し、ご本人の同意を得た上で実施します』


「これもいい」


断れる。次。救助。


災害。研究。実験。


必要に応じた移動。いろいろ書かれている。


「増えてきたな」


さらに読む。


「……あった」


報酬。


『継続的な協力関係に対する手当については、協力内容の確定後に提示します』


「金額ないじゃん」


その下。


『実験、研究協力、出張、危険を伴う案件等については、内容に応じて個別の報酬・補償を設定します』


「なるほど」


固定。プラス。案件ごと。


「これ、結構ちゃんと収入になるな」


AIへ。


『政府から固定手当と案件ごとの報酬案が来ました。ただし金額はまだ書かれていません』


回答。


『金額が不明な段階では、FIREへの影響を評価できません』


「一番知りたいところなのに」


まあ。まだ契約内容すら決まっていない。当然か。


続きを読む。


「……ん?」


1つ。


気になる項目。


『政府側の要請により平日の会議、実験等が必要となる場合、本人の勤務先との調整方法についても協議します』


「待って」


勤務先。


「会社に連絡するの?」


嫌だ。というか。能力バレるじゃん。


すぐに連絡担当へメッセージ。


『確認です。勤務先との調整とありますが、俺が空中スイマーだということを会社へ伝えるという意味ですか?』


送信。少し待つ。返信。


『現時点では、そのような情報開示を前提としていません』


「よかった」


続き。


『必要な勤務調整をお願いする場合も、本人の能力や具体的な協力内容を勤務先へ伝えない形を基本に検討しています』


「じゃあ何て言うの?」


そのまま送る。


『政府案件への協力が必要な人物であり、詳細は機密である旨など、必要最低限の説明に留める方法が考えられます』


「……」


政府案件。機密。勤務調整。


「それはそれで何者だよ」


同じ職場の人から見たら。普通の会社員。急に。


政府案件。詳細機密。休み。


「俺、会社で変な人にならない?」


送信。少しして。


『政府から個別の勤務調整が入る時点で、ある程度不自然に見える可能性はあります』


「そこ誤魔化してくれないんだ」


『不可能なことを「絶対に不自然に見えません」とはお伝えできません』


「真面目だな」


『ありがとうございます』


「褒めたつもりじゃないんだけど」


返ってこない。当たり前か。ちょっと面白い。


昨日までは。政府関係者。それだけだった。


でも。こうやって直接やり取りすると。思ったより話しやすい。


もう一度、条件案を見る。


「他は」


個人情報。非公開。記録。


必要な範囲。能力詳細。別途協議。


「……監視」


ここも気になる。政府からすれば。俺がどこにいるか。


何をしているか。ある程度知りたいはず。でも。


こっそりGPSを入れられるとかは嫌だ。AIへ相談。


『政府が安全保障上、俺の位置や活動をある程度把握したいのは理解できます。ただ、秘密の尾行や無断GPSみたいなのは嫌です。条件にできますか?』


回答。


『協力条件として、必要な監視・位置共有を行う場合は、内容・目的・期間等を本人へ説明し、本人が把握できる形に限定するという条件を提示できます』


「それなら、言いたかったことに近い」


条件に追加。位置共有が必要なら。言ってくれ。


監視したいなら。何をするか教えてくれ。こっそりは嫌。


シンプル。さらに。昨日の内容もまとめる。


本業優先。出動は任意。能力の詳細は非公開。


個人情報を守る。隠れて監視しない。俺がいないと成り立たない仕組みを作らない。


それに、報酬あり。


「……」


最後。もう一度見る。報酬あり。


「強いな」


FIRE。今まで。給料。


投資。YouTube。そこへ。


政府。


「政府案件って、副業になるのか?」


少し考える。


「まあ、分類は後でいいか。金が入るなら、FIREには近づく」


俺は少し笑った。


「ワープ能力手に入れて」


「最初に考えてることが」


政府。ヒーロー。世界。


ではなく。


「FIRE早くなるか、なんだよな」


まあいい。俺はそういう人間だ。

次回、第24話「政府に条件を返します」


次回更新:10月8日 20:10予定

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