↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワープの松さん ~普通の会社員、ワープを副業にしてFIREを目指します~  作者: 松さん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
17/48

第17話 翌日なので普通に出勤します

目覚ましが鳴った。


「……」


止める。目を閉じる。


「……眠い」


昨日は朝から夜まで11時間、ワープして、人に会って、話して、またワープして。最後は。68,000人。


「……」


もう1回目を閉じる。でも仕事がある。


「起きるか」


体を起こす。スマホを見る。


「うわ」


通知、通知、通知。ずっと通知だ。YouTube、X、ニュース、知らないアカウント。またニュース。


「これ全部見るの無理だな」


YouTube Studioを開く。登録者。


「……8万?」


昨日、配信を終えた時は7万八千くらいだった。寝ている間にも増えたらしい。


「俺、寝てただけなんだけど」


数字が増えているのは少し嬉しい。でも、時計を見る。


「やば」


閉じる。


「仕事行かないと」


いつも通り準備して、いつも通り家を出る。当然、今日は水泳帽もミラーゴーグルもマスクも、活動用のものは持ち出さない。というか。


「ワープで行ったらダメだよな」


見える場所をつなげば、仕事場の近くまでほとんど時間をかけずに行ける。でも毎日、同じ時間帯に勤務先の近くへワープするようなことを始めたら。昨日まで必死に隠していた意味がなくなる。


「普通に行こ」


昨日は日本中を飛び回った。今日は普通に通勤。


「……差がすごいな」


まあ、仕事だから。アルターク九州本部。いつもの場所、いつもの人、いつもの仕事。俺が入っても、誰も。


「空中スイマーだ!」


とは言わない。当たり前だけど、ちょっと安心する。


「おはようございます」


「おはよう」


普通だ。すごく普通だ。昨日68,000人に見られていた人間が、普通に出勤している。


「……」


少し面白くなってきた。仕事を始める。しばらくして、近くで。


「昨日のワープの人見た?」


聞こえた瞬間、手が一瞬止まる。


「見た見た」


「本物かな?」


「いや、あれ本物だったらやばくない?」


「ニュースでもやってたよ」


「なんか全国飛んでたやつでしょ?」


俺は仕事を続ける。昨日全国を飛んでいたやつが、ここにいる。


「松さん見た?」


「え?」


急に。話がこっちへ来た。


「昨日のワープの人」


「ああ」


少し考える。


「ちょっとだけ」


嘘ではない。かなり見た。


「どう思う?」


「どうだろうね」


「いや、本物じゃない?」


「そうかもね」


「なんか反応薄いな」


「朝からずっとそれ見てたわけじゃないし」


昨日11時間、ずっとその本人だった。


「でもさ」


相手が。スマホを見せる。


「これ」


画面には、渋谷にいる俺が映っている。


「……」


「いろんな角度から撮られてるらしい」


「へえ」


「しかもこのあと長野行って」


「へえ」


「また別の場所行って」


「すごいね」


「絶対興味ないじゃん」


「いや」


めちゃくちゃ知ってる。


「仕事中だし」


「あー」


納得された。助かった。俺も画面の中の俺を見る。水泳帽、ゴーグル、マスク。


「……怪しいな」


「だろ?」


「うん」


自分でもそう思う。休憩に入る。


「よし」


スマホを開く。まずYouTube Studio。


「……まだ増えてる」


登録者は8万を超えて、さらに少しずつ動いている。


「すご」


でも今、一番確認したいのはそこじゃない。


「収益化」


昨日、配信終了後に条件を見るところまでだった。表示。


「……」


登録者、問題なし。視聴時間、反映。


「お」


もう一度見る。


「いける?」


申請。できる。


「来た」


世界初かもしれないワープ能力より、今はちょっとこっちの方が嬉しい。


「申請できるじゃん」


進める。確認、確認、入力。


「……これで」


送信。表示。審査中。


「終わり?」


思ったより。普通だった。


「昨日60,000人見てたのに」


会社の休憩時間に、スマホで収益化申請。


「……」


なんか。地味だな。まあ、これで審査が通れば、今後の配信からようやく収益が発生する。


「やっとスタートか」


まだFIRE資産は増えていない。登録者80,000人、ニュース、68,000同接。でも金融資産は昨日とほぼ同じ。


「数字って難しいな」


時間。まだ少しある。


「ニュース見るか」


昨日は配信中で、まともに見られなかった。検索。空中スイマー。


「……出るな」


記事、動画、まとめ。また記事。


「多い」


1つ開く。


内容。渋谷。複数の撮影者。別角度。その後。遠く離れた場所へ。また別の人。ライブ配信は継続。複数地点。


投稿時刻。


「ちゃんとまとめてるな」


俺より。詳しい。記事の文面。


『ワープを自称する配信者』


「……」


読む。


『現象の正体については確認されていない』


「まだ自称なんだ」


ちょっと笑う。まあ。ニュースが。


『本当にワープでした』


と断言する方が怖い。


「そりゃ慎重になるか」


別の記事。こっちは。昨日の移動を。時系列でまとめている。


「何時何分まで出してる」


コメント欄。


『本物だろ』


『いやマジック』


『CGでは説明できない』


『全部仕込み』


『全国にスタッフ置くの無理だろ』


「まだやってるな」


少し。楽しい。そして。別の記事。


「……」


文章の途中。


『関係機関も公開映像や投稿内容を確認しているとみられる』


「関係機関」


読む。もう一度。


「……やっぱ見るよな」


能力を公開する前。AIと考えた時にも。政府機関から接触される可能性は出ていた。企業。研究者。マスコミ。政府。外国。能力の存在を表に出せば。


そういう相手が寄ってくるかもしれない。だから。本名。顔。住所。勤務先。普段の生活。そこは出さないと決めた。


「想定はしてたけど」


あの時は。まだ。誰にも知られていなかった。関係機関が確認しているとみられる。その一文が。今は。実際のニュースに載っている。


「こうなるのか」


少し不思議だった。怖い。というより。机の上で考えていた話が。現実になった感じ。


「まあ」


犯罪をしたわけでもない。昨日も。人に呼ばれて。会って。ワープしていただけだ。


「連絡来たら、その時ちゃんと対応すればいいか」


前に考えた通り。何でもその場で即答する必要もない。まず。相手を確認する。話を聞く。必要なら。そのあと考える。


「よし」


スマホ。閉じる。時計。


「あ」


休憩。終わる。


「仕事戻らないと」


登録者。ニュース。政府。YPP審査。全部。一旦。しまう。仕事は。仕事。


その後も。普通だった。昨日。日本中を飛んで。今日。普通に働く。なんか。変な感じはする。でも。


俺は。まだ。FIREしていない。なら。働く。


「お疲れさまでした」


仕事終了。帰る。普通に。家。


「はあ」


座る。スマホ。開く。まだ。通知。


「減らないな」


X。見る。俺の動画。俺の動画。俺の動画。


「……すご」


昨日。俺が。適当に。視聴者に呼ばれて。あっち。こっち。行った。その行動が。誰かによって。


地図にまとめられている。


『空中スイマー移動記録』


「何これ」


見る。渋谷。長野。その次。その次。時刻。推定移動時間。


「俺より詳しいじゃん」


別の投稿。


『過去配信一覧』


「全部見つかってる」


縄跳び。


「またこれ」


初配信。低同接。サブ機の熱。


「そこまでまとめる?」


笑う。でも、その次に出てきたものは少し雰囲気が違った。


『空中スイマー正体誰?』


「……」


『住んでる地域どこだろ』


『普段仕事してるっぽい?』


『昨日の発言から会社員説』


「……」


スクロール。


『配信開始前の移動を逆算できない?』


『方言ある?』


『服から分からない?』


『過去動画の背景』


「待って」


止める。


「早くない?」


こうなる可能性は。考えていた。だから。顔を隠した。家の近くから配信しなかった。勤務先も出していない。日常の移動経路も見せないようにした。そのために。能力を公開する前から。


対策した。


「でも」


あの時。想像していたのは。有名になったら。誰かが調べるかもしれない。そのくらいだった。今。登録者だけで。80,000人。ニュースを見ただけの人まで入れたら。


もっといる。


「80,000人とかに探される前提では考えてなかったな」


1人が気づかなくても。10人。100人。10,000人。何万人も見れば。誰か1人くらい。気づくかもしれない。対策の種類が違う。というより。


同じ対策でも。人数が変われば。穴の見つかり方が変わる。


「これ」


もう1回。確認した方がいいな。政府。身元。家。仕事。次の配信。現在地。


「……」


PCを開く。AI。いつもの画面。入力。


『以前、能力を公開する前に身元特定対策を考えました。』


続ける。


『現在、全国ニュースになり、登録者が80,000人ほどいます。』


さらに。


『関係機関も公開情報を確認していると報じられています。』


少し考える。最後。


『今までの対策で足りないところと、政府から実際に連絡が来た場合の対応を整理してください。』


送信。画面に。回答が。表示され始めた。

次回、第18話「有名になったけど、これ大丈夫?」


次回更新:10月5日 20:10予定

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。