↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワープの松さん ~普通の会社員、ワープを副業にしてFIREを目指します~  作者: 松さん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
14/54

第14話 渋谷でワープしてみた

『ライブ配信を開始しました』


「どうも。空中スイマーです」


サブ機を見る。同接は3人。


「……いつも通りだな」


熊本から東京まで来た。初めての長距離ワープも成功した。そして今、渋谷まで来た。その中でも、人が立ち止まっても流れを塞ぎにくそうな場所を選んでいる。なのに、画面の数字だけ見ると、昨日までと何も変わらない。


『今日はどこ』


「今日は東京です」


『東京?』


「渋谷」


『マジ?』


「マジ」


コメントが少し流れる。


『背景都会だ』


『とうとう人いるところ来たのか』


「そう」


今日は、俺1人で、


『本物です』


と言うために来たわけではない。周囲を見る。人はもちろんいる。でも、俺の方を見ている人はほとんどいない。たまに。


『YouTube LIVE中』


『空中スイマー』


『空中スイマー本人 撮影OK』


と書いた表示を見る人がいる。そして、水泳帽、ミラーゴーグル、マスク。俺を見る。そのまま通り過ぎる。


「まあ、そうなるよな」


『怪しい』


「自分でもそう思う」


サブ機。同接4人。


「じゃあ」


俺は周囲を確認する。人の流れを邪魔しない、数メートル先の誰も立っていない安全な場所。配信カメラも、通行人の顔を追わず、俺とワープ先が中心になる向きにしてある。


「今日はここでワープします」


『いつもの』


「今日は違う」


カメラを見る。


「周りに普通に人がいる」


『仕込み?』


「早いな」


まだ何もしていない。


「まあいい」


まずは近距離。


「じゃあ、あそこ」


数メートル先。


ワープ。


一瞬。


景色が切り替わる。すぐに元の位置へ戻る。


『いつもの』


「だから」


言いかけて。


「え?」


声がした。少し離れたところで、1人の若い男が足を止めてこっちを見ている。


「……今」


俺を見る。


「消えました?」


「ワープです」


「え?」


「ワープ」


前にも似たようなやり取りをした気がする。でも今回は、コメント欄じゃない。目の前に、本当に知らない人がいる。


「もう1回いいですか?」


「いいですよ」


男がスマホを出す。


「撮っていいんですか?」


俺は表示物を指す。


『空中スイマー本人 撮影OK』


「どうぞ」


「マジか」


スマホが俺に向くと、少し緊張する。今までと違って、このカメラは俺の物じゃない。


「じゃあ行きます」


「はい」


男のスマホが回っている。数メートル先。安全確認。


ワープ。


「うわっ!」


戻る。


「えっ?」


男が自分のスマホを見る。


「え?」


俺を見る。またスマホ。


「消えてますよ」


「ワープだからね」


「いや」


そこへ。


「何してるんですか?」


別の人が来た。最初の男が言う。


「なんか消える」


「なんかではないです」


俺は訂正する。


「ワープです」


「ワープ?」


「はい」


自分で言っていて、だいぶ怪しい。2人目もスマホを出した。


「撮っていいんですか?」


「どうぞ」


さらに少し離れた人もこちらを見る。何かやっていると分かったらしく、立ち止まる。


「……増えてきたな」


サブ機を見る。同接は6人。


「配信より現地の方が人多いんだけど」


『草』


『逆転してる』


俺は少し考える。


「じゃあ」


集まってきた人を見る。


「俺が場所決めると仕込みって言われるんで」


「はい」


「誰か」


周囲を見る。


「どこに行くか決めてもらっていいですか?」


「え?」


「見える範囲で」


安全な場所。人とぶつからないところ。


「そこ」


1人が少し離れた場所を指した。


「街路樹の横?」


「そうです」


見る。誰もいない。足元も見える。


「了解」


ワープ。


「うわ!」


「えっ!」


声。


戻る。


今度は。複数のスマホが俺を向いていた。


「もう1回!」


「いいですよ」


別の人。


「あっち」


「近いな」


数メートル先。


「行きます」


ワープ。


戻る。


「やば」


「どうなってんの?」


「マジック?」


「仕掛けある?」


「ないです」


俺が答える。


「って俺が言ってもダメなんですよね」


少し笑いが起きた。


「今までそれで信じてもらえなかったんで」


最初の男が、自分のスマホを見ながら言う。


「でも俺撮ってますよ」


「そう」


俺は思わず指をさす。


「それが欲しかった」


「俺?」


「あなたの動画」


別の人。


「どういうこと?」


「俺が撮った動画だけだと、全部俺の仕掛けって言われるんですよ」


「あー」


「だから」


周囲のスマホを見る。


「知らない人に撮ってほしかった」


「なるほど」


言ってから。少し思う。


「変なお願いだな」


でも。今。本当に。俺とは関係ない人たちが。別々のスマホで。別々の角度から。俺を撮っている。


「……これ」


少し嬉しくなる。


「これだ。俺が欲しかったの」


『何が』


「こっちの話」


コメントを見る。


『現地の人ガチっぽい』


『周りの反応も仕込みじゃね』


「まだ言う?」


『全員スタッフ説』


「何人用意すればいいんだよ」


でも。まだ。そう言おうと思えば言える。


「じゃあ次」


上を見る。


「空行きます」


「え?」


現地の人。


「飛ぶんですか?」


「飛ぶっていうか」


空を見る。


「ワープします」


足元。周囲。安全。


「行きます」


ワープ。


一気に地面が離れる。


「うわっ!」


下から声。次。少し斜め上。


ワープ。


さらに移動。スマホを下へ向ける。何人も。こっちへスマホを向けている。


「おお」


なんか、すごくそれっぽい。もう一度ワープして少し横へ。そして地上。


「ただいま」


「いやいやいや」


「えぐ」


「今のどうやったんですか?」


「ワープ」


「それしか言わないじゃん」


「ワープだから」


サブ機を見る。コメント。


『周りの声やば』


『これ現地じゃない?』


『誰か別角度上げてない?』


「別角度?」


コメントが続く。


『Xにある』


「もう?」


『空中スイマーで検索』


「早くない?」


俺は自分では確認しない。配信中。サブ機で色々触るより。今はこっち。でも。コメントがどんどん増える。


『渋谷にいるやつこれ?』


『別の人の動画出てる』


『同じ時間じゃん』


『横から撮ってるやつある』


「マジで?」


目の前では。さっき撮った人が。スマホを操作している。


「上げました」


「早っ」


「いいんですよね?」


「どうぞ」


「タグ何にします?」


「タグ?」


そこまで考えてなかった。


「空中スイマーでいいんじゃないですか」


「そのまま?」


「そのまま」


別の人も。


「俺も上げよ」


「こっちから撮ってます」


「俺反対側」


「え?」


2人が。お互いの画面を見比べ始めた。


「ここ同じですよね」


「同じ」


「俺こっちにいたから」


「じゃあこの角度のやつ俺だ」


俺は見ている。これは今までなかった。俺じゃない、知らない人同士が勝手に検証している。


「ちょっと待って」


1人が動画を戻す。


「ここ」


俺が消える瞬間。


「俺の方でも消えてる」


「こっちも」


「同時?」


「たぶん」


「……え?」


最初に撮った男が。俺を見る。


「これ、本当にワープなんですか?」


「最初からそう言ってる」


「いや」


少し笑う。


「信じる方が難しいでしょ」


「まあ」


それは分かる。


「でも」


男はまたスマホを見る。


「俺、今撮ったんで」


「そう」


それ。俺が欲しかったやつだ。サブ機。同接。


「……11」


止まる。


「二桁」


『そこ?』


「いや大事だろ!」


この前は、あと2人で二桁と言った直後に1人減った。今日は11、12、14。


「増えてる」


15。18。22。


「ちょっと待って」


『別動画から来た』


『Xで見た』


『本当に渋谷?』


「渋谷です」


『今から行けば会える?』


「いや」


俺は周囲を見る。配信を始めたばかりの頃なら。現在地をほぼリアルタイムで出していても、誰も来なかった。でも今、人が増え始めている。


「……これ」


少し嫌な予感。


「場所出し続けるの、そろそろ危ない?」


まだ大勢ではない。数10人。でも明らかに今までと違う。同接は30、36、42。


「数字動くの速くなったな」


『ほんまに人増えてる』


『現地動画3つ見つけた』


『角度全部違う』


『これ仕込みなら大規模』


「まだ仕込み説残ってるんだ」


『まあ疑う』


「強いな」


でも。前とは違う。


『編集だろ』


だけではない。


『これどうなってる?』


『別角度一致してない?』


『現地の人いる?』


疑っている。でも。検証している。


「……」


これだ。俺が欲しかったのは。信じてください。じゃない。自分で確認できる材料。


「AI、合ってたな」


小さく言う。目の前の人たちも。まだ残っている。


「次どうするんですか?」


聞かれる。


「次?」


俺は少し考える。本来の予定は、近距離、人に指定してもらう、空中ワープ。ここまではやった。そして。


「遠く行きます」


「遠く?」


「はい」


「どこまで?」


「……」


まだ決めていなかった。


「ちょっと待って」


スマホを見る。行き先は遠い。でも第三者がいて、分かりやすく、安全な場所。


「決めてないんですか?」


「今決めます」


「行き当たりばったりですね」


「ワープなんで」


「関係あります?」


「ないかも」


笑い。俺も少し笑う。でも。これは。近距離ワープより。もっと分かりやすい。今。渋谷で。知らない人たちが。


俺を撮っている。ここから。普通なら短時間では行けない場所へ。移動する。そこで。また別の知らない人に撮ってもらう。


「今いる人」


俺は周囲を見る。


「俺が今ここにいるところ、撮っといてもらっていいですか?」


「もう撮ってますよ」


「あ、そっか」


そうだった。今ここにいる俺は、何台ものスマホに映っている。配信も続いている。このまま遠くへ行って。向こうでも、別の人に撮ってもらう。それなら。


「移動にかかった時間も分かるか」


「あと」


カメラを見る。


「配信もそのまま続けます」


『どこ行く』


『もっと遠く行って』


『長野来て』


『こっち来れる?』


コメントが流れる。


「そうか」


俺が行き先を決める必要はない。向こうに誰かいればいい。


「じゃあ」


カメラを見る。


「誰か、遠くから呼んでください」


『呼ぶ?』


「行けそうな場所なら行きます」


少し考える。


「行って、ちょっと話して」


「そこで俺を撮ってもらえれば、さっきまで渋谷にいたのも分かるだろ」


目の前の1人が笑う。


「急に人の家行く企画みたいになってません?」


「家には行かないです」


「そこはちゃんとしてる」


「人がいて、安全に会える場所で」


同接。50を超えた。


『長野来て』


『駅前ならいる』


『こっちも来て』


『北海道』


「急に増えたな」


コメントを追っていて。大事なことを思い出した。


「あ」


カメラを見る。


「あと、チャンネル登録お願いします」


『急にYouTuber』


『そこ忘れてたのか』


「これ収益化したくてやってるから」


コメントがまた流れる。


『長野来て』


同じコメントが何度か見える。


「じゃあ」


空を見る。


「まず、呼んでくれた人のところ行ってみるか」


ワープ。

次回、第15話「ワープ1日旅行」


次回更新:10月4日 12:10予定

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。