第12話 AIに配信相談してみた
画面に、回答が表示され始めた。
『まず、現在の配信で何が確認できていて、何が確認できていないかを分けて考えると整理しやすいです』
「また整理か」
でも読む。
『コメントへリアルタイムで反応できているため、事前録画ではない可能性はある程度示せています』
「うん」
『一方で、映像に映っている現象が本当にワープなのかは、視聴者側から独立して確認できていません』
「独立?」
続きを見る。
『撮影機材を準備しているのもあなた。周囲に協力者がいないと説明しているのもあなた。ワープだと説明しているのもあなたです』
「……」
昨日。
『全部、俺の自己申告か』
そう思ったばかりだった。
「じゃあカメラ増やす?」
入力。
『複数のカメラで撮ればいいですか?』
回答。
『証拠は増えますが、すべての機材をあなた自身が管理している場合、「すべて仕掛けではないか」という疑いは残ります』
「危な」
3台くらい買うところだった。
「まだ1円も稼いでないのに」
回答は続く。
『より重要なのは、あなたと事前に協力関係のない第三者が、独立して同じ現象を確認できることです』
「第三者」
前回の配信で流れたコメントを思い出す。
『知らない人の前でやってみたら』
「……あいつ、そういう意味だったのか」
俺は入力する。
『じゃあ人がいるところでワープすればいい?』
少しして回答。
『考え方としては近いですが、人混みの中へ突然ワープするのは安全上おすすめできません』
「まあそうだよな」
『人との衝突、通行妨害、撮影されたくない人の映り込み、施設や道路の利用ルールなども考える必要があります』
「渋谷の交差点の真ん中で消えたら一発だと思ったんだけど」
さすがに怒られそうだ。俺はもう一度聞く。
『じゃあ、どんな場所ならいい?』
今度は条件が並んだ。一般の人がいて、場所も映像から分かりやすい。複数の方向から撮影できる。俺と無関係な人が、自分のスマホで記録できる。安全に立てる場所がある。通行を邪魔しにくい。その場で出された指示にも対応できる。
「要求多いな」
でも、1つずつ読むと分かる。
今までの配信には俺しかいなかった。俺が撮って、俺が説明して、俺が、
『本物です』
と言っていた。
「知らない人が勝手に撮ればいいのか」
例えば10人が、別々のスマホで、別々の角度から撮る。そのうち何人かが自分のSNSに動画を上げる。全部に同じ瞬間が映る。
「俺の動画1個より強そうだな」
さらに回答が続く。
『可能なら、離れた二地点で別々の第三者に確認してもらう方法もあります』
「二地点?」
『ある場所であなたが確認された直後、通常の移動では到達できない時間で別の場所に現れれば、単一地点だけの実演より検証材料が増えます』
「おお」
それは分かりやすい。ここで消える。遠くで出る。両方に知らない人がいる。
「それ強くない?」
これで完全に証明できるわけじゃない。でも、今までよりはずっとマシだ。
ワープならできる。むしろ近距離で消えるより、得意分野だ。
「じゃあ」
俺は指を折る。
「人がいて」
「みんなスマホ持ってて」
「場所が見て分かって」
「知らない人が勝手に撮れて」
「その場の指示でワープして」
「遠くにも出る」
だんだん規模が大きくなっている。
「最初、縄跳びだったんだけどな」
スマホ2台、三脚、同接1桁。それが。
「公開実演か……」
俺は少し考えた。自分の生活圏ではやりたくない。顔は隠していても、普段いる場所と活動場所が近ければ意味がない。人が少ない場所では今までとあまり変わらない。なら、生活圏から離れていて、人が多く、誰でも場所を知っているところ。
「……東京?」
東京なら、知らない人はいくらでもいるし、スマホもいくらでも向けられる。場所も分かりやすい。俺は地図を開き、新宿、池袋、東京駅、渋谷と候補を見ていく。
「人が多ければいいってもんでもないよな」
最初に聞きたかったのは、もっと派手なワープ企画だった。でも、必要だったのは俺がすごいことをすることじゃない。俺以外の人に見てもらうことだった。
「公開実演ねえ……」
地図を眺める。
「どこがいいんだろ」
次回、第13話「じゃあ渋谷でやるか」
次回更新:10月3日 12:10予定




