第十七話 強制クエスト失敗 その2
鵺退治の英雄 源三位頼政 VS 平家の影の首領 平知盛
決着!
源三位頼政は急いで自分の軍勢の元へ戻った。
既に宇治川を渡っている。
戻るとすぐに
「なぜ、橋を落としていない! 急いで落とせ!」
と配下に命じた。
源三位頼政は宇治川を盾にして敵を防ぐ算段をつけている。
橋が残っていたらそれができない。
敵を魔法で追い散らかしたが、あくまで一時的な時間稼ぎに過ぎない。
すぐに体制を立て直したら追ってくる。
実際に土煙を天に巻き上げながら、怒濤のごとく押し寄せてきているのが見えていた。
「俺に任せろ!」
三井寺の僧兵 浄妙が立ち上がり振り上げた六角棒で橋げたを叩いた。
衝撃波が走る。
橋の破壊には至らなかったが、橋げたが落ちた。
宇治川に水しぶきが舞い、残骸となった橋げたが流されていく。
乱暴だが急場しのぎであれば問題ない。
ここで平知盛軍を迎え撃つため体制を整えた。
同じタイミングで平知盛軍が宇治川に到着した。
川を挟んで退治する源三位頼政軍と平知盛軍
(間に合った。まだ何とかなる)
宇治川を盾とする盤面をつくることができた。勝負はここからだ
源三位頼政は闘志をみなぎらせた。
「南無八幡台菩薩-山鳥-」
源三位頼政は本日2回目の爆撃魔法を唱えた。
そう連発できる魔法ではないが、この場合出し惜しみはできない。
そして戦はシンプルだ。
先にダメージを与えたほうが有利だ。相手の平知盛もそれは分かっている。だから急襲して背後を襲った。
「上は梵天 下は海竜神 -銀平-」
平知盛も魔法を唱えた。
平知盛の周囲が海となり大渦となる。フィールド魔法だ。
その大渦から無数の鎖が飛び出る。その鎖の先には巨大な碇がついていた。
その鎖の姿は、まるで大渦を支配する大ウミヘビだ。
その無数の碇が源三位頼政の放った爆撃魔法めがけて殺到する。
爆撃魔法と無数の碇が衝突。
空中で大爆発がおきた。
空が青からこの世の終わりの様な赤銅色に変った。が平家軍は無事だ。
「源三位殿の魔法は俺が防ぐ。橋も橋桁は落ちたが欄干は無事だ。歩兵は欄干を進め。騎馬隊は川を越えろ! 馬筏の陣形なら川を越えることができる。いけ!」
平知盛の号令が飛ぶ。
平知盛軍は今の魔法を防いだ魔法を見て士気が上がった。
源三位頼政の魔法は平知盛がいる限り怖くないと理解したのだ。
信頼できる将のいる部隊は強い。
平知盛の指示通り軍が動き出す。
歩兵は残った欄干をわたり、騎兵隊は川へ乗り出す。
「俺に任せろ!」
三井寺の僧兵 浄妙が六角棒を手に欄干の上に乗り陣取る。
「さあ、平家の弱兵ども。ここを通りたければ、俺を倒せ!」
そう吠えると、先頭の平家の兵士にむけて六角棒を振るう。
平家の兵士は吹き飛んだ。
これを見て沸き立つ源三位頼政軍。
どんなに多数の軍勢でも欄干の上は一人しか通れない。
浄妙は1対1なら負けない。
次々と平家の兵士をなぎ倒していった。
「はいよ。浄妙さんごめんよ」
若い三井寺の僧兵が身軽に先頭の浄妙の頭をポンっと越え、先頭に立つ。
「浄妙さんばかりにいい格好させ得られないからね」
そう言って若い僧兵は浄妙に変わって先頭に立ち、敵兵を屠った。
浄妙は
「コイツめ」
と苦笑したが、何もいわない。
若い僧兵の活躍で士気があがった。水を差すのはよくないと思ったのだ。
欄干の上の戦は圧倒的に源三位頼政軍の方に軍配が上がった。
浄妙達が逆に敵を攻め進め、対岸の平家の陣にたどり着こうというとき、死神が動いた。
平知盛だ。
「調子にのらなければ人の体を保ったまま死ねたものを。―千本桜―」
この戦いで倒れた敵味方の戦士達の骸から何かが抜き出る。
魂だ。
その薄ピンク色の魂が細かい花びらの刃の形に変化した。
それが平知盛を中心に無数に浮がぶ。
そのビジュアルは戦場でありながら異質で儚い幻想的な美しさを作り出した。
その薄ピンク色の無数の刃が浄妙達三井寺の僧兵達を襲う。
「ぬおおおおおっ」
彼等は武器を振り回して打ち払おうとしたが、切り刻まれ続け、ただの肉塊になった。
この光景を見た源三位頼政の部隊は恐怖した。恐慌状態となった。そして戦意を失った。
(いかん)
源三位頼政はこの戦場の流れが一気に不利に傾いたことを知った。
「王よ、逃げてください。すぐそこに寺があります。そこを要塞代わりに籠城するのです」
源三位頼政が以仁王に言った。
それは今までの余裕のある老爺の声ではなかった。
危機が迫っている。
そのことを以仁王は理解した。
それでも源三位頼政を置いて自分が逃げることを以仁王は躊躇った。
「早く!」
その以仁王を源三位頼政が怒鳴りつけた。
死を背負った危機はすぐそこまできていたのだ。
その怒鳴り声を聞いた以仁王は涙で顔をくしゃくしゃにしながら馬に乗り、兵を連れ寺へ走った。
当然、残ってしんがりを務めるのは源三位頼政だ。
敵は欄干の上を通り、川を馬で渡河し、迫ってきていた。
「撃てぇ!」
敵の内、魔法が使える兵たちがマジックミサイルを放つ。
一撃一撃は耐えることが出来る威力でも、軍団の数でマジックミサイルを放たれたなら躱すことも耐えることも不可能だ。
ケースにもよるが数の暴力はすべてを超える。
源三位頼政は動かない。
無数の魔法の光線が彼目掛けて飛来する。
「南無八幡大菩薩-獅子王-」
源三位頼政が魔法を発動させる。
巨大な黄金の円盾が出現した。
それは源三位頼政を余裕で覆い尽くすほどの大きさだ。
中央には獅子の絵柄が描かれていた。
その黄金の盾に無数のマジックミサイルが着弾。
巨大な衝撃音が何度も発生した。
砂埃が舞う。
その黄金の円盾は亀裂一つなかった。
無数のマジックミサイルを防ぎ切ったのだ。
「おおーっ」。
敵味方なく感嘆の声があがった。
その黄金の円盾が輝いた。
と同時に今まで受けたマジックミサイルをお返しとばかりに発射した。
今度は無数のマジックミサイルを平家の兵たちが受ける番だった。
しかし、彼等には源三位頼政がもっている円盾はない。
防ぐことはできない。
そのままマジックミサイルを受け倒れていった。
「ふっ、反射魔法か。小賢しい。……上は梵天 下は海竜神 -銀平-」
いつの間にか源三位頼政の背後にいた平知盛が魔法を唱える。
源三位頼政の立っていた地面が渦潮に変わる。
渦潮から現れた無数の鎖と碇。
それが源三位頼政を捕え縛り上げる。
「くっ」
苦悶の声をあげる源三位頼政。
「反射魔法は脅威だが背後や足元の攻撃は防げまい。さらばだ。老将にはご退場いただこう」
平知盛がそのように宣言すると同時に、魔法の鎖に縛られた源三位頼政の体が引き千切られ五体が飛び散った。
「残るは以仁王だ。行くぞ」
平知盛とその軍勢は以仁王が逃げた寺に向かった。
【モデル紹介】
■一来法師
三井寺の僧兵のモデル
戦場で筒井浄妙の頭をぴょんと超えるアクロバティックな戦闘をしたことで有名
【お知らせ】
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【あとがき】
鵺退治の英雄 源三位頼政 VS 平家の影の首領 平知盛 です。
やっと書きたかった源平合戦の英雄同士と対決までたどり着きました。
これから源平合戦の英雄同士と戦いをえがいていければと考えています。
応援していただけると嬉しいです。




