第十五話 クエストを受けますか?:木曽義仲の選択 その2
「それは本当かーっ!」
木曽義仲が立った。
彼は巨漢だ。
自然、周囲の人間を睥睨するような格好になった。
彼が立ち上がったのは、以仁王の使者である神宮十郎から”法皇幽閉””所領没収”のニュースを聞いたからだ。
彼の父は帝に仕えたことがある。
彼は地元でヤンチャをしている。しかし、その職業倫理は受け継がれている。
その彼からすると法皇とは害してはならない存在だ。
ましてや、他人の領地を奪うなど論外だ。
それは彼の基準では喧嘩を売っているのと同じだ。
「つまり覇王は全国相手に喧嘩を売ったわけだな」
木曽義仲はそう理解し、使者の神宮十郎に確認した。
神宮十郎はボサボサ頭をかきながらニヤリとわらう。
「面白い表現しますね。そう……まさにそうです。覇王は天下に喧嘩を売りました」
「その喧嘩! 買ったぁ!」
木曽義仲は吠えた。
神宮十郎は立ち上がり、木曽義仲に手を伸ばす。
木曽義仲はその手をとり二人は強く握手した。
「立ち上がっていただけますか。ありがたい、以仁王様も法皇様も喜ばれることでしょう」
神宮十郎が言った。
巨漢の木曽義仲
山伏姿の神宮十郎
このむさ苦しい二人が並ぶと妙な迫力がある。
それこそ小鬼や銀狼なら、即逃げ出すだろう。
「では、では、私は他にもいかないといけなくてね。ここで失礼しますよ」
神宮十郎は言った。
「なんだ。一緒に戦おうぜ。おめぇと一緒なら面白い戦いが出来そうだ」
木曽義仲が神宮十郎を誘った。
神宮十郎はちらりと木曽義仲の背後を見る。
そこには木曽義仲のヤンチャ仲間が行儀という言葉をどこかに置き忘れたかのような態度で自由に座っていた。
(俺もいずれ挙兵する予定だが……このガキと一緒は今は無理だな)
神宮十郎はそう判断した。
彼は野心家だ。かといって自らトップに立つ器ではないことは自分自身がよくわかっていた。
彼が目指すのは組織の№2だ。
しかし、すでに№2、№3がいるところではなれない。
源頼朝のところには北条時政という軍師がいた。
この木曽義仲にはヤンチャ仲間がいる。
仮に木曽義仲の誘いに乗ったなら、ヤンチャ仲間の下につくことになる。
そしてヤンチャ仲間のパシリにされるだろう。
そんなのは真っ平ごめんだ。
「申し訳ございません。令旨を届ける仕事がありますので、またの機会にでも誘ってくれるとうれしいです」
神宮十郎は婉曲に断った。
「おう、そうか。お前も大変だな。縁があったらまた会おうぜ」
気にする風もなく木曽義仲は快活に笑った。
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