第十四話 クエストを受けますか?:源頼朝の選択 その2
源頼朝が生き延びるために重視したのが情報。
そして有能な人材とのコネクションだ。
そして彼は見つけた。彼にとっての軍師を
名を北条時政という。
源頼朝が思うに北条時政は
崇徳天と戦った覇王
玉藻御前と戦った三浦、上総、千葉
鵺を倒した源三位頼政
彼らに遜色のない戦士だ。
いや、彼らよりも個人の武勇は劣るかもしれないが、それを補って余る戦術の才があった。
ただ、彼らと違うのは、活躍の場が与えられなかったことだ。
そう源頼朝は考えていた。
源頼朝と北条時政の縁はある女性から生まれた。
北条時政には愛娘がいた。
北条政子という。
彼女に源頼朝は惚れられて、猛アピールを受けていた。
何がきっかけでそうなったかはわからない。
ただ、お祭りデートのあと初めでキスをしたとき、
「あなたが太陽を手に入れる夢を見ましたの。あなたはきっと天下を手に入れますわ」
と政子は言った。
(夢が原因で惚れられるのはどうなんだ?)
と源頼朝は首をひねったが、彼はペルソナをかぶるのが得意だ。
そんな疑問はまったく出さず
「その天下をあなたのためにつくれたら最高ですね」
と甘い雰囲気づくりを優先させた。
北条時政と話し合うことが出来るようになったのも、それがきっかけだ。
ただ、出会いは最悪だ。
北条時政が怒鳴り込んできたからだ。
「俺の可愛い愛娘に何してくれとんのじゃ」
ということだ。
北条時政からすると源頼朝は愛娘に近づく悪い虫だった。
源頼朝は困った。
彼の精神は徹頭徹尾”(自分の)命を大事に”でできている。
その方針からすると敵は作りたくないのだ。
この激高している北条時政に変に抗弁したら敵になる。
それは避けたい。
この窮地を救ったのは政子だ。
北条時政と北条政子との戦闘が開始された。ゴングが鳴る。
「何、人の恋に文句つけてるのさ!」
北条政子の先制攻撃。
「はぁ? 心配してるのだ。彼は領主でも何でもないぞ。ただの流刑者だ。食っていけないぞ」
源頼朝は北条時政に暗に無職だとディスられた。彼は心に180ポイントのダメージを受けた。
「また、その話っ!」
「現実をみろって言ってるんだ、ちゃんと生活していけるかどうかが大事だろうが!」
源頼朝と一緒になると生活困難になるらしい。彼は心に210ポイントのダメージを受けた。
「ほほほ、現実を見るのはお父様ですわ」
「何だとっ」
「彼は必ず大きくなりますわ」
(いや、政子さん。俺は立身出世しようとは思ってないのです。どちらかと言えば放っておいてもらいたいので、やめてもらっていいですか?)
源頼朝はとまどっている。
「何にも根拠ねぇだろうが!」
「ありますわよ」
「何っ」
「彼が生きている。それが証拠ですわ」
「なんだそりゃ?」
「彼はなぜ生きているのでしょう? 気が変って処刑されてもおかしくないのに。なぜ、周りの領主、国王は彼を生かし、人によっては挨拶をよこすのでしょう?」
「む、それは」
「そうお父様自身わかってらっしゃるではないですか。万が一、都で理不尽なことが起きたとき、まとめる旗印が必要ですわよね。その旗印になれるのが、この頼朝様です。彼は覇王と戦った勇士の遺児ですから。それだからこそ彼は今まで生きて来られた? …… 違います?」
北条政子の会心の一撃
「……そうだ。そうだな」
北条時政は防御した。
「ええ、お父様がそのことを一番わかってらっしゃいますよね。お父様自身がそのお考えをお待ちでしょうから」
「ああ」
「坂東武者の頂点になれる可能性のあるお方。将来性が無いとは言わせませんわ」
北条政子は父を倒した。
(かっけーっ)
と源頼朝は自分の恋人を内心、崇め奉った。
ここで北条政子はフォローを入れる。
政子とて父と源頼朝の仲が悪いのは困る。
「それに頼朝様であればお父様と一緒にいられますわ」
と、とどめの一撃を放った。
北条時政が源頼朝に対して怒鳴り込んできたのは「愛娘が不幸になったらどうしよう」という心配。そして「俺の知らないところにいくのか」という寂しさからだ。
その不安を北条政子は解消して見せたのだ。
北条時政はノックアウトされた。
ここで北条時政は方針転換した。
愛娘の彼氏を徹底的に鍛えようとした。
全ては愛娘が不幸にならないためだ。
そして、旗頭になるときがきても困らないようにするためだ。
吉次がクロウを押し出しキングメーカーを目指したのと同様。
北条時政は源頼朝を鍛えて、キングメーカーになろうとした。
こうしてマンツーマン教育がはじまった。
そのマンツーマン教育の中で源頼朝は北条時政という親バカを観察した。
(これはすごい。個人の武勇はわからないが、戦術眼は怖いくらいだ。過去の英雄を超えるんじゃないか? この人とコネができたのはありがたい)
源頼朝は自分の彼女に感謝した。
北条時政は源頼朝を鍛えるにあたって、彼の人となりを感じた。
こちらの言うことを素直に聞いてくれる。意見も聞いてくれた。これが北条時政にとって心地よかった。それでいて頭が悪いわけではない。たまに的確な質問をなげかけた。これも北条時政にとって心地よかった。
彼は自分の実力に自信がある。しかし発揮できる場がなく実績がない。その実績がない自分の言葉を認めてくれる源頼朝を好ましく思うようになった。
愛娘も大事にしてくれているのも感じた。
いつのまにか北条時政は源頼朝を主と認めていた。
北条時政は源頼朝に進言した。
「これだけはやったほうがいい」
それは坂東平野の武将たちを味方につけることだ。
このままの状態が続くか、それとも旗頭として立つときがくるのか。
それは誰にもわからない。
わからないが、どちらの状況になったとしても坂東平野の武将たちを味方にしていれば安全性が増す。
(自分の)命を大事にという方針の源頼朝は安全性が増すという策は大歓迎だ。
北条時政の策を採用し、坂東平野の武将たちを味方につける工作をした。
運が良かった。
ちょうど、覇王が派遣を握り、「今後どうなるのか?」という不安が広がっていた時期だ。
表立って味方するとは言わないが「何かあったら協力する」という約束を坂東平野の武将たちととりつけた。
もちろん、反対する武将もいるかもしれない、覇王に絶対の忠誠を誓っている武将もいる。
そういう武将はできるだけ避けたが、それでも会ってみないとわからないのが人事だ。
中には「天下を裏切るか!」と通報しようとするものもいた。
片岡家などがそうだ。
そういう武将は容赦なく闇に葬った。
北条時政は策を実行するにあたって、そのような果断さをもっている男だ。奇麗ごとでは世を渡っていけないことを知っていた。
”(自分の)命を大事に”が方針の源頼朝はその北条時政の果断な処置を歓迎した。
その方が安全だからだ。
北条時政が特に重視した武将がいる。
相模国南部の王 三浦
上総国の王 上総
下総国の王 千葉
この三人だ。
「彼らは魔王 玉藻御前を倒した勇者達だ。彼らが味方になるかどうかで風向きが大きく変わる。……彼らは絶対に仲間にする必要がある」
北条時政は源頼朝に強く進言した。
その姿はまさに軍師だ。
源頼朝は軍師の進言をよく聞き実行していった。
実利もあった。
味方が増えれば増えるほど、会費のようなものが源頼朝の懐に入った。
懐に余裕が出来た、彼女にもプレゼントを渡すこともできた。
(軍師様様だ)
源頼朝はそう思った。
そして、
(その軍師様との縁をつないでくれた政子には感謝しないとな)
とあらためて思った。
さて、その源頼朝はその信頼する軍師に神宮十郎が持ってきた以仁王の令旨のことを相談した。
(なんと答えるかな?)
その返答を楽しみにまった。
【モデル紹介】
■北条時政
愛娘の政子が源頼朝に惚れちゃったので、仕方なく源頼朝を後援した人。
鎌倉幕府成立後、権力を握ったが、その愛娘の北条政子と息子の北条義時と喧嘩となり、追放された。
■北条政子
源頼朝の恋人。猛アタックで彼を射止めた。
妹が「お日様とお月様=天下を手に入れる夢」を見たとき、その夢を買ったらしい。
捕虜になった静御前を庇った女性。
静御前が源義経への恋を歌ったとき、源頼朝は怒ったが、政子は彼女を庇った。
また、静御前が源義経の子を産んだ時、源頼朝はその子を殺せと指示したが、政子はその時も子供を殺さないように嘆願した。
【お知らせ】
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【あとがき】
おかしい。剣と魔法と源平合戦の英雄たちのバトルを書きたいのに、北条政子の恋愛と親子バトルらしきものを書いてる。なぜじゃ?
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