第十三話 強制クエスト発生 その4
「それで儂のところにきたのか」
「はい」
以仁王は老将 源三位頼政と対面した。
妖魔 鵺を倒した戦士ときいていたので、どんな恐ろしい男かと思っていたが、少なくとも容姿は普通だった。ただ色白で背が高い。
以仁王は鶴を連想した。
「なぜ儂のところへ?」
源三位頼政は質問を投げると茶をすすった。
以仁王はここにくるにあたって考えに、考えた末、すべて正直に話そうと腹をくくっている。
「あなたでなければ覇王に勝てないからです」
以仁王は真剣な目で答えた。
喉が鳴った
この解答が正解かはわからない。
しかし、手持ちの武器が“誠意”しかない。
これで戦うしかないのだ。
これは以仁王にとって“戦”だ。
「儂でなければ覇王に勝てぬか」
源三位頼政は茶をおくと、目を細めた。
以仁王にはこの表情が怒りなのか、笑みなのか判断がつかない。
ただ、ただ、次の言葉を待った。
口の中が異様に乾いた。
「ふふふ」
不意に源三位頼政は笑いを零した。
以仁王は戸惑う。
この笑い声がどういう意味か判別できない。
「ああ、いや失礼。あなたがしっかり物事を考えてらっしゃるようでね。感心したのです。お若いのにすばらしい。だいぶ苦労為されたでしょう」
源三位頼政は微笑んだ。
「え、あ、ありがとうございます」
以仁王は戸惑いつつもお礼をいい頭を下げた。
それはペコリと頭をさげるというものではなく、まるで平伏だ。
「おやめください。あなたは王だ。私は武将、臣下にすぎません。王が臣下に頭を下げるものではありませぬぞ」
「私は王といっても何もできません。このように頭をさげることしかできないのです」
以仁王は平伏をつづけた。
その以仁王に源三位頼政は膝でにじり寄り、以仁王の肩に手を添え、そのまま無理のない動作で引き起こした。
以仁王は戸惑っていた。
「あなたは儂のところへ来られた」
「はい」
「王よ。覇王に不満を持つ者は多い。それはご存じか?」
「そうでしょうね」
以仁王は答えた。法皇を幽閉し、所領を奪い、帝位を奪う。
相当反感を買っているだろう。そのくらいは予想がつく。
「しかし、その不満を持つ者は私のところにこないのですよ。なぜかお分かりか?」
源三位頼政のこの問いに以仁王は答えられなかった。
覇王を倒せるとしたら源三位頼政しかいないと以仁王は考えている。
過去の実績を見ても戦巧者で鵺退治の英雄であるこの老将を超える人物はいない。
それなら源三位頼政に覇王に不満を持つ者から相談がきてもおかしくない。
それなのに「不満を持つ者がこない」という。
以仁王にはその理由が分からなかった。
「わかりません。よろしければ理由をご教授願えませんでしょうか?」
以仁王は素直に尋ねた。
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