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剣と魔法の義経記  作者: 久手史郎
第一章 英雄集結
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第十ニ話 稲荷神 その6

「では、どうするのです? 直接、幽閉したのは大神です。私ではない。もはやクロウ殿の現世への帰還は不可能ですよ」

佐藤が尻を払い立ち上がりながら言った。


「なんだとっ」

今にも刃を抜きそうな怒りを皆鶴姫は佐藤にむける。


「あなたがもう一度、神域にいって連れ戻せばいいじゃない」

片岡春が抗議した。


そこに静が割って入る。


「ああ、そういうのはいいから。佐藤さんを説得するだけメンドイから」

静はそう言って手をひらひらさせた。


片岡春はふと思った。

(そう言えば静さんだけ焦っていない)

何か考えがあるのか? 片岡春がそう思っていると静が魔法の発動の準備した。


「私の魔法はね。神を降ろすことができるの。つまり神にすら影響を及ぼすの」

そう言って静は魔法を唱える。


(お姉ちゃんが守ってあげる)

静は魔法を唱えながら、かつての誓いを思い出す。


誰に誓ったわけでもない。

だけど大事な誓い。


静は神を呼び出す。


今回、呼び出したのは……。

クロウに渡したお守りの中にいた雷獣だ。


雷獣はクロウごと静の元に召喚された。


まるで、それはクロウが神となり静の呼び出しに応じたようにも見えた。


「「クロウ」」「「クロウ殿」」

神域から帰還したクロウは仲間たちの手荒い歓迎を受けもみくちゃにされた。


「ひどい目にあった」

手荒い歓迎から解放されたクロウは文句をいった。

「それは今の歓迎? それとも神域に閉じ込められたこと?」

静が尋ねる。

「両方だ」

とクロウが答えた途端、静の鉄拳がクロウの頬にめり込んだ。


「あのね。心配かけたんだよ。文句言う前にお礼をいいなさい」

静がクロウに教育的指導をした。

クロウが照れくさそうにお礼を言う。その後、振り向いた。


その先には佐藤継信がいた。


目が大きく見開かれている。


「どした?」

クロウが尋ねる。


「驚きました。まさか神域から単独で出てくるとは」

佐藤が正直に言った。


「あン。何言ってるんだ。一人で出て来れるわけないだろ。皆のおかげだよ」

クロウはニカッと笑った。


「私に何もないのですか?」

佐藤が尋ねる。

「なんでだ? 俺はあのお稲荷さんから力を貰った。ああ、道案内ありがとよ。おかげで目的は達成できた」

クロウは佐藤にお礼をする。


「いや、そうではなくて。クロウ殿あなたは神域に一時とはいえ捕らわれました。それについて何もないのですか?」


「ああ、さすがは玉藻御前の師匠だな。与一を結界の中のゆりかごの中で守ろうとしたのと同じように、俺を神域というゆりかごの中に閉じ込めて守ろうとした。発想が同じだな」


「おい、義母(はは)を馬鹿にしたな」

与一がクロウに対して剣を抜く。

「馬鹿にしてねーよ。神様と同じだなって言ったんだよ」

「そうだろう。俺の義母(はは)は神様みたいな人だ」

与一は剣を収め胸をそらせた。


それを見たクロウは再び佐藤に視線を戻す。


「佐藤。お前が何を気にしてるか知らんが、その頬に免じて許してやる。これでいいか?」

クロウは言った。


佐藤の右頬には大きな手形がついていた。



後日談


佐藤継信は大いに奥州王に怒られた。


被害者であるクロウと静が「奥州王のことを思っての行動なので」と逆に加害者である佐藤継信を擁護しなければならなかったほどだ。


罰として佐藤継信はクロウの元に派遣されることになった。

奥州王、曰く「罰として好きにこき使ってやってください」ということらしい。


クロウを神域に永久に幽閉しようとした佐藤に対してクロウの仲間たちは難色を示したが、当のクロウはまったく気にしてなかったし、静は逆に気に入ったようなので、結果受け入れることになった。

クロウにとって佐藤継信の加入は大きい。

彼は正規の騎士だ。

当然部下がいる。


佐藤の加入は100騎を超える軍勢が手に入ったことになる。


また、彼は剣も使え魔法も使える、そして馬にも乗れる。

クロウ達は佐藤に乗馬を教えてもらうことになった。

合戦になると乗馬のスキルは必須だからだ。


ちなみに彼の魔法は稲荷神の魔法。専用の鼓を叩くと様々なものに化ける妖狐を呼び出す。

自分そっくりの騎士を呼び出したことにクロウ達は驚いた。

それも複数。

この騎士に化ける妖狐たちだけでも軍勢がつくれる。

この軍勢を率いる妖狐を佐藤は”忠信”と名付けていた。そのように命令系統を明確にしないと軍隊の指揮がむずかしいらしい。


クロウは佐藤継信と忠信に軍隊指揮も教えてもらっていた。

今まで個人で戦てきたクロウにとって軍隊指揮のスキル習得は重要なことだ。


このようにクロウは奥州大陸での日々をスキルアップに費やした。


ちなみに母太郎は後でクロウの幽閉計画が失敗したと聞き地団太を踏んでいた。


「クロウよりも優れているということを見せたいのでしょう? 幽閉が成功していたら優れたところを見せられないですよ。幽閉が失敗したほうが優れているところを見せられる機会があるのでは?」

と佐藤が窘めたが

「お前が言うな」

と母太郎に怒られた。

宮使いはつらいのだ。



ともあれ


静 皆鶴姫 堀吉次 伊勢三郎  亀井 駿河 片岡八郎 片岡春 喜三太 熊井太郎 赤井藤 備前平四郎 江田源蔵 鈴木重家 那須与一 千本 残夢 佐藤継信

クロウのもとに英雄が終結した。

【モデル紹介】

■佐藤忠信

本作の忠信のモデル

義経四天王の一人 藤原秀衡の命令で源義経に従って転戦

源九郎狐で有名。


【お知らせ】

こちらも連載中です。よろしければ見ていただけると嬉しいです

■機動小隊レンジャーワン https://ncode.syosetu.com/n8156lf/


【あとがき】

これで第一章 英雄集結は終了です。

第一章のラスボスはお稲荷様でした。


本章はクロウの仲間集めがテーマでした。

集まったメンバーが”義経十九臣”とだいぶ変わりました。


次は第二章です。

以仁王の令旨を受け取ったクロウのライバルたちの活躍をテーマとして考えています。


第二章について留意点が2点あります。

・ライバルの話がメインとなるため主人公の登場が第二章の最終話になります。

・本作では富士川の戦いをターニングポイントとして演出したいため、富士川の戦いの前後の時系列を入れ替える予定です。そのため富士川の戦いの後に発生する合戦が前にきたります。演出と思っていただけると嬉しいです。


皆さまのお陰で第一章を終わらせることが出来ました。感謝です。

源平合戦をテーマとしているのに魔法も妖怪も出てくる本作ですが、評価で応援していただけると嬉しいです。

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