第十ニ話 稲荷神 その2
佐藤継信がクロウ達を案内するというのは本当の話だ。
決して、母太郎が面倒くさくなって口にした出まかせではない。
先日、クロウから相談を受けたのだ。
宇迦之御魂大神に会いたいと。
理由を尋ねると、宇迦之御魂大神の弟子から彼の大神の元へ行くと更なる力を得ることが出来るといわれたという事だ。
クロウはその弟子から受け取った紹介状代わりのブレスレットを佐藤に見せた。
(玉藻姉さんの紹介か)
佐藤はそのブレスレットを見て紹介者が誰かを知った。
(これを断ると、あとで玉藻姉さんに怒られそうだな)
佐藤は肩をすくめた。
「わかりました。案内しましょう」
佐藤はクロウの頼みに軽く頷いた。
「お願いしておいて何だが……場所を知っているのか?」
クロウは尋ねた。
クロウは玉藻御前から奥州大陸にいる宇迦之御魂大神に会いに行けと言われた。
その時は何とも思わなかったが、一口に奥州大陸と言っても広すぎた。
とてもすぐに居場所がわかるとは思えない。
さらに尋ねる相手は神だ。
神のいる場所は神域だ。
神域になど簡単に行けるところではないということは不遜なクロウでもわかる。
(時間がかかるかもしれない)
そう覚悟していたクロウであったが、佐藤に相談したところあっさり案内すると言われたので逆に驚いたのだ。
佐藤はクロウの疑問に答える代わりに魔法を唱えた。
「オン キリカク ソワカ」
佐藤の周りに多数の狐火が現れた。
佐藤の顔は狐火の光がもたらす陰影に飾られた。
狐火という妖魔の光を受けているためか、佐藤の目が狐のように細く見えた。
「俺も宇迦之御魂大神の弟子なんですよ。その腕輪。玉藻姉さんのですよね。俺は玉藻姉さんの弟弟子なんです。ですから案内できますよ」
何でもないことのように佐藤は言った
「ああ、ただ。身を清めてきてください。可能であれば清潔な服でお願いします。一応、神域に行くのでね」
陰影に飾られた顔で佐藤がクロウにお願いした。
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