第十一話 黄金の都 その1
鬱蒼とした森を抜けた先に大都市があった。
雄大な北上川沿いに街や寺院群が並び、豊かさを象徴するかのように田畑がその大都市を包むかのように広がっている。
近くの丘陵の杉並木の中にも寺院群がそびえ、巨大な池にはそのお堂が映りこみ、富力を示すかのように黄金色に輝いていた。
クロウ達が目指した黄金郷。
奥州大陸の首都 平泉。
クロウ達は遂に到着した。
倒した野盗達は数知れず。
陵介と決別し、伊勢三郎や片岡兄妹が仲間になった。
怨念の魔王 崇徳天ともバトルし、傾国の魔王 玉藻御前の義息や仙人が一行に加わった。
クロウ、静、皆鶴姫、堀吉次、伊勢三郎、亀井、駿河、片岡八郎、片岡春、喜三太、熊井太郎、赤井藤、備前平四郎、江田源蔵、鈴木重家、与一(+妖狐)、千本、残夢。
彼等がクロウの仲間だ。
普通の旅人と呼ぶには少々人数が多い。
そのため那須温泉郷ではちょっとした騒動に発展した。
この大都市 平泉でも門番にとめられた。
しかし、ここは吉次の故郷だ。
吉次が事情を説明し、無事、街に入ることができた。
「すごい、すごい」
与一がはしゃぎ、兄である千本に止められている。
喜三太達、少年少女も口をおおきく開けてその街の巨大さに驚いていた。
クロウや静もまた驚いている。
これだけの街は都を出てから無かった。
奥州大陸の富強が感じられた。
「驚きましたかねぇ。この街は奥州王様が“極楽浄土を再現する”という決意の元つくられた街でしてねぇ。その考えが街に反映されているのです」
吉次がお国自慢を兼ねて説明する。
(なるほど、街だけじゃない。巨大な池。橋。阿弥陀堂など、考えられてつくらている)
静は感心した。都市計画を元に作られた街というのは中々、存在しない。
「これから、私の家に来てもらいます。そこで着替えてから、奥州王に会っていただきます」
吉次が今後の段取りを説明した。
クロウは頷く。
「えーっ。メンドクサイ。このままだとダメなのか?」
少年少女の一人、備前平四郎が不満を漏らす。
「バカねえ。アタシ達、旅続きでめちゃくちゃ汚れてんじゃん。これから偉い人に会うんだよ。旅の垢を落としてキレイにしていかないと」
同じく少年少女の一人 赤井藤がつっこんだ。
「いしし、キレイにしても変わらんのもいるけどな」
喜三太が藤を揶揄った。
「誰の事じゃー。」
藤が喜三太と平八郎を追いかけた。
「だいぶ明るくなったね」
静が彼等、6人の少年少女を見て笑みを浮かべた。
彼等が最初、クロウ一行に加わったときは酷かった。
元奴隷という境遇もあったのだろう。目が死んでいた。
クロウ達が崇徳天とバトルした後、クロウは恐怖の対象になったらしい。
祟り神でも見るかのようにクロウ達を見ていた。
静はそれが気がかりだった。
静には感情をなくした木偶人形に見えていた。
ようやく人間に戻ったと喜んだ。
“時が解決する”という言葉がある。
クロウ達と接するにつれて、ようやく6人の少年少女達は自分をだしてくれるようになった。
様々な要因があっただろう。
与一達の加入もきっかけになった。
クロウはもともと、手の付けられないヤンチャ坊主だった。それこそ母である常盤御前に疎まれるほどだ。
ところがこの旅で様々、考えさせられることが多々あり、彼の中に厳しさが出てきていた。
やんちゃ坊主の明るさが消えていた。
そして家族愛を受けてこなかったこともあり、クロウ自身も弟妹分にあたる彼らにどう接したらいいのかわからなかった。
少年少女達から見ると、ちょっと甘えにくいのだ。
その点、与一は強いし、やんちゃ坊主だが、子供のようなところがあり、とっつきやすい。さらに与一は義兄の千本によく甘える。また、襟巻のようになっている義母玉藻御前の分身である妖狐を通じ、義母にもよく甘えていた。
6人の少年少女たちは与一を通じで、間接的ではあるが家族の在り方を知り、甘え方を知った。
家族としてああなりたいと思えるものが出来た。
そのような影響はあっただろう。
いすれにせよ。
6人の少年少女は、もう木偶人形ではない。
それは心を許したということだ。
静にはそれがうれしかった。
変化と言えば片岡兄妹も変わった。
特に片岡春が変わった。
仙人 残夢が加入した当たりからだろうか。片岡春が強くなった。
強くなったというのは物理的にではない。
メンタル的にだ。
元々、気は強い。
だから家族を壊した源頼朝への復讐を考えた。
そして怨念の魔王に見初められた。
その結果、様々な人に迷惑をかけ、クロウは重傷を負い、魔法を封じられた。
片岡春はそのことを気に病んでいた。
塞ぎ込み気味であった。
そして兄の片岡八郎もその妹の心情を察し、同じく気に病んでいた。
ところが片岡春は変わった。
クロウの魔法が封じられたことについて気に病んでいるのはかわらない。
が、塞ぎ込み気味だったのが、真逆に活発になった。
何か吹っ切れたらしい。
覚悟を決めたようにも見えた。
それに伴い、兄の片岡八郎も明るくなった。心の重荷がとれたのだ。
「うん。明るくなった」
静は手を腰に当てて、もう一回言った。
静はこの雰囲気が好きだ。
ずっと続けばいいと思った。
そのため、ゲン担ぎのために繰り返し言った。
言わなければ、この雰囲気が逃げていくのではないかとも感じていた。
「これもクロウ殿や静殿のお陰だな。俺ではこうは出来なかった」
「伊勢さん」
伊勢三郎がいつの間にか静の傍に来て言った。
確かに片岡兄妹や6人の少年少女は最初、伊勢三郎達の一緒に行動していた。
その時は彼ら、彼女らは今のように生き生きとしていない。
木偶人形だった。
「あん? それはお前らが拒否ってただからだろうが」
近くにいたクロウが後ろから声をかけた。
伊勢三郎の肩を組んだ。
「うん。いや、その通りだな。俺らは助けておいて、彼らを拒否した。半端だな」
伊勢三郎はクロウの言葉を肯定した。
伊勢三郎達は奴隷商人から彼等を救った。
しかし、その後持て余した。
少年少女をどこか近くの村に預けようとした。
片岡兄妹の敵討ちは拒否した。
これでは心を開くのは無理だろうなと伊勢三郎は思った。
自分から“壁”を作ったのだから。
「さて、おしゃべりはそこまでにしていきますかねぇ。旅の汚れを落とすのもそうですが、まずはイイものを食べて疲れをいやしましょう」
吉次の号令に少年少女達が「応!」と元気に応じた。
伊勢三郎はそれを聞いて、彼らにとって良い結果となったと喜び、自分自身でそれを実現できなかったことについて、少し悔しがった。
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【あとがき】
平泉のうまいものと言ったら前沢牛を真っ先に思い浮かべる筆者です。
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