第四話 ○○がパーティーから外れました その1
(おいおい、ちょっと待てよ)
陵介は焦った。
陵介は魔王城の秘宝で強くなった。
普通の人では難しい魔法を使えるようになった。
その魔法は火だ。
普通に攻撃魔法としても使える。
つまり遠距離攻撃もできるようになった。
更に身体に纏えば、攻撃してくる敵を燃やす防具となる。
身体能力、特に脚力を大きく向上させるおまけつきだ。
自分でも前より明らかに強くなった自覚がある。
ところがだ。
いざ、クロウと戦ってみるとその自覚が薄れてくる。
前と変わらずコテンパンにされる。
更に陵介を悩ませることがある。
皆鶴姫や弁慶も模擬戦に参戦
陵介とバトルするが、この二人にも陵介は勝てないのだ。
まあ弁慶はわかる。
あの巨躯だ。
どんなに手数を増やしても、一撃くらったらそれで終わりだ。
勝つにはクロウがやってみせたように全ての攻撃を躱すということになるのだが、魔法で脚力があがった陵介でも難しい。
陵介がショックなのは皆鶴姫にさえ一勝もできないことだ。
皆鶴姫の得意武器は剣だ。
クロウのように八幡神の魔法を使うわけでもない。
静のようにおかめの神の魔法を使うわけでもない。
今や陵介でさえ火魔法を使う。
言ってみれば皆鶴姫は火魔法を会得する前の陵介自身だ。
陵介はそう思っていた。
ならば勝てる。
陵介はそう考えていた。
ところがだ。
いざ皆鶴姫と戦ってみると攻撃が当たらない。
躱される。
パリィされる。
火魔法によるファイヤーボールも当たらず、かえって懐に入るスキを与えてしまう。
動作として速いわけではない。
速さなら火魔法で能力向上した陵介の方が上だ。
それなのに攻撃があたらない。
クロウのように躱し続けているわけではない。
皆鶴姫の業は攻防一体なのだ。
陵介のファイヤーボールを潜り抜け攻撃
陵介の剣を弾き攻撃
陵介の体当たりを剣で迎撃
陵介が攻撃したら武器がいつの間にか無くなっていたこともあった。
傍目には皆鶴姫の剣に巻き取られてしまったのだが、陵介には理解できない領域の業だ。
「京八流 -鎬-」
皆鶴姫が剣を一閃させると陵介が一回転して吹き飛んだ。
陵介視点では攻撃したと思ったら、無重力を味わった。そして気づいたら地べたに倒れていた。
「鍛錬が必要ね」
と静は陵介を諭す。
「ああ」
と陵介は応じるものの、
(俺って弱いのか?)
という自信喪失の闇が彼の心を覆いつつあった。
(あーあ。昔はクロウと互角に喧嘩してたんだけどな)
陵介はいわゆるガキ大将だ。番長だ。子供たちの中でのカースト上位者だ。
何せ生まれが違う。
彼は坂東出身だ。
坂東は都の東側にあり荒武者を昔から排出することで有名な地だ。
坂東育ちの男達は、理屈よりも先に体が動く。
日焼けした面構え
黙して立つだけで場の空気が締まる風貌。
反骨心も旺盛。
都の人々からは別世界の人種と思われていた。
ヒドイ表現になると鬼の一種とも思われていた。
もっとも高名な坂東武者は平将門だ。
新皇を名乗り当時の帝である朱雀帝に対抗したのは都の人ならば誰でも知っている。
繰り返すが陵介はその坂東出身だ。
坂東以外の人を惰弱と嘲っていた。
クロウと出会う前は。
弁慶がクロウのことを出会い頭に「貧弱」と言ったが、陵介もクロウに同じ印象をもった。
それでガキ大将として生意気なクロウを懲らしめてやろうと思った。
それが二人の始まり。
その時は互角の喧嘩で終わった。
(互角? いや違うな)
今だからこそ陵介にはわかる。
陵介との喧嘩の時にはクロウは魔法を使わなかった。
全力ではなかったのだ。
(俺はクロウと互角の戦いをしていたと思っていたけれど違ったってことか)
陵介はだからといってクロウが手を抜いたとは思わない。
喧嘩に魔法を使う馬鹿はいない。
そういうことだろう。
そういうことだろうとはわかるが
(やっぱり悔しいな)
陵介の目が潤んだ。
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