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剣と魔法の義経記  作者: 久手史郎
第一章 英雄集結
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第十話 仙人があらわれた その3

「ふむ」

残夢は吉次の一行を観察していた。

自然と一体となる残夢にとっては森の中にいる吉次一行を気づかれずに確認するのは呼吸すると同じ程度に容易い。


吉次が奴隷商人となったと推測し観察していたが……少年少女達が意外と明るいことに驚いていた。少なくとも奴隷として堕とされた子供の表情ではない。


(勘違いか)


残夢は拍子抜けすると同時に、興味がわいた。


この集団。

異様に戦闘力が高いのだ。


このセカイの旅はキケンだ。

野盗やモンスターに襲撃されるからだ。


ところが、この集団。

逆に野盗やモンスターを襲撃している。

しかも一人一人が一騎当千。一人で野盗の群れを殲滅できる力をもっている。


残夢ははじめ野盗狩りをして、野盗の財産を狙っているのではないか?

と仮説を立てたが、観察してみるとどうも違う。


戦闘そのものを目的としているようだった。

競技のように争って敵を倒している。


そして少年少女達もその姿を見て、スター選手を見るかのように喝采を浴びせていた。

スター選手に少しでも近づきたいという思いもあるのだろう。

自らも戦闘に参加していた。


(ふむ。どうにもわからないな)

残夢は首を振った。

戦闘集団ということでは軍隊ということが一番シンプルだが、どうみても軍隊には見えない。規律があるわけでなく、それぞれが好き勝手やっているように見えた。


それに向かっている先がおかしい。

彼らは北上している。その先は東北大陸だ。

仮に軍隊だとして東北大陸に向かう理由がわからない。


東北大陸は奥州王が治める国だ。

彼の国は豊富な黄金と馬で富を築いている。

その象徴として寺社が黄金でできているという。

国民も豊かで戦とは無縁の場所だ。


つまり東北大陸から軍勢がきて攻められるおそれはないのだ。


仮に彼らが積極的な防衛の観点から東北大陸を攻めるための小隊と仮定したとして理由が見当たらない。


では逆に侵略者として彼らが東北大陸を攻め取りに向かっているとしたら?

その考えを残夢はすぐに打ち消した。

いかに一騎当千といえど、少年少女を除くと十人少々の人数だ。攻めとるには少なすぎた。


(どうにもわからないな)


残夢は観察した結果、やはり奴隷商人まではいかなくとも傭兵の紹介みたいなことをしているのではないかと考えた。


残夢の考えたストーリーはこうだ。

少年少女に戦いを教えて傭兵として貸し出す。または売る。という内容だ。


奥州大陸は平和だ。

しかし、戦闘力がまったく不必要かと言えばそんなことは無い。

モンスターや野獣は出る。

過去には悪路王という魔王もいた。

戦える人材はやはり必要だ。


奥州大陸は平和なため成り手が少ない。

傭兵の需要はあった。


(ふむ。少年少女達もむりやり連れていかれているという風でもないな)

むしろ、スター選手にあこがれるリトル選手のようだ。


ここでマンウォッチングをやめようか。

そう残夢が思ったとき、一人の少女が目についた。


その少女は心に何かあるのか。

一人、悔しそうに顔をゆがめていた。


まわりの少年少女が騒いでいる分、残夢には異質に見えた。


少なくとも何かを心に抱えているように見えた。

よくよく観察すると少女の目は一人の男を見ていた。


それはこの集団のチームリーダーのような存在の男だ。

彼は今、巫女風の女性と話をしていた。

(ふむ)

残夢はチームリーダーの男の首筋に黒い靄のようなものを見た。

(なんだ、あれは。怨念・執念のような。。。。呪いの類か? それも運命を無理やり改変できる相当なものだぞ)


強力な呪いの類を持つ男と

思いつめた顔の少女


(なにかあるぞ)


特に一人暗い顔をしている少女。

彼女一人だけ意にそわない何かを抱えているのは間違いないだろう。

残夢は観察者としてそう結論づけた。


(イジメか?)

とも思ったが観察を続けると兄がいるらしく、それとなくその少女を気遣っている。


残夢は知らず知らずのうちに、過去の自分をその少女に重ねた。


(話をしてみたい)

人との接触を断って幾千年。

珍しく人に惹かれた。



さて、残夢は彼女と話をしたいとは思ったが、他の人がいるところでは遠慮したかった。

彼の本質はいまだヒッキーなのだ。それも引き籠もり過ぎて仙人に変化するほと重篤なのだ。

出来れば1on1で話をしたかった。


それには周囲の人たちが邪魔である。

(さて、どうしたものか?)

残夢は思案した。

彼は普通の頭脳の持ち主ではあるが、幾千年の経験がある。

その経験が一つの方法を導き出した。


(これなら話し合う環境をつくれるぞ)

残夢は早速、実行することにした。

【お知らせ】

こちらも連載中です。よろしければ見ていただけると嬉しいです

■機動小隊レンジャーワン https://ncode.syosetu.com/n8156lf/


【あとがき】

この第十話を書いてると仙人のイメージが・・・

こんな作品ですが「面白かった」「続きが気になる」と思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。

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