第十話 仙人があらわれた その2
「あひゃひゃひゃひゃ(゜∀゜)」
与一が躍動している。
クロウ一行は那須温泉郷を離れ、北上している。
目指すは奥州大陸だ。
ここで勢力をつくり覇王に対抗するのが目的だ。
途中、野盗やモンスターが襲ってくるが、問題なかった。
与一が一人で倒していた。
その姿は歴戦の戦士というよりは……新しいゲームを手に入れたゲーマーだ。
マジックミサイルを次々飛ばし、逆にモンスターや野盗を襲っていた。
その与一のブレーキ役である義兄の千本は
「暗くなる前にかえってきなさい」
とだけ注意した。
与一が野盗に負けるなど露ほどにも思っていない。
「いやあ、楽だね」
「そうですねぇ。この辺りは国境で人の手があまり入ってなく危険なのですが、おかげで楽な旅になりそうですねぇ」
静と吉次はのんびりそんな話をしている。
一方、対抗心を燃やしたのは皆鶴姫だ。
彼女の旅の目的の一つは自分の剣技を試したいということだ。
与一の動きを見て、
(私は与一に勝てるか?)
と自問していた。
その内、脳内シミュレーションでは物足りなくなったらしい。
皆鶴姫も対抗するように野盗狩りに参戦した。
与一も皆鶴姫参戦で喜び、殲滅速度が加速した。
伊勢三郎・亀井・駿河は難しい顔をしていた。
彼らもまた、モンスターや時には盗賊と戦ってきた。
しかし、与一の様に鮮やかに圧倒的な力で倒してきたのではない。
伊勢がタンクとして敵を引きつけ、亀井が後ろから弓での射撃で仕留め、駿河が奇襲する。
これが彼らの戦い方だ。
与一の戦い方は戦闘者として彼らに衝撃を与えた。
文字通り一騎当千を見せつけられた。
「これは考えさせられるな」
伊勢が苦笑した。
「ああ」
駿河が短く答える。
「これでもある程度は戦える自信はあったんですが、クロウ殿と出会ってから、上には上がいるという現実を嫌でもつきつけられます」
亀井はため息をつきながら言った。
弱くもなく、しかしながら、与一のような一騎当千でもない。
あまりにも自分たちが半端者に思えた。
それが彼らの表情を難しいものにしていた。
喜三太達、少年少女の反応は素直だった。
「かっこいー」
彼等から与一に対して賞賛の声が上がった。
野盗たちを簡単に倒し、俺TUEEEEを体現する。
その姿はまさに英雄だ。
少年の一人。鈴木重家は与一の戦い方を真似て、覚えたてのマジックミサイルを撃ってみた。
もちろん練度が違う。与一のマジックミサイルと比較すると誰の目にも稚拙に見えた。
「いししし。全然ダメじゃん」
喜三太が鈴木重家を揶揄った。
「そんなら、おまん やってみ」
鈴木重家が言い返した。
「よーし、いくぞ」
喜三太が弓を構えた。
そして矢を放つ。
「おおーっ」
亀井から教わったその弓矢の技術は皆を驚かせる。
少年が放ったにしては速度・威力ともに十分だったからだ。
もっとも……どこにも当たらずに終わった。
「全然、ダメじゃん」
少年たちが笑った。
それを横目に片岡春は悔しがっていた。
(クロウ様が全力を出せたら、一瞬で終わるのに)
クロウの魔法。
魔法剣から無数のレーザーを広範囲に射出する殲滅魔法。
この魔法なら与一のように敵に向かって飛び回らなくても、一気に敵を殲滅できるのだ。
その魔法は今は使えない。
クロウが片岡春を庇って傷を受けた。その後遺症で使用できなくなっていた。
片岡春は知っている
クロウが隠れてリハビリを行っていることを
リハビリ中に誰にも見せない悔し涙を見せていることを
そのリハビリの成果は徐々に出ている。レーザー射出はまだ無理だが、魔法剣を伸ばすことはできるようになった。
そのクロウの並みならぬ努力を片岡春は知っている分、悔しくて、悔しくて、体が震えた。
与一が縦横無尽に活躍するほど、
(クロウ様ならもっと簡単に倒せるのに)
と思ってしまう。
「あまり責めるな」
兄の片岡八郎が片岡春の頭をポンっ撫でた。
片岡春の視線の先にクロウの顔があった。
その顔からはクロウが今、何を思っているかは伺い知れなかった。
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【あとがき】
やっと、空気だった6人の少年少女の個性を少し出すことができました。
こんな作品ですが「面白かった」「続きが気になる」と思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。




