第九話 よいちのゆみ その23
紆余曲折の末。
与一はクロウ達の旅に同行することになった。
クロウは与一の動向に難色を示していた。
クロウは親の愛を知らずに育った。
そのため家族愛に強烈な憧憬がある。
自分には決して手の届かない神聖なものに近い憧れだ。
与一はそのクロウが憧れた家族愛に守られていた。
与一がクロウに同行することで、その“家族”が壊れることをクロウは恐れた。
しかし、与一の義母 玉藻御前や、その与一の家族の説得に負けて同行を許した。
何しろ、言葉だけの説得じゃなかった。
与一の義父 資さんが
「千本。お前もいけ。与一一人じゃ何するかわからん。迷惑をかけてしまう」
と与一の義兄、千本に指示した。
与一は戦闘の天才だが、箱入り息子のため常識に欠ける。
資さんはその点を心配し、良識のある千本の同行を命じた。
「あら、千本も行くのなら、私も行こうかしら」
玉藻御前はそう言うと魔法で小さな妖狐を召喚した。
妖狐といってもおどろおどろしさは全くない。
見た目はまるで狐のぬいぐるみだ。
「これは私の分身。与一、この子と一緒に行っておいで」
召喚された妖狐は与一の肩にのぼり、襟巻のようになった。
与一はその妖狐を撫で
「母様が一緒なら安心だ」
と笑った。
与一に義兄と義母がついてくることになった。
これでは家族離れ離れとは言えない。
むしろ義父である資さんが一人残ることになる。逆単身赴任状態だ。
その資さんがクロウに声をかけた。
クロウは訝しんだ。
旅立つ我が子ではなく、なぜ、俺に声をかけるんだ。
と思ったからだ。
資さんは言う。
「お前は強いな。さすが覇王と戦った男の子だな」
クロウは何も言わない。
意図がわからないのだ。
もしかしたら与一に勝ったことを当てこすっているのかもしれないとも考えていた。
「変に利用されるなよ」
資さんは眉をハの字にした。
クロウは意図がわからず見上げる。
クロウは戦士としては小兵だ。対する資さんは勇者パーティの一員なだけあり、立派な体躯をしている。自然、見上げる形となった。
「下手に能力があるとな、それを利用する奴らが現れる。そして、そういう奴らはな、用済みに成るとまるで消耗品のように捨てる。本当に恐ろしいのは魔王ではなく、そういう奴らだよ。決して下手に能力を見せて利用されるなよ。利用されるだけ、されて利用価値がなくなればゴミくずのように捨てられる屈辱は嫌だろう?」
と資さんは言った。
鈍く、疑い深いクロウではあったが、資さんが心配しているのがわかった。
クロウは頷いた。
「ちょっと待ってよ。確かに人を利用するだけ利用する屑のような奴らはいる。そういう事があっても、それを乗り越える力があれば問題ないさ。能力を隠す必要なんかない。見せびらかしてやんな」
玉藻御前が資さんの意見に口を挟んだ。
「おい、それで痛い目にあって魔王に堕ちたのだろう。その結果はちゃんと受け止めなければならないだろう。隠せるのなら隠したほうがよい。その方が世を渡るという意味では賢い」
資さんが反論する。
ここから資さんと玉藻御前のにらみ合いが始まり……夫婦喧嘩が始まった。
千本が苦笑しながら
「お見苦しいところを見せました。いつものことです。気にしないでください」
とクロウに詫びる。
クロウはその千本のお詫びは耳にはいっていなかった。
それよりも資さんと玉藻御前の喧嘩の原因を考えていた。
つまり
―力を得た後、どうするか―
という問題だ。
いや、答えはクロウの中で決まっていた。
覇王に挑むのだ。
能力を隠すということは難しい。
それなら、利用されても、その利用した奴を食い破るだけの実力をつける。
そうクロウは決意した。
それは修羅の道への決意だった。
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【あとがき】
長かった第9話もこれでおしまいです。
お付き合いいただき感謝です。
伊勢三郎が仲間になる第8話。那須与一が仲間になる第9話。反省するところが多く、改善の余地ありと考えてまして・・・一度、終わりまで書き終えたら書き直すかも。。。
仮に書き直したときに、ヒロインの入浴シーンがあったほうがよいと思う方は、リアクションで教えていただけると助かります。




