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剣と魔法の義経記  作者: 久手史郎
第一章 英雄集結
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第九話 よいちのゆみ その20

「あひゃひゃひゃひゃ(゜∀゜) なんだよ、その余裕。まるで俺に勝てるみたいじゃないか」

「みたいじゃない。勝てるんだよ。天才君」

クロウは人差し指を軽く曲げて挑発した。


「母様から教えてもらった、この技相手に勝てるというのか。戯言もいい加減にしろーっ」

与一が四匹の魔法の蛇からマジックミサイルを放つ。


そのマジックミサイルは途中で合流し、極大のレーザーとなった。


クロウはそれを最小限の動きで躱した。


最初のマジックミサイルは警戒して、魔法の力を使い、大きく避けた。

しかし、今回の極大レーザーは速く、高威力の魔法弾というだけだった。


いかに高威力でもヒットポイントは一つだ。

それだけなら最小限の動きでヒットポイントを避けるだけだ。


(素直すぎるんだよな)

クロウは思った。


与一はクロウのいる座標に攻撃してくる。

それなら、座標から動けば簡単に躱せる。

威力が高くても当たらなければ意味がない。


「南無八幡大菩薩―膝丸―」 

クロウは魔法を唱えた。

魔法剣が伸びた。

剣というよりは長槍となった。


クロウは魔法剣をレーザーのように発射できなくなった。

その後、特訓と工夫を繰り返した。その結果、魔法剣を伸ばすことに成功していた。


長槍は与一の魔法の鎧に向かって伸びた。

しかし、貫くことは出来なかった。

甲高い音が鳴り弾かれた。


「あひゃひゃひゃひゃ(゜∀゜) 母様が編み出したこの魔法の鎧がそんな槍を通すか!」

与一が高笑いする。


「いや、これでいい」

クロウは冷静だった。


長槍は魔法の鎧に弾かれ、与一の股下を通過していた。


「来い! 弁慶っ!」

クロウが護法童子を召喚する。


魔法陣が地面に描かれた。

その魔法陣から巨大な僧形の鬼神が出現する。

護法童子 弁慶が姿を現した。


弁慶はクロウの持つ長槍をつかむと鬼神の力で跳ね上げた。


長槍は与一の股下を通過している。

その長槍がカタパルトのように跳ね上がったのだ。

与一はカタパルトの砲弾のように空中に飛ばされた。

股間の痛みを伴って。


「おい、ちゃんと受け身を取れよ。死ぬぞ」

クロウは空中に飛ばされた与一に声をかける。


人は2mの高さから落下しても骨折の危険がある。

今、与一がいる高さは5mを超えている。

クロウのように飛翔の魔法が使えない限り落下ダメージは免れない。


いま、与一は悲鳴を上げながら落下していた。


「勝負ありだね。そこまでだよ」

玉藻御前がふわりと手を振る。


狐の形をした妖精が何匹も出現した。

そして、空から落下してきた与一をふわりと優しく包み込んだ。

与一の落下ダメージは0になった。


玉藻御前は与一の無事を確認すると大きくため息をついた。

「どうした? 与一が敗れて悔しいか?」

資さんが玉藻御前を気遣う。

「いや、それ以前の話だよ。資さん」

玉藻は首を振る。

「私はね。失敗して魔王に堕ちた」

資さんは頷く。

「与一にはそうなって欲しくなかったからね。困難を跳ねのける力を与えようと思った。どんな理不尽なことがあっても跳ねのける力を身に着けてもらいたいと願ったんだ」

「そうだな。それがお前の考え方だ」

「与一にその力も与えることはできた。ただね、資さん」

「なんだ?」

「一般常識を身につけることはできなかったようだよ」

そう言って玉藻御前はがっくりと肩を落とした。

「いやあ、他人の家に上がって、入浴中に突撃したと聞いて嫌な予感はしていたんだけどね」

玉藻御前は困った顔をした。

「それはお前が過保護に育てたからだろう」

資さんは眉をハの字にした。

与一は玉藻御前の強力な毒の結界の中で育った。

人との接触は極端に少ない。


養父母の玉藻御前と資さん。

そして資さんの子で兄貴分の千本

与一と積極的に関わっているのはこの3人だ。


あとはせいぜい、温泉郷の人たちぐらいだろうか。


このような環境で一般常識を身につけるのは難しい。


ゲームに見せかけた戦闘訓練もそうだ。

与一と戦うのは、玉藻御前が用意した妖魔。

玉藻御前が指示した予定調和に沿って動くだけだ。


そのため、与一は敵がパターンで動いているときには強いが、想定外に極端に弱い。

その弱点がクロウとの戦いで見えてしまった。


「母様、悔しい」

与一が上目遣いで玉藻御前を見る。

「悔しいよ」

与一がもう一度言った。

玉藻御前が優しく与一を撫でる。

「悔しいか。男の子だね」

与一はコクリと頷く。

「与一。お前は強い。でも負けた。何でかわかるかい?」

「さっき、母様と義父と話していた。イッパンジョウシキが関係しているのか?」

「そうだねぇ……一般常識も含めた経験かな」

「その経験はどうしたら手に入る?」

与一は玉藻御前に尋ねた

その問いを受けて玉藻御前は考えた。


(力はある。でも……それを生かす経験が無い……か。資さんの言うとおり私の所為よね。それでは意味がない。世の中の理不尽を跳ね返す力は身につかない……それだと私と同じ失敗をする……。親離れの刻かぁ)

玉藻御前は与一を優しくなでた。


「ねえ、与一。その経験はね。いろんな人と会わないといけないの」

「いろんな人と?」

「そう、いろんな人と出会って、いろんな人の考えに触れて、いろんな失敗をして手に入れるモノなの」


与一は考えた。そして少し悲しそうな顔をした。

「母様がいるここから離れないといけない?」


与一は聡い。玉藻御前の言葉の意味を理解していた。

この玉藻御前が作り出した結界内のフィールドにいる限り、与一は経験を得られないのだ。

それは、ここにいてはこれ以上強くなれないことを意味していた。


「与一は強くなりたい?」

玉藻御前の質問に与一はしばらく逡巡した。

そして、しばらくの間の後、コクンと首を縦に振った。

「だったら、少し、旅をしていろんな経験を積んでこないとね」

「……わかった」

玉藻御前は与一の決断を見て少し悲しそうな顔でほほ笑んだ。


その後、クロウに視線を転じた。

「そなた」

「なんだ」

クロウは応じた。

「頼みがある。お前の旅にこの子を連れていってくれないか?」

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