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剣と魔法の義経記  作者: 久手史郎
第一章 英雄集結
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第九話 よいちのゆみ その15

「あひゃひゃひゃひゃ(゜∀゜)」

那須与一は今日も狐火(ウィルオウィスプ)を狩る。

彼の天才的な魔術の腕は狐火(ウィルオウィスプ)が何匹いても一切寄せ付けない。


表向き―

那須与一の行動は魔王、玉藻御前が封印されたエリアから漏れ出てくるモンスターの駆除だ。モンスターを放っておくと人に害を与えるから。

という建前だ。



実態は違った。

少なくとも、与一にとっては。

彼にとってそれは「駆除」ではなかった。

親とするキャッチボールや、バドミントン、テニス――そういう遊びの延長に近い感覚だった。

子は遊びながら親とコミュニケーションを取り、その結果として、自然にスポーツも上達していく。

与一にとっては、ただ楽しい親子の時間に過ぎなかった。


少し、訂正するなら与一が上達しているのはスポーツではなく戦闘能力。そして触れ合っているのが封印されているはずの魔王 玉藻御前が相手ということだ。


与一の目の前に大きな岩がある。

その岩から与一の遊び相手である狐火(ウィルオウィスプ)が出てくるのだが、今回は違った。

毒素の様な色艶やかな煙が充満し、その煙が人の形を成す。

そして、その煙から現れたのは妙齢の女性だ。


百人が見れば百人美人と言うだろう。

黒髪の似合う知性溢れる女性だ。


「母様!」

与一はその女性に駆け寄る。


母と呼ばれた女性は与一の小柄な体を受け止め抱きしめた。


「上達したねぇ。私は鼻が高いよ」

女性は与一の頭をやさしく撫でた。


「そりゃぁ。母様が毎日遊んでくれるもの」

与一は女性に甘えた。


女性はその与一の言葉に満足する。


女性はある事情で与一に母らしいことはしてあげることはできなかった。

そして今も満足にできない。

このように実体化できるのは僅かな時間だからだ。


ただ、彼女は非常に頭がいい。

僅かな時間で与一のために何かしてあげられないか考えた。


その考えた結果が狐火(ウィルオウィスプ)を使ったリアルFPSだ。

与一は資さんの子だ。

つまりは戦士の子だ。


戦士の子である以上、戦闘力は高いほどいい、最強なら成功は確約されたも同然だ。

親心としては子には成功してほしい。自分が成功していないなら猶更だ。

そのため彼女は与一に戦闘力を高めようとした、将来、有能な戦士になれるように。


彼女が頭がいいのは、それをゲームにしてしまったことだ。

子供はゲームならば時間を忘れて熱中する。


その結果、与一は戦闘の天才と言っても嘘ではないだけの実力を身に着けた。

そのことに母様と呼ばれた女性は満足した。


この世界は厳しい。

飢えの恐怖は常にあり、野盗やモンスターよって倒されるという日常は常に運命の横にいる。そして戦乱・謀略・差別・暴力といった人災は理不尽なほどだ。


彼女は与一にその苦労を追ってほしくなかった。そのため、どのような運命が訪れても、それを跳ねのける強さを与一に願った。


そして、与一を見て、その本願は成った。と感じた。


「そろそろ、こいつら相手だと物足りなくなってきたよね」

「おお!」

彼女は子供が飽きやすいことを知っている。

「ちょうどいい、対戦相手が温泉街にきているみたいだよ。一緒に遊んでおいで」

「ほんとか!」

そういって与一は風を巻いて温泉街に走っていった。


それをニコニコ顔で手をふる彼女。


「おい、また同じことの繰り返しになるぞ」

そこに眉をハの字にした資さんが現れた。


彼女はピクリと手を振るしぐさを止め、半眼で資さんを見た。

「教育なんだよね。教育。生き残る力を子に与えて何が悪いのさ」

「過剰すぎる。生き残るため? 狐火(ウィルオウィスプ)の群れを何度も全滅させる能力が必要か? そんな場面、人生のどこにあるんだよ。」

「……忘れたの? 私は軍勢に襲われたんだよね」

「……忘れたのか? 君は有能すぎたんだよ。…………玉藻」


静寂が訪れる。

この地は温泉地。硫黄の匂いがする場所。

硫黄の匂いが強くなった。



「……資さん、その名前をここで出すー? 誰かが聞いてるかわからんよね」

「……それを言うなら、お前も姿を現しなさんな。誰が見てるかわからん」


彼女-

いや、魔王 玉藻御前と資さんの間に火花が散る。


「まあねぇ、資さんがそんな失敗するわけないか。超~石橋を叩いて人生を歩いてるもんね」

「お前が不用意なのだ」

資さんは眉をハの字にして抗議した。


「不用意に有能さを見せるから……利用されるだけ、利用されて、才能を使い捨てされて……まるで消耗品のように捨てられ、挙句の果てに軍勢に攻められた! お前は、ただ、ただ、子を愛しただけだったのに」

そう言った資さんの目から雫が落ちた。


玉藻御前が大きく目をひらいて、ぱちくりした。

そしてにんまり笑い、資さんの肩に優しく触れる。

「資さん。あんたは優しいねぇ」

玉藻御前はそう言って資さんの耳元でささやく。

「揶揄うな」

資さんは困った顔をして玉藻御前をふりはらう。

「あん、もう真面目なんだからー。それはそうと資さんが気に病む必要なんかないんだよ」

「…………」

「私が力不足だけだったのさ」

「…………」

「だから与一にはね。そうなってほしくないんだよね」

「私もそう思っている」

「だから私はね。資さん、生き残る力をつけて欲しいと思っている。どんな困難があっても正面から打ち破る力をね」

「玉藻。それだとお前の二の前だ。人は有能な者を妬む。異物として遠ざける。利用するだけ利用して捨てる。有能だと消耗品とされる。有能でないほうが与一のためだ」

「なるほどねぇ。資さんごめんよ。私が不甲斐ないばかりにもともと曲がっていた性格が、ねじりにねじ曲がっちゃったね」

「ねじ曲がりもする。お前は半ば封印されて自由に出歩きもできないじゃないか」

「まあ、買い物に行く楽しみはなくなっちゃったかな。でもね資さん」

「ん?」

「私は資さんが思うほど自分が不幸だとは今は思ってないよ。ああ、当時は怒り狂ったさ。そこは正直に言うよ。でもね資さん。今は与一の成長を見届けることが出来る。資さんとこうやって駄弁ることもできる。意外とね今の環境に満足してるんだ。私」

「玉藻……」

「あとはね。与一に広い世間を見に行ってほしいかなって考えている。もう、ここで、これ以上、与一の能力を伸ばすことはできない。限界まできちゃった。あとは世の強者に出来るだけ会って互いに研鑽しあわないと……一人で強くなるのも限界があるからさ」

「それはそうだ。しかしだな。もう与一は十分強い。これ以上、強くなるよりも。使い捨てにされぬよう実力を隠す知恵の方が大事ではないか。それほど懸命にやらずとも上手く世を渡る知恵があればよいのではないか」

「資さん」

「ん?」

「与一は私とは違うよ」

「…………」

「あの子は本物の天才。世の不条理なんかものともしないよ」

そう言った玉藻御前の顔は執念を滲ませていた。

それは魔王らしく凄惨な顔だった。


【お知らせ】

こちらも連載中です。よろしければ見ていただけると嬉しいです

■機動小隊レンジャーワン https://ncode.syosetu.com/n8156lf/


【あとがき】

FPSが上手い人って格好いいですよねー。筆者は反射神経をつかうのは苦手です。

それはさておき、こんな作品でよろしければ、「面白かった」「続きが気になる」と思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。

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