第九話 よいちのゆみ その14
「そうか」
三浦達から事情を聞いた資さんは眉をハの字にした。
そしてため息をつくと
「つくづく武士は業が深い」
と嘆息した。
「上総」
しばしの間の後、資さんは上総を呼ぶ。
「なんだ」
「源頼朝とところにいくなら気をつけろ」
「あ? あんな小僧どうってことないだろ」
資さんは上総の態度を見て、内心ため息をついた。
上総は勇者なだけあって戦闘力が高い。特に剣の腕は天下一品だ。
そのことに上総自身、傲慢ともとれる自信をもっている。そしてその傲慢さが許される強さも持っている。
その分、相手を下に見る。
いつでも倒せる相手だと。
その傲慢さを資さんは心配していた。
天のめぐりあわせ次第では個人の武勇ではどうにもならない場合がある。
資さんはそのことを誰よりも知っている。
なにしろ魔王 玉藻御前も坂東の軍勢を退けるほどの屈指の武勇を誇ったが敗れたのだから。
三浦達から片岡家滅亡の話を聞いた資さんは源頼朝のことを一筋縄ではいかない相手だと警戒した。
そして上総の性格では何かトラブルが起きるのではないかと心配したのだ。
ただ、これ以上忠告しても上総が聞き入れないということも知っていた。
だから、資さんは三浦を見て
「頼んだぞ」
と言った。
三浦は情報分析に優れていた。
彼であればどのような状況であっても的確な判断ができるだろう。
「ああ、任せてくれ」
三浦は安心させるためか陰のない笑顔で応じた。
「ふん。面白くねぇ。行くぜ」
上総が席を立つ。
三浦と千葉も苦笑し、席を立った。
一人残った資さんは彼等3人が伝えてきたことを整理する。
特に印象に残ったのがクロウのことだ。
3人の話によると片岡春という魔王に囚われた少女を助けたという。
魔王を倒してだ。
普通、魔王に会ったらどうするだろうか?
逃げるのが当然ではないか?
それなのに魔王に挑んだ。その事実だけでも驚くに値する。
さらに魔王に勝ったという。
そういえば温泉郷で千葉と互角の戦いをしたと聞く。
千葉は多少変わっているところがある男だが勇者パーティの一員。実力は申し分ない。
その千葉と互角というだけでも相当な実力者ということがわかる。
そして率いるメンバーのこと
聞けばクロウは源頼朝の弟だという。
で、あれば目的は打倒覇王だと予測はつく。源頼朝、クロウの父は覇王と天下の覇権を争い敗れた。その子が再挑戦したいという気持ちはわかる。
そのために勢力を集めているのだろうということも予測がつく。
今、クロウが率いているメンバーはその勢力集めの一つの結果だろう。
普通はここで落とし穴にはまる。
ある程度の人員が揃うと気が大きくなり、また、集まったメンバーに飯を食わせる必要が発生し、その結果、村々を襲うのだ。つまり野盗に堕ちる。
話によればクロウの一党にそういうところはなかった。
腕試しで勇者達に挑んだやんちゃなところはあるようだが、それは魔王と戦うための実力をあげたいという動機であるらしい。
何しろ魔王を倒した勇者達だ。対魔王の修練の相手には最適だろう。
つまり強さに貪欲なだけだ。
資さんは元勇者パーティの一人だ。
そういう考えに理解がもてる。
自分達もそうだった時期があったからだ。
そういう意味では資さんも三浦も上総も千葉も領主なり王なりの立場を得ているが、性根・思考は為政者のものではなく、一介の戦士のものだ。
民に危害を加えようとする野盗とは別。
それどころか人のために魔王と戦える一団
クロウ達はそういう集団。資さんはそう思った。
有体に言えば資さんはクロウ一行に興味を持った。
そして、ちょっと心配になった。
「あの2人も興味持つだろうな」
そう呟いた資さんは眉がハの字になっていた。
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【あとがき】
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