第九話 よいちのゆみ その13
「今の話は本当か?」
三浦の説明に上総が驚き、声を上げた。
魔王を倒したことがあるということ
クロウが源頼朝の弟であること
片岡春の家が源頼朝によって滅ぼされたこと
クロウ一行が打倒覇王のため奥州大陸に向かっていること
これら三浦から得た情報の中で、彼らにとってもっとも重要なのが“片岡春の家が源頼朝によって滅ぼされた”という情報だ。
彼ら老いた3人の勇者は覇王よりも源頼朝を推そうと考えている。
それは覇王よりも源頼朝の方がマシではないかという考えからだ。
しかし源頼朝が家々を滅ぼす暴虐の王であるならば話は違ってくる。覇王の方がマシということになる。
そのため源頼朝による片岡家滅亡という情報は彼らにとって重要であった。
「ここで考えてもしかたない」
上総が腰をあげる。
「事実を確かめねばならん。そして……………………場合によっては斬る」
上総は剣を見つめ昏い目をした。
「斬るのは、確認してからにしてくださいよ」
三浦は上総に注意した。
「まあ、クロウ一行も野盗ではないとわかりましたから問題は無いよね……となると資さんはどうします?」
三浦の質問に上総は思案する。
彼らが那須にきた目的は資さんを誘うことだ。
源頼朝は、覇王に反旗を翻すべく、坂東平野の有力者たちへ声をかけていた。
当然、老いたとはいえ名高き勇者パーティである三浦、上総、千葉のもとにも誘いが届く。
三浦たちは源頼朝に応じることを決めた。
そして、かつて魔王戦で苦難をともにした盟友・資さんを誘うため、彼のいる那須温泉郷を訪れた。
しかし―
ここで本当に誘ってよいかどうかの懸念が出てきた。
源頼朝がどういう人物か先に確かめる必要がでてきた。
もっとも彼らは魔王に挑むほどに不遜であり傲慢でもある。
源頼朝が危険であれば倒せばよいと単純に考えていた。
ただし、その危険に資さんを巻き込むつもりはない。
巻き込むつもりは断じてない。
資さんは十分、地獄を見た。この世の地獄を。
もう、彼を世の乱れに巻き込むつもりはない。
資さん自身ももう世の乱れに関与する気がないのか、態度を保留していた。
三人の勇者はそのことを その理由を痛いほどわかっている。
彼を誘ったのは、俺たちが源頼朝の味方をするならば、源頼朝の勝利は確定。
その勝ったときに、勝ったほうの陣営に所属していたなら資さんも良い目を少しでもみられるだろうという思いからだ。
それで少しでも心が軽くなればと思ったからだ。
しかし、誘うことで逆に心が重くなるのであれば話が違ってくる。
「資さんを誘う話は保留しましょう。まずは源頼朝という人物を確かめてからだ。どうやら若年ではあるが裏表がありそうだということがわかったしね」
三浦の言葉に上総が頷く。
「そうだな。ある意味ではクロウ一行に出会ったのは天祐かもしれぬ。彼らと会わなければ、源頼朝をただの若造と軽くみていた」
上総が頷く。
「なら、資さんのところに挨拶に行こう。誘った手前、無断で帰るわけにはいかないからね。筋は通さなければならない」
三浦の言葉に上総は頷いた。
千葉は終始沈黙していた。
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【あとがき】
やっと三浦達が去りそうです。これで九話のメインである、クロウVS与一を書けるかな?
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