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剣と魔法の義経記  作者: 久手史郎
第一章 英雄集結
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第九話 よいちのゆみ その12

「一つ聞きたい」

三浦は質問をする。クロウも打倒覇王を目指すなら兄である源頼朝と手を組めばいいのではないかと思ったからだ。

いや、組むべきだ。

その方が単純に戦力が増える。覇王に勝てる確率があがる。

三浦はそう思い質問を口にした。


その三浦の視界に片岡春の姿が見えた。

(・・・いやぁ、無理だよな)

三浦は質問を飲み込んだ。


先ほどの片岡春の話を思い出す。

片岡春の家は源頼朝に滅ぼされたという。

その片岡春を守るように少年少女達が周りを囲んでいた。

片岡春やそれを守るグループがクロウ一党の中にいる。それならば源頼朝と手を組むのは難しいだろう。


そう思い三浦は質問を途中で変えた。


「打倒覇王ということだけど、どこか目当てがあるのかい?」

と三浦は尋ねた。


クロウ達がいくら強いと言っても、この人数で覇王に挑むほどバカではないだろう。

どこか目当てがあるはずだ。と考えた。


かの有名な三国志の蜀の国の帝となった劉備玄徳も関羽、張飛といった一騎当千の戦士はいたが流浪の根無し草時代は運命に流されるだけだった。劉備玄徳が飛躍したのは根無し草を脱してからだ。


クロウ達も打倒覇王という高みを目指すなら根無し草ではなく、何らかの勢力になる必要がある。

クロウもそのことを当然考えているだろうと三浦は考えた。

仮にクロウという男が阿呆で何も考えて無かったとしても、この目の前にいる吉次と言う男はそのことを考えているだろう。

僅かに話しただけであったが、そのことを感じさせる知性を三浦は吉次から感じた。

もっとも、黄金のマスクに黒タイツという奇妙な出で立ちの男からもっとも知性を感じられたというのは、それこそ奇妙な話ではあったが。


三浦が先ほどの質問をしたのは一つの懸念があったからだ。

源頼朝は坂東の勇者・戦士に声をかけ勢力をつくろうとしていた。

その坂東でクロウが勢力を築こうと考えていた場合、坂東が割れる可能性があった。


下手をすると打倒覇王の前に兄弟同士と戦いが発生し、互いに戦力を消耗する。

打倒覇王が不可能になる。

三浦達3勇者は源頼朝やクロウに何の思い入れもない。

が、朝廷を担ぐ覇王に対して含むものがある。そのため打倒覇王が不可能になる事態は困るのだ。


「そうですねぇ」

吉次は考えた。

吉次はクロウを奥州大陸につれていくことを考えている。

それはすでにクロウと打ち合わせ済み。

考えているのはそのことを三浦に伝えてよいかどうかだ。


(何はともあれ、クロウ殿の怪我を治すことを優先しますかねぇ)

吉次は千葉と戦っているクロウを見て思った。

戦いに仮定は存在しないが、仮にクロウが得意の―霧-の魔法を封じられてなければ、すでに勝負はついていたと吉次は思った。

その戦いを見て、様々な思惑で時を弄するよりも、クロウの治療を一番にと考えた。

つまり、正直に話すという選択をした。この方がクロウが素直に治療を受けることができる可能性が高い。

クロウが万全でないことに悔しい思いをしているのは吉次も同じだ。


「私達は奥州大陸を目指しております」

「奥州大陸か・・・遠いな。」

「ええ、ですが、そこが勢力を得るに最適と私達は判断しました」


その回答に三浦は考えた。

奥州大陸は坂東平野の北にある。

覇王のいる都からは遠い。

遠いという事は打倒覇王レースも不利だ。

少なくとも坂東平野で勢力を創ろうとしている源頼朝よりは距離で後れをとる。


改めてクロウ一行を見る。

(若いよな)

若いということはそれだけ時間があるということでもあるし、一人前になるに時間が必要ということでもある。


改めて吉次を見た。

(どうも、この人が描いた計画のようだけど、もしかしたら本気で覇王を倒すと考えては無いかも知れないな。じゃないと都から遠い奥州大陸を選択はしないだろう。どちらかというとクロウ殿を戦乱から逃がすことを考えているのかもしれないな。 それなら、これから本気で覇王と戦おうとしている源頼朝と接点はないかもしれないな)


そして戦っているクロウをあらためて見る。


(身のこなしはいい。そして先ほどの少女の話では魔王と戦う胆力と実力。そして憐憫の情を備えている。彼らを覇王と戦う者としてではなく、魔王と戦う勇者の後継者と考えるのも悪くはないかもしれない)


そう思った三浦は二組の戦いをあらためて見た。

二組の戦は百日手のような長期戦の様相を見せていた。


上総はさすが剣の勇者だ。剣技では皆鶴姫を上回っていた。しかし、皆鶴姫は魔法で10人の自分を作り出し、10対1の状況をつくりだしていた。技では上総が有利。数では皆鶴姫が有利。そのため膠着していた。


もう一方の戦は奇妙だった。

千葉が素早く間合いを詰める。クロウは難なく躱す。その後、魔法剣を飛ばし、遠距離攻撃を敢行するが、クロウ得意の―霧-の魔法ではない。

―霧-ならば雨のようなレーザー照射での面攻撃で防ぐ、躱すことが不能だが、今のクロウは一筋のレーザーを飛ばすのがやっとだ。

千葉に余裕で躱される。

互いに敵の攻撃は余裕で躱す。しかしこちらからの攻撃は余裕で躱される。

この繰り返しだった。


「おーい。上総! 千葉ぁ! 楽しむのはいいけど、ちょっと休憩しようぜ」

三浦はその戦いに水入りの声をかけた。


【お知らせ】

こちらも連載中です。よろしければ見ていただけると嬉しいです

■機動小隊レンジャーワン https://ncode.syosetu.com/n8156lf/


【あとがき】

那須と言えばゆでもちだと思っている筆者です。シンプルな味が好き。

本作品にゆでもち出したら時代感ぶっとぶかなと悩んでおります。本作品に関しては今更感がありますが・・・

こんな作品ですが、「面白かった」「続きが気になる」と思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。

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