第八話 クエスト:半端なヒーロー その17
長かった8話も今回で終わりです。
・・・本当に長かった・・・
「阿呆っ!」
覇王の鉄拳が飛んだ。
甥っ子の平敦盛がふっとんだ。
軽量の敦盛は襖まで飛ばされ、盛大に襖が破壊された。
敦盛の端正が顔が拳大に歪んでいる。
「女に現を抜かし何をやっとるか!」
覇王の怒りが敦盛を襲う。
敦盛は言葉にならない言葉を吐くしかできない。
「父上、おやめください」
と覇王を嗜めたのは覇王の子 知盛だ。
彼は戦術・戦略の両面に通じ実質的に陰で平家を動かしていると言われている男だ。
覇王も彼のいうことは聞く。
彼は拳を収めた。
その代わり
「女一人を拐すために護法童子を動かす? 野盗の真似事のことをさせるために護法童子がいるのではないわ! 恥を知れ!」
と吐き捨てた。
敦盛は有体に言えば皆鶴姫に一目ぼれした。
一目ぼれした理由は本人にも不明。一目ぼれとはそんなものだろう。
再アタックしようと考えたが、すでに皆鶴姫は都にはいなかった。
調べたところ坂東平野に行ったらしい。
坂東に皆鶴姫の知り合いである陵介がいることも調査済みだ。
彼は皆鶴姫が陵介の元に行ったと推測した。
(俺というものがいながら他の男に走ったのだな)
敦盛は勝手にプライドを傷つけられ勝手に苦々しく思った。
そこで彼は護法童子の小竹と青葉を陵介の元に向かわせた。
小竹と青葉は覇王から譲り受けた護法童子だ。
普段、笛に宿っていおり、色男の敦盛にちょうどよいだろうと覇王が贈与した。
目的はボディーガードだ。
そのボディーガードを使って、他所の女性を拉致しようと考えるとは覇王も想定外だ。
だからこそ激怒した。
「父上、おやめください」
再び、知盛が静かに窘めた。
覇王がギロリと知盛を睨む。
彼が息子でなければ「だってよー。コイツ阿呆なんだよ」と言っていた。
辛うじて父の威厳を優先させ睨むだけに留めた。
「敦盛がやったことは平家の風上にも置けぬ。下らぬ。下衆な。破廉恥な。阿呆な。変態行為ではありますが」
「ちょっと待て」
「何か?」
「お前も怒ってないか?」
「当然でしょう」
知盛はしれっと答えた。
覇王は知盛の無表情に少し恐怖を覚えた。
表に出さない怒りほど怖いという種類のものだ。
同時に頭が冷えた。
他人の怒りを見ると冷静になるという類のものだ。
「話を戻しますよ」
「ああ」
「敦盛がやったことは人とは思えぬ。全ての女性を敵に回す蛮行ではありますが、一つだけ手柄をたてました」
「手柄だと?」
「源氏の棟梁の子、クロウ。彼が坂東平野にいるという情報を得たという事です」
知盛の言葉に覇王は目を細める。
「クロウ。彼は父上の温情で生かされました。その恩を忘れず大人しくしているのであれば問題ないですが先日、我らの移動を妨害しております。さらに都を脱出し坂東平野に向かった。これは流罪として坂東平野に追いやったクロウの兄、源頼朝とともに謀反を考えている可能性が高い」
知盛の弁に清盛は無反応だ。
ただ、ただ目を細くした。
「敦盛の情報でクロウの居場所はある程度、解ります。早期に反乱の目を摘むべきでしょう」
知盛は静かに、覇王に進言した。
覇王はその進言に対し「はい」を選ばなかった。
「はい」の代わりに覇王は息子に声をかけた。
「なあ、知」
「俺は天下をとった」
「はい」
「その天下。皆が納得していると思うか?」
「それは……」
「しとらんよ。坂東平野。信州、甲斐、越国、九州、四国、奥州大陸。都から出れば俺の天下を認めていない奴らばかりだ。頭のいいお前のことだ分かっているだろう?」
覇王のこの問いに知盛は当惑し、言葉を失った。
真実は父の言うとおりなのだ。しかし、それを告げていいかどうかは別の話だ。
「答えにくいか」
覇王はそういってガハハと笑った。
「つまり、俺達の天下は言ってみればハリボテよ。ちょっとしたことで崩れる。俺の読みでは俺が死んだあと荒れる。では、俺の死後も平家の世が続くようにするにはどうしたらよい?」
知盛は考えた。
「反乱より従っていたほうがよいという制度を作るのはいかがでしょう? 地方に役職と役割を与え、それに伴う収入を得るように制度をつくり、収入を安定させるのです。収入が安定すれば反乱する意味がなくなります」
「ふむ」
覇王から良い反応がない。
知盛は再び考えた。
「帝との結びつきを強化するのはいかがでしょう? 反乱即ち、正義となる余地を消すのです。反乱即ち逆賊となれば、反乱がおきても大勢力にはならないでしょう。誰も逆賊にはなりたくないでしょうから。小規模であれば簡単に叩き潰せます」
「ふむ」
覇王の表情が曇った。
覇王の考えとは違うらしい。
知盛は三度考えた。
「戦術面の話になりますが各勢力の分断を図るのはいかがでしょう? 寺社には経済特権を認め、地方領主には支配権を認めて同盟化を行う、または婚姻という方法もあるでしょう。そのようにして敵を減らし、反乱が発生しても小規模とする」
覇王が手を振った。
「もうよい。なあ、知」
「はい」
「反乱を起こしたら損だと思わせる。その方向性はあっている。あとはやり方だな」
「やり方ですか? 父上の考えをご教授願えますか?」
「うむ。反乱を起こさせ、それを叩き潰す。そうすれば絶対に平家には勝てないと理解するだろう」
覇王の言葉を聞いた知盛は
(覇道)
と内心思ったが口にはしない。
チラリと無様に床に転がっている敦盛を見る。変に逆らってあのようにはなりたくはない。
「それにはあの源氏の子らはちょうどいい。勝手に反乱分子を集めてくれるだろう。一つ一つ潰すのは手間だ。それにチマチマ潰しては絶対に勝てぬという絶望感を与えることはできぬからな……知よ」
「はっ」
「自分達の時代は自分達でつくれ。反乱を起こした源氏の子に後れを取るなよ」
覇王はそう息子に言った。
同時に覇王は別なことを考えていた。
(あの覇王になると言った小僧がついに動いたか。さあ、お前の目指す先はここだ。俺を超えることが出来るかな)
難易度ノーマルに倦んでいた覇王はハードモードを欲していた。
そのついでに覇王である自分にむかって「覇王になる」といったクロウの気概を同じ武人として愛した。若人と武を競いたいと思った。
覇王はどこまでも武力の使途であり、自ら作った仮初の平和よりも知略・武力などもてる能力を総動員し、自ら陶酔することが出来る戦を欲していた。
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【感謝】
この第8話、早期に片岡春を仲間に入れたかったので、時系列を入れ替えました。
正直、片岡家が所領没収されたの時期違うよねとご指摘を受けるかなとドキドキしながら書いた第8話だったのですが、ありがたいことにそのような事はなく、優しい読者の方に読んでいただき感謝いたします。
また、本作はエンターテインメント優先で時系列変える場合がありますが、それも含めて楽しんでいただけると嬉しいです。
ドキドキしながら書いた本作品にブックマークや評価で応援いただけると嬉しいです。




