第八話 クエスト:半端なヒーロー その16
「吉次殿」
クロウが吉次を読んだ。
傍若無人無礼千万のクロウだが吉次を呼ぶときは“殿”をつける。
吉次は“情報”“経済”“隠密”といったクロウが出来ないことができた。それが彼なりの尊称を使う理由だ。
「どうしました?」
「世に明るい吉次殿に聞きたいことがある」
クロウは言った。
吉次はその言葉に内心喜んだ。彼の夢はキングメーカーだ。
キングに据えようとしている人物から頼りにされる。
キングメーカー冥利に尽きるのだ。
「なんなりと」
「俺の兄、頼朝についてだ」
「どういうことを聞きたいので?」
「片岡兄妹が奴隷落ちした原因が頼朝だという。何か情報を得ているか?」
「そうですねぇ」
吉次は思案を巡らす。もちろん情報は得ている。
彼が思案しているのは、どうクロウに伝えるかだ。
「片岡兄妹の父親は真面目過ぎたようですねぇ」
「どういうことだ」
「頼朝殿は覇王と戦おうと考えております。クロウ殿と同じですな」
「男としてそれは当然だ」
クロウは頷く。
「覇王と戦うとなると一人では難しい。戦力を得る必要があります」
クロウは吉次の説明に頷く。
自分も勢力を得ようと奥州大陸に向かっている。
その考えは理解できる。
「そこで頼朝殿は坂東の高名な方々に声をかけているようですねぇ」
「だろうな」
「その中に片岡家もあったようです。しかし、片岡家はマジメだったんですねぇ。逆に頼朝の使者を逮捕したようですねぇ」
「それでか」
クロウの顔がゆがむ
「ええ、それで頼朝殿は危険とみて片岡家を排除したようですねぇ」
クロウは考え込んだ。
兄、頼朝の行動理由はわかった。
勢力を伸ばすのも当然。敵対勢力を事前に潰すのも当然。
だが、それで少年達が路頭に迷う、奴隷になるのは……
「違う!」
とクロウの心の中の何かが叫んでいた。
クロウの中の戦いとは武士・戦士がそれぞれの技量・戦術を競い合うものだ。
少年少女を困らせる事ではない。
クロウは思案している。
吉次はそんなクロウを見て仮面の奥で笑みを浮かべた。
(この方はどんな覇王を目指すのかねぇ。ちょっと前までは覇王になるということが目的のようだったけど。最近は覇王になった後の事も考え始めている。いい傾向だねぇ。そのためにもよく考えて、考え抜いてくれたらうれしいねぇ)
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