第八話 クエスト:半端なヒーロー その14
吉次にとってクロウは夢を賭けた投資対象だ。
せっかくBETしたのに早々に滅んでもらっては困るのだ。
今、クロウは奥州大陸に行って力を蓄える必要があると吉次は考えている。
力を得る前に変な事件に巻き込まれ倒されるのは困るのだ。
「どんな話になっている?」
クロウが尋ねた。
静も皆鶴姫も聞き耳を立てた。
「坂東の暴れん坊陵介が敦盛様執心の姫を捕えようとして、逆に館を燃やされ逃げられた。陵介と言う男も普段は傍若無人だけど女一人に逃げられるとは大した奴じゃないねぇって話になったますねぇ。違うんですかねぇ?」
吉次が探るような目でクロウ達を見る。
「……陵介殿っ……」
皆鶴姫が悔しそうな顔をしていた。
いろいろあったが陵介は皆鶴姫を庇ったのだ。その陵介が不当な評価を何も事情を知らない他者から評論家のように悪し様に言われるのは腹が立った。彼の武士の誇りを傷つけられて悔しかった。自分が原因だと思うと情けなくて泣きたい気持ちになった。
静はそっと、震える皆鶴姫の肩を抱いた。
クロウは目をつぶった。
その後、目を開き
「そうか」とだけ言った。
「クロウ殿! 陵介殿はっ……」
「男が決めたことだ」
皆鶴姫が感情を口にしようとした。
それをクロウがやめさせた。
クロウの拳は強く、強く握られていた。
「それなら、私達のことは平家に知られていないってことのいいのかしら?」
静が吉次に質問した。クロウと皆鶴姫の様子を見て話題を変えたほうがよいと判断したのだ。
吉次も様子を見て静の質問に答えたほうが良いだろうと判断。
(何があったのです?)という質問を飲み込んで静の問いに答えることにした。
ただ、ちょっよ探りは入れたいとは思った。彼は商人だ。情報が生命線と考える人種だ。
「どうでしょうねぇ。世間では上司の命令で女を拐かそうとしたら逆に館を焼失した。その後、女の行方は不明ということになっていますがねぇ」
そう言って吉次はクロウ達の様子をうかがう。
静は多少挑発的な吉次の言葉に眉を顰めた。
静には吉次の狙いがわかっていた。挑発してクロウなり皆鶴姫が感情に任せて発言することを狙っているのだろう。それで情報を得ようとしているのだ。
(後でちゃんと説明するから今はやめてもらえないかな。伊勢三郎一党や片岡兄妹一党もいるんだからさ)
静はそう思い、クロウや皆鶴姫が不用意な発言をする前に口を開く。
「世間一般では? 実際は違うという事?」
吉次は肩を揺すった。黄金のマスクで傍目にはわからないが苦笑したのだ。
「動きが派手ですからねぇ。実際に私はクロウ殿の居場所は簡単にわかりましたしねぇ。調べようと思えば簡単に居場所ぐらいは調べられるのではないでしょうかねぇ」
吉次はそう言った。
「俺もそう思う。クロウ殿の動きは調べればわかる」
ここで駿河も吉次の意見に同調した。
実際にクロウ殿がここを通るという情報を駿河は得ていた。
クロウは吉次と駿河を見て不敵に笑った。
「有名人のつらいところだな。そんで吉次殿。話を戻そう。こいつらの動向は問題ないだろ?」
「もちろんです。この旅はクロウ殿が勢力をつけるための旅。仲間が増えるのは問題ないですなぁ。今更、なぜ、そのような質問を?」
「そこに心配性の奴がいてな。俺達がこいつらを食わせていけるか心配なんだとよ」
クロウは伊勢三郎に視線を移す。
吉次は伊勢三郎を見た。値踏みするかのように。
「それは商人に対する私への侮辱ですかねぇ。食わせる? そんなのは全く問題ないですねぇ。なんなら全員分の武具一式を揃えましょうか?」
吉次は薄く笑った
(相変わらず好戦的な商人だ。まあ、そうでなきゃ覇王になるっていうクロウの味方にならないか。)
静は内心ため息をつく。
こういう時に吉次の黄金の仮面は威力を発揮する。
説得力があるのだ。
少なくとも、その黄金のマスクを売ればここにいる全員、一生食うに困らない生活ができるだろう。
「納得したか?」
クロウは伊勢三郎に尋ねた。
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