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剣と魔法の義経記  作者: 久手史郎
第一章 英雄集結
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第三話 選択イベント:暴走をとめろ その1

クロウ、陵介は新たなスキルを得てご満悦だ。


特に陵介は火の魔法を得たことでクロウや静と並ぶことが出来ると喜んでいた。

陵介は同年代の子に比べて確かに強いが、それは普通の強さの範囲にとどまっていた。

とてもクロウや静と肩を並べる戦闘力はない。


陵介はその原因を魔法の有無と考えていた。


クロウには源氏の固有魔法 八幡神の加護がある。

静にはおかめ神の降神魔法がある。


陵介には腕っぷしはあったが魔法は無かった。

密かに悔しい思いをしていた。


しかし、今回、虎の巻を使用し火魔法を手に入れた。

もちろん、火魔法を手に入れたばかりだ。

何の鍛錬もしていない

それですぐにクロウや静と肩を並べることができると考えるほど陵介は楽天家ではない。

しかし、努力次第で肩を並べることができるとは考えていた。


それは手に入れた魔法が思いのほか協力であったからだ。


「オン・ケンダヤ・ソワカ」

陵介は魔法を唱える。

体が魔法の炎に包まれる。

攻防一体の炎の鎧だ。攻撃してきた相手を炎に包み、こちらから攻撃しても敵を炎につつむ。

もちろん術者の陵介にダメージは入らない。

更には能力向上の効果もある。

特に脚力。

この炎の鎧をまとっている間は人間離れした機動力を発揮できた。

クロウの剣も静の魔法も当たらなければどうということはないと陵介は考えた。そのため魔法の訓練に精を出していた。

まさに新たな玩具を手に入れた少年だ。


一方、複雑な気持ちなのは静だ。

といっても虎の巻で得た新たな力に不満はない。

不満というより、どこか複雑な気持ちになっているのは、城からついてきた一人の人物の存在が理由だった。


その人物の名は皆鶴姫という。

元々は孤児だ。


その境遇を憐れんだ魔王クマラに拾われた。

魔王クマラは、皆鶴姫という名を与え、護法童子である鬼一法眼に養育を命じた。


鬼一法眼は正直当惑した。

専門はガードマンと剣だ。

どちらも養育には向いていない。


しかし護法童子として主の指示には逆らえない。

致し方なく皆鶴姫を育てることにした。


人を育てるには魔王城やその周辺の鞍馬山は不適切だ。

なにしろモンスターしかいない。

そう考えた鬼一方眼は皆鶴姫のために都に家を借りた。

もっとも、鬼一方眼に教えることが出来たのは和歌でも裁縫でもなく剣のみであった。


その皆鶴姫は、クロウが魔王城へ挑んだ折に、養父や魔王クマラに会うため同じく魔王城に来ていた。そこで彼女は信じられないものを見た。


養父 鬼一法眼が負けたのだ。

それも自分と年端がそう変わらない相手にだ。


皆鶴姫にとっては衝撃的な出来事だ。

鬼一法眼は不器用な養父ではあったが剣の腕だけは一流だった。

誰かに負けるとは考えられなかった。

その養父が負けた。


皆鶴姫は養父に勝ったクロウに興味を持った。

そしてクロウ達に同行することを願った。


鬼一方眼は我が子可愛さに渋ったが、魔王クマラは逆に喜んだ。

魔王クマラは皆鶴姫の正常な発達には同年代の友人が必要だと考えていた。

だからクロウに同行するのは大賛成だった。


そのためクロウに皆鶴姫を同行させるメリットを伝えた。

「皆鶴姫は鬼一方眼の剣技を受け継いでいる。君の良い剣の練習相手になるだろう。それに都にも興味ないかい? 都に彼女の家がある。都の宿として自由に使うと良い」


両方ともクロウにとって魅力的な申し出だった。


クロウには向上心がある。

なにしろ目標は天下の覇王だ。現代風に言えば全国制覇だ。


彼が覇王を意識したのはいつのころか。

クロウは時の覇王 平清盛と天下を争った源氏の棟梁の子だ。

父は破れ、クロウは言ってみれば捕虜だ。

しかし、ライバルの子ということで覇王はクロウを粗略には扱わなかった。


それどころか、いつかの閲兵式の時、幼いクロウを高く抱え

「見ろ、覇王となれば全てが手に入る」と言った。

覇王はライバルの遺児に、己が全権力を見せて反乱の目を摘もうとしたのかもしれない。


クロウは覇王の言った「全てが手に入る」という言葉だけが心に残った。

当時は幼いためうまく言語化できないが、母の愛も覇王になれば手に入れることができると思った。


いつしか、その目的のために覇王に成るというのがクロウの目指すところになった。

外来の魔王クマラに怨念の魔王崇徳天が敷いた運命を外してもらってから、その傾向は顕著になった。


その目指すところにむかうために鍛錬の必要性を感じていた。

しかし肝心の練習相手がいなかった。


陵介は一般人レベルでは確かに強いが、クロウの練習相手には実力が不足していた。

静は魔法使いなので剣の練習相手にならない。

戦士と魔法使いの勝敗はスピードできまる。

戦士が魔法発動前に魔法使いを斬るか、魔法使いが接近前に魔法を当てるか。

これだけだ。

技術の鍛錬という目的からは遠すぎた。


鬼一方眼の剣技を受け継いでいる人物であれば練習相手に申し分ない。

ようやく練習相手に巡り合えた。

クロウは喜んだ。


また、皆鶴姫の都の住まいを使用してもよいというのも魅力的だ。

クロウや静の住む鞍馬山は自然が溢れすぎていた。

モンスターもでる。

ご近所さんは魔王だ。


クロウも若人だ。

都への憧れはある。


一応、幼子の頃、常盤と一緒に都にはいた。

敗残の将の家族として。

当然自由はない。都の街も見ることは叶わない。


だからこそ一目見たいと思った。

自分が憧れる覇王 平清盛が治める都がどういうものかも知りたかった。


だから魔王クマラから提案された皆鶴姫をパーティに入れてほしいという申し出を喜んで受けた。


今もクロウは皆鶴姫と剣を打ち合っている。

鬼一法眼の指導を受けたというのは本物らしい。

剣だけであればクロウと互角だ。


ルックスも魅力的だ。

ポニーテールに結った黒髪が剣を振るうたびに流れた。

その容姿は姫武者を絵に描いたようだ。


その皆鶴姫がきてから静は複雑な気持ちを抱いていた。

クロウは今まで、何をするにも静を頼っていた。

それが当たり前だった。


その当たり前が皆鶴姫の出現で崩れた。

少なくとも剣の相談は静ではなく皆鶴姫にするようになった。


静の理性ではそれは必要なことだと認めている。

静ではクロウの剣の相手はできない。


だからこそ静の心は揺れた。



【モデル紹介】

■幸寿前

本作の皆鶴姫のモデル


超人的な力をもたらす秘宝『六韜』を欲した源義経は所有者の鬼一法眼にお願いしたが断られたため、娘の幸寿前に接近。口説き落として「六韜」を手に入れた。義経のプレイボーイが発揮された逸話に登場。


本作では義経記記載の幸寿前ではなく、各地に伝説、伝承が多い皆鶴姫の名前を採用


【お知らせ】

こちらも連載中です。よろしければ見ていただけると嬉しいです

■機動小隊レンジャーワン https://ncode.syosetu.com/n8156lf/


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