第八話 クエスト:半端なヒーロー その12
「意味が分からない」
片岡春が大きな目をさらに大きくする。
片岡八郎が春の疑問を捕捉する。
「俺達はクロウさんを襲った。それなのに一緒に来いとは?」
「お前らが俺を襲ったのは俺が仇である源頼朝の弟と言う理由だよな」
クロウの問いに片岡兄妹が頷く。
「それは正しい知識をもった判断と言えるか? 兄弟だからと言って同じ勢力とは限らない。もしかしたら俺と頼朝は敵対勢力かもしれない。敵対勢力ではなくても別勢力かもしれない。その可能性を考えたことはあるか?」
片岡兄妹は互いに視線を交わした後、
「ない。兄弟だから同じだろうと考えた」
片岡八郎が言った。
(そうだよな。この兄妹は仲がいい。 であれば他の兄弟も仲が良いと考えるのも当然だろう)
クロウはそう思った。
残念ながらクロウの兄弟は違う。
仲が良いどころか、会ったことすらない。
他の兄弟がやったことについて問われても、実感としては赤の他人がやったことと変わらない。
「だろうな。それは正しい判断と言えないよな。それはわかるな?」
クロウの問いに片岡兄妹が頷いた。
出会ったときと比べて素直な反応にクロウは苦笑した。
崇徳天という常識からかけ離れた現象である魔王が現れショックで恨みつらみが吹き飛んでしまったからなのか、それとも魔王との縁が斬られた所為なのかはクロウにはわからない。
「お前らには知識を得る必要があるんじゃねぇかと思った。そんでここに教えたがり魔がいる。お前らにはちょうどいいだろう。それにな」
「俺は出会いに恵まれているらしい。親がいなくとも静がいた。家族のぬくもりを与えてくれる奴がいたらしい。癪だけどな」
クロウはそう言ってちらりと静を見た。
静はあっかんべーをしている。
クロウはその挑発に対抗しようと思ったが、片岡兄妹との話の途中だったと思い返してやめた。後で覚えてろとは思っていたが。
クロウは片岡兄妹に視線を戻す。
「しかし、お前らは違う。親がいなくなった途端、奴隷だ。親の代わりにぬくもりを与えてくれる人に恵まれなかった。後ろのお前らもそうじゃないか?」
片岡兄妹、そして片岡兄妹に協力した少年少女が俯く。
唇をかみしめている者もいた。すすり泣く音も聞こえた。
奴隷落ちしてからの、人ではなくモノとして扱われてからのことを思いだしたようだ。
伊勢三郎パーティも奴隷からは助けてくれたが「食わせていくことができない」という課題があった。
そして先ほどの駿河の発言から伊勢三郎一党が自分たちを荷厄介として持て余しているということもわかった。
天神様の言うぬくもりを与えてくれる存在とは違った。
「だからな。これからは少しは幸せになってもいいんじゃないかと思った。俺達がお前たちにぬくもりを与えることができる存在に成れるかどうかはわからん。ただ、俺達は奥州大陸に向かって旅をしている。その中でそういう出会いにあうかもしれん」
クロウは一言一言考えながら自分の考えを伝えた。
片岡兄妹は互いに見合った。そして片岡八郎が疑問を伝える。
「俺たちが再び襲うと思わないのか?」
クロウは首を傾げた後、
「いい稽古になる」
とだけ言った。
それに反応したのは片岡春だ。
「アタシ達じゃ、相手にならないってこと」
大きな目でクロウを睨む。
「今の状況見てみろよ」
クロウがツッコんだ。
片岡兄妹と二人に付き従った少年少女はクロウ達に負けて捕らわれていた。
”相手にならない”というのが客観的にわかる状況だ。
片岡春が顔を真っ赤にしてプルプル震えている。
「今に見てろ!」
と吠えた。
クロウは一瞬、目を丸くしたが、にやりと笑って。
「コテンパンにしてやる」
と応じた。
新しい玩具をみつけたかのような笑みを浮かべている。
ここで静が手を打った。
「ハイ、ハイ。ここまで」
そう言って静は片岡兄妹と付き従った少年少女を開放していく。
皆鶴姫も手伝った。
もう、襲ってくることはないという判断からだ。
「いい、あいつが苛めたら言ってね。お姉ちゃんが何とかするから」
静はそのように言って片岡兄妹を含めた少年少女にむかってふんぞり返った。
(苛めるってなんだよっ)
クロウは静のセリフにツッコもうと思ったが……やめた。
とりあえず片岡兄妹の方は片が付いたと思ったからだ。
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