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剣と魔法の義経記  作者: 久手史郎
第一章 英雄集結
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第八話 クエスト:半端なヒーロー その1

クロウは難しい顔をしていた。


”覇王になる”


これがクロウの目標だ。

自分の父親を倒し、天下の覇王となった平清盛。

彼にクロウは憧れた。


憧れたきっかけはあまりにも幼少の頃だたから忘れた。

ただ、覚えているのは3つ。


一つ目は亡き父のこと

会ったこともない亡き父が皆に馬鹿にされていた。

敗軍の将だからだ。

その子のクロウも同様だ。

亡き父は今の覇王 平清盛と覇王を賭けて戦い敗れた。

覇王に成れなかったら惨めだと実体感した。


二つ目は母のこと

母は親としての愛情をクロウに注がなかった。

かわりに常にクロウに「父の仇をとれ」「復讐しろ」と呪いの言葉を子守歌代わりに聞かせた。残念のことにクロウは復讐といった陰鬱とした語感を嫌う性質の子だった。

だから「復讐」ということには興味は覚えなかったが、ただ、覇王に成れなかった親の子は「愛情」を受けられないと子供ながらに体感し、何かしら常に心に大きな穴が空いているような感覚に囚われた。

1行でその心情を表すなら、覇王に成れなかったら「家族の愛を受けられない」と知り寂しく思った。



三つ目は覇王 平清盛のこと

クロウは覇王にあったことがある。

今思えば敗者の遺児として捕虜として会ったのだろう。

その時、幼いクロウを抱き上げて覇王はこういった。

「うぬの父は好敵手であった。うぬも武士の子。親に負けないように精進するがいい」と野太い声で言い、そのごつごつした大きな手で優しくクロウを撫でた。

家族の愛を受けずに育ったクロウにとって、覇王から向けられた期待の言葉。不器用にも優しくなでてくれた愛情は何かしら常に心に大きな穴が空いているような感覚に囚われている彼にとって心に染み渡たった。

思えばこれがクロウが覇王を目指したきっかけかもしれない。


ともかく


”覇王”とはクロウにとって憧れのヒーローだ。


しかし


クロウが憧れた覇王 平清盛はスラムの子を放置していた。

これはクロウにとってショックだった。


都に行ったとき、クロウは静を伴っていろいろ回っていた。

あの覇王平清盛が治める都だ。

さぞ素晴らしいだろう。と思ったからだ。


ところがだ。

実態は違った。


メイン通りから少し離れるとスラムがあり。

そこには飢えた子供がたくさんいた。

平清盛とクロウの父が戦った戦で生まれた戦災孤児だ。

平清盛の治世の所為だけとはいいきれない事情はあった。

クロウはそこまでの事情は知らない。

ただ、覇王平清盛の治める都に憧憬を持っていたクロウはショックを覚えた。

「覇王の都ならもっと万人が幸せに暮らしているのではないか?」

そのクロウが勝手に抱いていた憧れにヒビが入った。


極めつけは覇王の一族。平家の態度だ。こともあろうに権力を行使し皆鶴姫をモノでも扱うかのように攫おうとした。


(これが覇王の都か)

クロウは怒りを覚えた。


また、野盗としては大勢力を持ち、覇王となる野心をいだいていた熊坂長範ともクロウは出会った。

実は少し興味があった。

熊坂長範が覇王を目指していたからだ。

自分と同じ土俵に立つライバル出現かと思った。


しかし、失望した。

女をモノ扱いし、略奪OKというスタンスだったからだ。


覇を唱えようとする輩に、碌な奴はいない。クロウはそう感じ、ショックを覚えていた。

覇王という言葉にヒーローの憧憬を抱いていたから猶更だ。



陵介の件もそうだ。


覇王の一族である平家は皆鶴姫を得るために、陵介に捕えさせようとした。

これは皆鶴姫を”モノ”扱いしていることだ。

クロウはそう考えた。


また、陵介に対して平家は暗に家族を人質にした。

そして、陵介に皆鶴姫を捕えさせようとした

その点もクロウは気に食わない。


そうとうイライラが表に出ていたのか、静がクロウの頬をプニプニして遊んでいる。

「何をしやがる」

「難しい顔をしてるからさ」

「フン」


その様子をみて皆鶴姫がおろおろしていた。


現在、クロウ達は吉次と合流するために道を北へ歩いていた。


もっとも陵介の件があるので、いつ追手が来るかわからない。

何しろ、表向きは平家の命令で皆鶴姫を捕えようとして陵介を返り討ちにし、陵介の館をその戦いで全焼させたのだ。

現代に置き換えれば警官をぶん殴って、役所を燃やしたようなものだ。

お尋ね者となるには十分だ。


そのため大通りは進まず、もっぱら獣道のような裏街道を進んでいた。


そして裏街道を進めば……野盗とエンカウントする。

野盗とはある意味ファンタジー世界のゴブリンと一緒だ。

旅人を見れば襲い。村を襲い。食料を奪い。女を凌辱し、弱いとみれば襲い掛かり、強いとみれば逃げる。時に武装し、一人では雑魚だが、集団になると脅威となる。

それが盗賊だ。ゴブリンとなんら変わらない。

人かモンスターかの違いだけだ。

野盗と書いてゴブリンと呼ぶ。というのが実態だ。


静と皆鶴姫はウンザリした顔をした。

「はぁ。確かに美少女二人に男一人。野盗からすると恰好の獲物なんだろうけどね」

静はため息をつく。


「お前。スゲーな」

クロウが驚いた声をあげた。

「え? 何が?」

「自分の事を美少女と言い切る奴を始めて見た」

「そこはホラ。事実は事実として伝えないと」

「スゲー。自信だな」


クロウは静の自信に感心しつつ野盗を見る。


今回の野盗は10人程度だ。

この程度、人数ならクロウ一人で十分だ。

クロウは苛々の発散場所を得たとばかりに獰猛な笑みを浮かべた。


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