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剣と魔法の義経記  作者: 久手史郎
第一章 英雄集結
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第七話 炎の剣 その2

陵介再登場です

陵介は己を鍛えなおすため地元に戻った。


地元は強兵で知られる坂東の地だ。

あのまま都にいるよりも修練にはよい。クロウの実力に追いつける


と考え陵介は地元に戻った。


ところがその陵介の思惑は外れた。


坂東の戦士は強い。

ただ、陵介がいくつか修練のため模擬試合をやってみた感想ではあるが、あくまで人の強さの範疇だった。


陵介はクロウとともにしていたとき、人を超えた強さを目の当たりにしてきた。

そもそもクロウ達と過ごした場所が魔王の住処 鞍馬山だ。

魔物もいる。そしてその魔物を普通に倒す戦士もいる。

坂東の戦士は強いことは強いが、魔境の魔物と比べると人の強さに留まった。


もう一つ陵介の思惑が外れたことがある。

坂東の戦士の強さは“人としての強かさ”であり純粋な戦闘力ではないということを思い知らされた。


坂東の戦士は名誉を重んじる。徹底した功利主義だ。

正攻法の戦いに勝てなくても奇襲夜襲などあらゆる方法で勝ちを獲りに行く。

例え試合に勝ったとしても、その帰路、襲撃に会い命を落とせば、死人に口なし。あとで襲撃した側が“試合に勝った”と主張すれば名誉は守られるのだ。

坂東の戦士はそういった“人としての恐ろしさ”と“人の強かさ”があった。


陵介は修練のため近隣の腕自慢と試合したが、何度、試合以外での命の危険にさらされたかわからない。負けた相手が帰路襲撃してくるのだ。

「これも修練だ」と思って対応しなければ心まで腐りそうだった。


(こんな時、クロウならどうしたかな?)

陵介は思う。

(考えるまでもないか。歯牙にもかけなかっただろうな)

クロウの強さを知っている陵介はそう思い、クククと笑った。


クロウ関係といえば陵介には困ったことがある。

陵介は自分が納得のいく修練が終わったらクロウのもとへ戻るつもりだった。


ところがその希望を叶えるのは難しいようだ。


陵介のというよりも坂東の事情による。


坂東は都から離れている。

そのため坂東を含めた東国の領主や将達が覇王平清盛に対して挙兵しそうだという雰囲気を肌で感じていた。


そのような情勢で各領主が考えなければないけないのは身の振り方だ。

もっと具体的に書けば「平家に味方するか?」「反平家に味方するか?」「日和見するか?」「独立勢力となるか?」と4択だ。


特に「平家に味方する」「反平家に味方する」と決めた領主は多い。

「反平家に味方する」と決めた領主は旗頭になりそうな源頼朝や甲斐の武田に接近していた。

同時に小競り合いも発生しつつあった。

それは「平家に味方する」「反平家に味方する」と決めた領主同士の場合もそうだが、同じ領主の内部でも発生していた。


領主が一方の味方を表明する一方で、その領主の部下が反対勢力に与する。

あるいは、領主が一方の味方を表明し、その子や兄弟、親といった血縁者が反対勢力の味方に回る――そうした構図である。


そして陵介の家は「平家に味方する」という方針を打ち出していた。

兄弟が平家に仕えていたからだ。


この状況で陵介がクロウのもとに行こうしたらどうなるか?

自分の親兄弟と戦うことになるのだ。


そして陵介が家に留まったらどうなるか?

クロウと戦うことになるのだ。

そのことで陵介は困っていた。


考え抜いて出した結論は“関わらない”だ。


これが良いことかどうかは微妙だが、陵介は坂東にきたものの自分の実力がそれほど大きく成長したとは思っていなかった。

これはつまり強くなってクロウの下に戻る条件を満たしていないことになる。

つまりクロウのもとに行くことはできない。


かといってクロウと戦うのは御免だ。

これも良いことかどうかは微妙だがクロウは鞍馬山にいると陵介は思っている。自ら会いに行かなければ、会うことは無い。つまりクロウと戦うことは無い。

陵介はそう考えていた。



さて、最近の陵介の鍛練は専ら魔物退治だ。


当初は近隣の腕自慢を相手に模擬試合を行っていたが、陵介とて外来の魔王クマラの秘宝の力を手にした男である。相手にならない。

それどころか、下手に勝ち相手のプライドを傷つけると闇討ちされるのだ。

これでは修行にならない。


しかたなしに魔物退治をしていた。

これも魔境である鞍馬山の魔物と比べると坂東の魔物は弱い。

鍛練になっているとは言い難いところだ。


(クロウとバカやってたころが一番、俺にとって鍛錬になっていたってことか)

陵介は肩を竦める。

(しかし、それではクロウには追い付けない……結局、俺はクロウと肩を並べることはできないってことか)

陵介はクロウと肩を並べることを諦めつつあった。


その陵介が日課の魔物狩りから帰ってくると、若い執事がこのように告げた。

「クロウ殿がお見えになっております」


(! なぜ? ……)

陵介は自分の足元が崩れ落ちるような錯覚を覚えた。



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