第六話 エンカウント:盗賊があらわれた その3
「何ィ。藤沢入道と由利太郎が倒されただとぉ」
熊坂長範が口から泡を飛ばして叫んだ。
彼はこの地方の盗賊たちの頂点に立つ男だ。
もっとも彼が盗賊に当てはまるかどうかは微妙だ。
配下が多いのだ。
400名は下らない。
数だけで言えば一つの軍隊だ。
将もいる。
先ほど熊坂長範が口に出した藤沢入道と由利太郎がそうだ。
熊坂長範は武芸者だった。
修業と称して、近隣の野盗を倒していたら、その野盗が降伏して手下になった。
それを繰り返していたら400名の大勢力を得ることになった。
それが熊坂長範に野心を抱かせた。
(儂に敵う奴はいない。大軍をも率いている。もしかしたら儂も覇王になれるのではないか)
そう思った彼は積極的に兵を増やそうと考えた。
周辺の村々を襲い、武力で脅して兵として協力するように迫った。
この村への襲撃も勝った。勝ちまくった。
もっとも、統制のとれていない野盗だ。平気で略奪もした。抵抗する者は子供でも倒した。
熊坂長範は気にしていない。弱いモンは奪われるのが当然だと思っている。
年齢による焦りもあった。
熊坂長範はすでに60歳を超えていた。前期高齢者と呼ばれる年齢になっていた。
この時代の常識から言えば、いつ寿命で死んでもおかしくないのだ。
負けなし常勝の熊坂長範は自らの覇道を妨げるものは、寿命だと思っていた。
だから焦っていた。
そのため、周りを慮る心の余裕はなかった。
その常勝の熊坂長範の軍勢が初めて負けた。
熊坂長範は驚いた。と同時にここで躓き時間をロスしたら覇道をすすむことは出来なくなると焦った。
ただ、彼は多くの成功者がそうであるように前向きだ。
その藤沢入道と由利太郎を倒した奴を仲間にできたら軍勢を強化できると考えた。
「者共。行くぞォ!」
熊坂長範は初めて黒星を付けた相手に向けて軍を進めるべく号令をかけた。
【モデル紹介】
■熊坂長範
義経記にはでてこない人物。宿で義経を襲い返り討ちにされた。
由利太郎・藤沢入道とキャラ被りしている。
高齢ということで差別化はされているようですが・・・
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