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剣と魔法の義経記  作者: 久手史郎
第一章 英雄集結
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第六話 エンカウント:盗賊があらわれた その2

「おい、いい女連れているじゃねぇか。悪いことは言わねぇ。おいていけよ。そうしたら見逃してやる」


目の前に盗賊(ゴブリン)が現れた。

背後にも盗賊(ゴブリン)がいる。


囲まれたクロウ・静・皆鶴姫は……


「またか」


とうんざりしていた。


今、クロウ達は都を離れ奥州大陸に向かっていた。

その途中、盗賊(ゴブリン)に襲われた。都度、撃退しているので問題はないが、これで盗賊(ゴブリン)に襲われるのは3度目だ。さすがにうんざりしていた。


「おい、吉次殿」

「なんですかねぇ?」

「俺は知らなかったが、都を離れると、これほど多くの盗賊(ゴブリン)が現れるのか?」


エンカウント率の高さにウンザリしながらクロウは吉次に尋ねた。

吉次の黄金の仮面が敵を呼び寄せているのではないかと若干の非難を含ませている。


何しろお宝を顔につけているのだ。

盗賊(ゴブリン)に襲ってくださいと言っているようなものだ。


「そんなことはありませんねぇ。私は気配を消して移動するのが得意でしてね。滅多に盗賊(ゴブリン)に会わないのですがねぇ」

吉次はため息をついた。


クロウは吉次との出会いを思い出す。

確かに吉次は気配もないところから現れた。

隠密の業には長けているらしい。


「後ろのお嬢さんお二人が原因じゃあないですかねぇ」

クロウと吉次は振り向く。


静と皆鶴姫はきらっきらのアイドルオーラを出していた。

女性を道具としか見ていない盗賊(ゴブリン)からはお宝に見えるだろう。


クロウはため息をつき短く戦闘の指示をする。

「吉次殿は闇に隠れ奇襲。静は開幕の一撃を頼む。皆鶴姫は俺と一緒に切り込む」


「なに? たった4人で、俺たち100人を相手しようってのか? 頭イカレテいるのか?」

盗賊(ゴブリン)たちがゲラゲラ笑う。


こと戦いにかんして超合理主義者のクロウ達は相手が笑った隙を逃さない。


静はおかめの神の魔法で神を我が身に降ろす。


今回の神は加茂大明神だ。

盗賊程度に天神様を読んでペナルティを受ける愚行はしない。

追試は勘弁願いたいのだ。


静は左手を後方の盗賊(ゴブリン)にむける。

その左手から爆音とともにサンダーアローが放たれる。何射も。


「え?」と驚く盗賊(ゴブリン)たちは無数のサンダーアローに撃ち抜かれ倒れる。


「ああっ! 藤沢ーっ!」

後方の盗賊(ゴブリン)のボスは藤沢と言うらしい。

もっとも今となっては誰がその藤沢さんかはわからない。

サンダーアローに貫かれて倒れている誰かが、その成れの果てではあったが。


「よそ見するなよ。お前の相手はこっちだ」

そう言うと同時にクロウは魔法剣”薄緑”を発動。


「南無八幡大菩薩 ―霧-」

クロウの手から緑に光る短いレーザーが無数に発射された。

クロウ達の前にいた盗賊(ゴブリン)達が緑のレーザーに貫かれ倒れる。


そのレーザー照射の後を皆鶴姫が斬り込んでいく。


「舐めるなぁ! この程度で倒れるこの由利太郎様か!」

一人、元気に突っ込んでくる偉丈夫がいた。

前方の盗賊のボスらしい。

「来い! 弁慶!」

クロウが護法童子―弁慶-を召喚。

弁慶は盗賊(ゴブリン)のボスの前に現れ、その剛腕で吹き飛ばした。


宙に舞う前方の敵のボス。


「南無八幡大菩薩 ―鷹-」

クロウは魔法を唱え、宙に舞う。

この魔法は足を強化し、常人ではありえない跳躍力と瞬発力を得る。


空中で敵のボスをとらえると一刀両断した。


「キャーっ」

背後で女の悲鳴が聞こえた。

静だ。


敵の接近を許したらしい。

魔法使いタイプの静は広範囲殲滅戦に強いが、接近されたら弱い。

盗賊に囲まれ連れ去られようとしていた。


「「!」」

急ぎ反転するクロウ、皆鶴姫、弁慶。


(ちっ! 静ならあの程度の人数、最初の一撃で殲滅すると思ったが、討ち漏らしがあったか)

クロウは少し後悔し走る。


もっともクロウにはそこまで危機感はない。

彼女には奥の手。天神様降臨がある。それを使えばその程度の危機は自力で脱することができると信じている。


信じているが万が一のこともある。

だから走った。


決して天神様を呼んだ後に教育魔の天神様によるお勉強を嫌ったからでは断じてない。


突如、静を取り囲む盗賊(ゴブリン)達が倒れこむ。


見ると静の隣に吉次が立っていた。

吉次が奇襲で盗賊(ゴブリン)達を倒したらしい。


「あ、ありがと」

静が礼を言う。


吉次は片手で静の礼に答えると音もなくクロウに向って歩く。

そしてクロウを平手打ちした。


「何をっ!」

皆鶴姫が剣に手をかけ、弁慶も憤りタックルの構えをとる。


クロウはその二人を制し、吉次に向き合う。


「女性を一人にするのは感心しませんねぇ」

「すまない」

クロウは素直に謝った。


吉次は言外にこう言ったのだ。

「クロウの指示が間違っている」と

クロウも自分の指示間違いを認めた。だから謝った。


吉次はそのクロウに頷いた。理解しているならいい。ということだ。

そのまま吉次はすれ違いざま。

「クロウ殿の戦術を実行するには人手が足りないねぇ」

と呟いた。


クロウは唇を噛んだ。

【モデル紹介】

■由利太郎

義経記第二巻 鏡の宿に登場

出羽出身、吉次の所持金目当てに宿を襲うが源頼経に返り討ちにされた。


■藤沢入道

本作の藤沢のモデル 義経記第二巻 鏡の宿に登場

越後出身、由利太郎と同じく吉次の所持金目当てに宿を襲うが源頼経に返り討ちにされた。



【お知らせ】

こちらも連載中です。よろしければ見ていただけると嬉しいです

■機動小隊レンジャーワン https://ncode.syosetu.com/n8156lf/


【お願い】

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