第六話 エンカウント:盗賊があらわれた その1
クロウは夢を見ていた。
幼い時の夢だ。
何の気まぐれか。
天下を武で制した覇王は幼いクロウを抱き抱え閲兵式に君臨した。
クロウは覇王が天下を二分して戦った相手の遺児だ。
覇王はクロウの父を倒し、成人し 武士として挑んだクロウの父の子。
つまりクロウの兄たちもまた、武士としての礼儀として倒した。
しかし―
未成年の子。
ましてや生まれたばかりの幼子に手をかけるような鬼畜ではなかった。
むしろ子供は大好きだ。
逆にライバルの子達を気にかけた。
覇王の余裕でもあった。
ライバルの子に天下をとったということを見せつけることで優越感に浸りたかった気持ちもあった。
詩的に書くといろいろ装飾の言葉を並べることにはなるが、身も蓋もない言い方をするならば、ライバルの子に自慢したかった。
それがクロウを閲兵式に連れてきた理由だ。
幼子のクロウは多数の戦士がずらりと並ぶ姿を見て、素直に感動した。
その姿が覇王の自尊心を満足させた。
覇王は幼いクロウを高く抱え「見ろ、覇王となれば全てが手に入る」と言った。
これを聞いた幼子のクロウが場をわきまえない発言をした。
「俺も覇王になる」
純粋な憧憬から出た言葉だが、覇王の近くにいる臣下はそうは受け取らなかった。
「謀反を起こす気か」とその言葉を受け取り、「不敬だ。殺すべきだ」と騒いだ。
このままではクロウは不敬罪ということで殺されただろう。
それを救ったのが覇王だ。
「そうか覇王になるか」
笑みを浮かべ幼子のクロウに語り掛けた。
「うん」
クロウは大きく頷いた。
「俺を超えるか。楽しみにしているぞ」
と覇王は大笑いした。
周囲の臣下はクロウに対して手が出せなくなった。
覇王がクロウの言葉を許したのだ。臣下が許さないというわけにはいかないのだ。
覇王は“幼子の戯言”を真面目に受け取ってどうすると思っていたし、その覇気をさすがライバルの子と褒め称えたいと思った。
更に言えば、覇王は退屈であった。
周囲は阿り、敵はいない。
ノーマルモードのゲームに飽きたのだ。
少しハードモードのゲームでプレイしたいと思った。
その期待をクロウにかけるのは悪くはないと思った。
クロウが幼子の戯言で終わるなら問題ない。
また実力不足で覇王を目指したが途中で挫折するということもあるだろう。これも問題ない。
十中八九そうなるだろう。
しかし、僅かな可能性の扉を開き、覇王の前に目の前のクロウガ挑む展開になるのなら―
それはそれで楽しみだ。
と覇王は思っていた。
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